この恋、保障できますか?

美也

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…ヒロコです。
昨夜の記憶が無かとです…。
先日、ひとり虚しく37を迎えました。
更年期とび越して、
もう痴呆の始まりでしょうか?
ヒロコです…
ヒロコです…

ネタ古っ!
はぁ~、歳とりたくないなぁ…

点けっぱなしの部屋の灯り。窓のカーテンからは陽がこぼれていた。

ベットの上に昨夜から放置したであろう自分に呆れ返る。
シワシワのスーツ、ボサボサの髪。
多分、顔はグチャグチャ。

アレね、きっとアレ… 
酔って記憶失くしちゃった♪ 
とか、カワイイやつじゃない。

35過ぎてから突然やってきた、
謎の脳内強制シャットダウン。
昨日は体調悪いのに、会食外せなかったから頑張り過ぎた。

気力体力の限界…
ポンコツ具合が半端ない。
コントロールも効かなくなってきた。

上司を見送りして、からの?
記憶が無い… 
どうやって家まで帰ってきたっけ?

「よっこいしょぉ…」
ベットから足を下ろした。

「痛っ…」
「ぎぃえぇぇぇ~!!!」
グニャッとしたの踏んだ!何かいる!

「なんの声だ!?妖怪!?」

妖怪!?
恐怖の余りブルブル身震いして強張る。

ん?
…さっきの悲鳴は、私のオバ声ですけども?
咄嗟の時、全然カワイイ声出ないもん。

「体中痛え…。あ、起きた?」
「(パチクリ)!? だ、誰!?」
「誰って…。記憶ないんスか?」
「…それか、痴呆かもしれなくて
(ポカン)」

え、待って。
私のベットとテーブルの間に、
若い男子が 召喚(✕) されている!

「マジ草…」
と言いつつ、目は笑ってなくて。
クールな表情に黒フチの眼鏡をかければ…
あぁ、雪塩くんか!!

「スノーWebの永井です」
「ですね。ご存知でした…」

ウチの広報でお世話になってる、
デザイン会社の担当さん。
色白で塩顔のツンだけの人って言われてて。
無愛想でとっつきにくい感じ。

若いから余計に苦手なんだけど…
寝起きなの?
むー、てなってる。意外に可愛…

まさか!? ここで一晩寝てたの!?

「え(嘘)! はぇ(もしや)? 
 えぇ~(やった)!?」

パッパッパ (_ _;) ! 
胸タッチ、シャツ捲って、ブラ確認!

ノープロブレム!と同時に彼のため息。

「はぁ~。
 ヤッてません!サニー生命の関さんっ」
「はいっ。ごめんなさい!」

一瞬で正座。
微塵にもありえない可能性を、疑ってしまいました。

「昨夜の会食後に意識が酩酊状態だった
 ので、タクシーで送ったんですよ。
 酷く見えたので急変に備えて待機、
 とゆう名目で泊まりました」

「承知しました!申し訳ありません!」
深々と三つ指ついてお辞儀する。

「まったく。
 ここまで担いできて、全身筋肉痛っスよ。
 3階て…何の修行だっての。
 変な気おきるワケないでしょう?」
「大変失礼を致しましたっ」

そうねそうね。
こんなバアとは間違いも起きるはずないだろうがっ(意訳)

若い男子が (介抱✕) 介護みたいのさせられて、それはキレるよね。

「いい加減、頭上げてもらえます?
 今どき土下座って…。
 プライドとかあるっしょ?」

・・・(プチッ)
はぁ~!?
こっちは誠意を見せてんのよっ。
今だからこそ、ハラスメントってぇ。
昔は普通に土下座させられたもんよ!
む・か・し、はね!

否もないのに屈辱的にさぁ。
こんなふかふかしたベットじゃなくて、
硬い床に正座して、
足も心も痛い思いで、、、

私… 
でも、今、どこも痛くない。
凄く…丁寧に、
彼が私を扱ってくれたんだとわかる。

思いやりを感じた分、記憶が蘇ってきた…

昨夜ウチとスノーさんの部長を見送って、
永井さんにもお疲れ様したのに。
トイレに戻った私を待っててくれたんだ。

多分、何十分もこもってたと思う。
全部吐いて…頭がガンガンしてて、店員さんと話をした。

アルコール中毒じゃない。
女特有の、もう歳ですから、って。
ふらふらで出て…
そうだ、永井さん居てくれたんだ。
何を会話したのかまでは覚えてないけれど、
私は「大丈夫、大丈夫…」
それしか言えなくて。

結局、気絶したのか、寝落ちなのか。
ちゃんとベットまで運んでくれたんだね。
凄く重たかったろうに。

彼は今風の冷めた感じに見える男子だけど、見た目と違って…
とても情に厚い優しい人だ。

チラッと横目で彼を見た。

「なんスか?」
「怒って…?」
「ないです!」

やっぱり怒ってる!?
塩顔が岩塩みたいにゴツゴツなってるっ。

私のせいです、私が悪いから… 
あれ?
善意でしてくれた事に謝罪って、、、
違うね?

