413 / 430
第37話「春の嵐」
春の嵐(17)
しおりを挟む
「有夏、裾持って……」
ずり落ちてくるジャージとTシャツを有夏の手に押し付けるとき、頬を赤らめて何とも言えない神妙な表情の彼と視線が絡み合った。
「はぁ、かわいい。有夏……」
──じゃなくて、と、幾ヶ瀬の表情が固まる。
そうだ、大学に行かないと罰金だって伝えなくちゃいけないんだった。
あのお姉さん、とにかく怖かったし、伝言の役目だけはちゃんと果たしておかないと。
大学に行く、行かないは有夏の自由だし。
罰金を払う、払わないも有夏の自由だし。
とにかく伝えさえすれば俺に火の粉が飛んでくることはない……はずだし。
連帯責任みたいに俺が罰金をしょい込むことなんてならない……はずだし。
ああ、待って。ズルイって言われたらどうしよう。
その場で頭を抱える幾ヶ瀬。
「だって、俺のせいじゃないし! 俺、別にズルくないし!」
「はぁ? 何言ってんの、幾ヶ瀬」
有夏の呆れ顔を直視せずにすむよう顔を背け、幾ヶ瀬はおずおずと切り出した。
「ごめ……あの、罰金が絡んでるからちゃんと言うけど。その……」
口を開きかけた時のこと。
有夏の唇から吐息が漏れた。
「もう! 幾ヶ瀬、はやく!」
ずり落ちてくるジャージとTシャツを有夏の手に押し付けるとき、頬を赤らめて何とも言えない神妙な表情の彼と視線が絡み合った。
「はぁ、かわいい。有夏……」
──じゃなくて、と、幾ヶ瀬の表情が固まる。
そうだ、大学に行かないと罰金だって伝えなくちゃいけないんだった。
あのお姉さん、とにかく怖かったし、伝言の役目だけはちゃんと果たしておかないと。
大学に行く、行かないは有夏の自由だし。
罰金を払う、払わないも有夏の自由だし。
とにかく伝えさえすれば俺に火の粉が飛んでくることはない……はずだし。
連帯責任みたいに俺が罰金をしょい込むことなんてならない……はずだし。
ああ、待って。ズルイって言われたらどうしよう。
その場で頭を抱える幾ヶ瀬。
「だって、俺のせいじゃないし! 俺、別にズルくないし!」
「はぁ? 何言ってんの、幾ヶ瀬」
有夏の呆れ顔を直視せずにすむよう顔を背け、幾ヶ瀬はおずおずと切り出した。
「ごめ……あの、罰金が絡んでるからちゃんと言うけど。その……」
口を開きかけた時のこと。
有夏の唇から吐息が漏れた。
「もう! 幾ヶ瀬、はやく!」
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる