謎めいたおじさまの溺愛は、刺激が強すぎます

七夜かなた

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「はい、無事に提出しました」

『悪かったね。お昼食べそこねただろ、食べてから戻ってきていいから』

「わかりました。そうします。四時には戻りますので」

 そう言って、私は携帯電話を切った。

 電話の相手は会社の上司で雇い主の倉橋所長。
 所長に頼まれて、書類をクライアントに届けた帰りだった。
 
 取引先から資料を送るように頼まれていたのを、電話を受けた受付の子がうっかり伝え忘れていて、送付確認のメールを見た所長は慌てた。
 伝言を聞いたのは小林さんだけど、当の本人は明日まで休暇を取っている。
 大学卒業と同時に倉橋会計事務所に入って、三年が経つ。
 
「二時か…ランチは大体終わってるかな」

 早いところだと、二時頃にオーダーストップの所が多い。 
 小林さんは一人で食事なんて無理~、ボッチご飯なんて寂しすぎませんか、と言っていたけど、今日みたいに移動中だと一人飯なんて普通だ。

「あ、ここ、いいかも」

 ブラブラ歩いていると、雰囲気のいいカフェを見つけた。ランチのラストオーダーは2時半までと書いてあって、まだギリギリ間に合いそうだ。

「いらっしゃいませ、空いているお席にどうぞ」

 店内はカウンター席が五つと、テーブル席が十個くらい。お客は七割程度いた。
 鞄もあるので、入口近くの四人がけのテーブル席を選んで座る。

「わ、何しよう」

 店はイタリアン系で、ランチだとパスタやドリア、ピザ、グラタンの単品か、ドリンクや前菜、デザートが付いたセットもある。

「この日替わりパスタのBセットお願いします。ドリンクは食後にアイスコーヒーを」

 Bセットは、ドリンクと前菜盛り合わせが付いている。

「かしこまりました」

 注文を終えて、出されたお水を一口飲んだ。

(あ、そうだ、メール返事来たかな)

 付き合っている彼氏でもあり、事務所の先輩森本は、昨日から出張で、今日帰ってくる予定だ。そのまま直帰するのか事務所に立ち寄るのか確認のメールを昨晩送っていたが、今になっても返事がない。

「え…」


 携帯を見て、私は言葉を失った。
 確かに彼からメールの返事が来ていた。

 でもその中身は、私が思っていたものとは違っていた。

『他に付き合っている人がいる。だから、君とはもう付き合えない』

 突然の別れを告げられ、私は呆然としてしまった。
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