恩着せがましく見せて… ただの保身だ。
感謝の仕方、間違えた。

「ありがとう!」
「…はい」
「ホントにありがとう!」
「はい」
「凄く嬉しいです。
 永井さん、メチャクチャありがとう!」

三つ指ついて…頭下げるんじゃなく。
彼の目を見て、感謝の気持ちをたっぷり込めて届けた。

「…もうわかりましたっ」
永井さんは視線を反らす。

あら?
…ツン、だけではないのでは?
砕けた岩塩は、少しピンク色の可愛らしい横顔を見せた。

歳を重ねるごとに、いつの間にか謝る事
ばっかり上手くなって…
一言目に、すいません!て。
謝罪のポーズも増えて。

ありがとうの大切さ、
忘れかけてたかもしれない。

「あの、とりあえず何かお飲み物を…?」

「あー、よかったらシャワー借りても?
 汗だくで。この後、予定あるので…」

「もちろんっ、どうぞどうぞ…
 こちらに、、、(ひ~っ!?)」

残暑厳しい折に、
修行並の労働をさせましたから。
急いでお風呂の準備をと、
軽快なステップ踏んだところで、
衝撃のトラップ!

リビングの入口に部屋干ししたままだったやないか~い!

ガバッ ガチャ(蹴り) サーッ

鮭を獲るヒグマの如く、洗濯物ピンチを放り投げ蹴り飛ばす。

これは、私の普段着パンツを… 
永井さん、暖簾のように潜ったのでは?
何回!?行ったり来たりしたよね!?

せめてレースだったらぁ、
カーテン替わりになったかもしれないのに…
くっ、1枚189円の激安パンツを~っ!!

悶絶しながら浴室の前に来て作り笑顔で、
「どうぞ、こちらです^^;」
いろいろ考察しなければ、ボロが深傷になる。

い"やぁぁ、、既に重傷かもしれない。
あぁ神様!助けてっ。



「かっ飛ばせ~ ヒ·ロ·コ!逆転ホームラン~
 オォ!」

チャリを立ち漕ぎ、キキーッ!
自転車を停めて、そそくさと入店。
いらっしゃいませ~

メンズTシャツ、ボクサーパンツ…
М?L?…М!
靴下も。それから…
鮭の塩焼き、漬け物、おにぎり。よしっ!

「いらっしゃ、」
「なる早で!(食い気味)」
「はい…」

永井さんがシャワーに入ったのを見届けて、超高速メイク直し。
ポットを満たんスイッチオン!
緑茶と即席味噌汁をセット。コンビニへGO!

準備はバッチリして来た。
5分で帰宅。着替えを置いて、
ジャケットとYシャツにファ○リーズ。
そしてレンチンとお湯を注いで、テーブルにホカホカ朝食。…完成!!そして着席。

「シャワーあざした。着替えもって…え?」
「良かったらどうぞ ^^(ゼーハーゼーハー)」
「え?ここ、○屋?」

見立てサイズピッタリのTシャツで、部屋に戻ってきた永井さん。
私の披露したテーブル上のおもてなしに、どっから?いつ?とちょっとキョドり気味だ。

完ぺきでしょ!
スンゴイ迷惑かけたけど、借りを作ったままでいるのは好きじゃない。
借金もローンもあったら身軽でいられないもの。
人との付き合いも同じなの。
貸し借りは早く解消しておきたい。
歳をとったら尚更…
重い物はなるべく持ちたくないの。

作り笑顔で彼を観察。
やっぱり、ヘアセット流すと男って、やたらと幼く見えるのよね。
威勢も無くなるとゆうか、おとなしくなる感じ?

永井さんは箸を持つと手を合わせて、いただきますをして食べ始めた。
フッフッフ、シメシメ…(悪い顔)
では、私も。

あぁ~味噌汁が空きっ腹に染み渡るっ!
暫しの団欒。。。

もう体調大丈夫そうっスね。
お陰様で。時々疲れが溜まってバタンと。
あ~特に病気とかじゃないんですね。
昨日はずっと回復の呪文唱えてて。
ホイミ?
もっと強力なの。
ベホマ?
それ!効かなかったみたいですね。
俺、今、結構回復してます。
お腹減ってましたよね。
こんなまともな朝メシ、久しぶりなんで。
誰かと食べると、より美味しいですよね~。

ナニコレ… 和む。
懐かし~ひっさしぶりな感覚。
プラズマイオン発生してる。
浄化されてるかも?私。

「ところで、関さんて、何歳ですか?」
前言撤回っ!
さり気なく言い放った彼の発言が、空気を一瞬にして濁す。

「いくつに見えますかぁ?」
どや!困るでしょう?
…しまった!私の方こそ肌コンディション
最悪じゃないかっ

「さんじゅう… 
 いや、どうでもいいんスけど」
「は?」

「もう歳なんで!しか言わないって、
 昨日の店員さんが心配してました」

「(ゴフッ)すいません。
 後でお詫びに行っておきます」

どんだけ醜態さらしてんの私… 
それしか説明できないって(恥)

むせ返した気管を整えながら、昨夜の自分を省みる。
そういえば、そんな状態でどうやって…?

「永井さん、
 ウチの住所どこで聞いたんですか?」

「あー、勝手にカバン漁りました。
 封筒の宛名見て。鍵もあったので、
 送れるだろうと思って」
「封筒… △✕%@#☆!?」

カバンに入れた封筒の存在を思い出すと血の気が引いた。

それって… 肛門科クリニックの!?
まさか、まさかぁ!?

「関さん、もしかして…」
「(ギクッ)!!」

「この前、田舎で法事って休んでたの…
 痔の手術でした?」

サーッ。バレた… 
お尻だけに、穴があったら入りたい。

お土産まで用意して入念に企てた計画を!
部署にも内緒にしてたのに!会社でコッソリ給付金請求しようと思って~ (T_T)

「ご、内密に願います…(プルプル)」
クッソォォッ。
若僧め、手強いな。

どんどん傷が深くなる気がする。
更に弱みも握られている。
このままじゃ駄目だ、早く何とかしたい。 

「永井さん、御礼をしたいのですが
 何が宜しいですか?」
「何でもいいですか?」

欲しいのか、やっぱり。
遠慮ってものを知らないな若いもんは!
って、私も自重せねば。

「もちろん^^」
「じゃあ… また泊めてください」
「は?」
「ここ、いい部屋じゃないですか?
 ロフトあるし」

彼は上を指差す。
ナニその可愛い上目遣い…
キュン、、、違うっ

「いやいや、何の目的で?」
「ウチ、風呂なしアパートなんですよ」
「え?今どき?昭和なの?」
「まぁ激安なんスけど。で、訳あって通って
 るトコに近いんで」
「近いトコって何処?」
「それは…秘密です」

人差し指で口を塞ぐ。
しーっ、て。

…だから可愛いポーズやめて!
雪塩のくせに!
不意打ちでドキッとさせないで。

「で、でも宿泊となると、いろいろ問題が…
 ね?」
「何もしませんよ?シャワーとロフト借りる
 だけです。問題ないです」

釘を刺した上に、塩をぶち込むなぁ!
こっちに問題大ありなんですっ。

この歳で簡単に「いいよ」なんて言える訳ないでしょう!?
若い時とは違うのよ。

羞恥心でいっぱいだし、
守りたい事もたくさんなの。
自分の事で精一杯なんだから!

「無理無理、ムリムリ…」
首をひたすら横に振り続ける。
私の動揺を見逃さない、かのような鋭い目で彼は言う。

「これは俺の関さんに対する損害賠償請求
 です。“ 5泊 ” 保障でお願いします」
「な!5泊も!?」
「妥当だと思いますけど?」

いやいやいや。マズいでしょ!?
諸々バレたらどうするの!?

「ちょ、待って。仕事に支障が出るかも
 しれないしっ」
「誰にも言いません。
 仕事では普段通りにします」

「それだけじゃなくて!
 私にも体裁ってものがあるのよ?」
「決して関さんのプライベートは他言
 しません。5回で借りが無しですよ?」

コンニャロ~。
全部見透かした顔しやがってぇ。

口角を少し上げて目を据えた彼の表情は、ドヤッと…すっかり形勢逆転されている。

5回、我慢すればチャラ… えーい!

「しょ、承認しました…」
渋顔決め込む私であった、、、
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