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13話 子供たちの眠りを見守る優しいあやかし3
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『新しい場所に移るとともに、わしのぬいぐるみは置いていかれ。代わりに、新たに可愛いリスのぬいぐるみが用意されての。数日前から子供達は、そのリスのぬいぐるみと共に寝るようになったんじゃ』
『新しい……か?』
『ああ。せっかく新しい場所に行くのだから、他も変えられる物は、新しい物に変えて、新しい生活を始める、と言っていた。それでわしのぬいぐるみも、置いていかれることになったのじゃ』
『はぁぁぁ、古いのだろうが、新しいのだろうが、皆が大切にしている物ならば、古くても持っていけば良いだろう』
『新しい物も悪くないが、今までお前に世話になっておいてそれか』
『でも、新しいのをって気持ちも分かるよ。僕だって、大切にしている古い物もあるけど、新しい物も好きだもん』
寂しく話すサブロウじいちゃん。そしてみんながそれぞれ意見をいう。まぁ、考えは人それぞれ、あやかしそれぞれだからな。何が正解って事はないけれど。
でもサブロウじいちゃんの様子を見ると、かなり寂しそうにしている。そうだよな、今までずっと子供たちを見守ってきたんだもんな。寂しいに決まってるよな。
少しだけその場が静まり返る。が、すぐにシロタマが話しを続けた。
『それで、ぬいぐるみの事は分かったが。晴翔を呼んだという事は、そのぬいぐるみに関係あるんだろう? 何だ? 置いていかれるぬいぐるみを、やはりここに置いていく事はできないって、引き取って欲しいのか? それとも新しいリスのぬいぐるみの方で、何か問題があるのか?』
そうだった。しんみりしてしまっていたけれど、俺は話しを聞きにきたんだった。
『実はの、この数日の子供たちの様子が気になっての。そして、ちょうど晴翔の話しを聞いて。もしもわしの考えが間違っておらんかったら、晴翔にわしのぬいぐるみの修復を頼めないかと思ったんじゃ』
サブロウじいちゃんの話しによると、リスのぬいぐるみに変わってから、子供たちの眠りがあまり良くないらしい。前のようにお昼寝の時に暴れ回る事はなく、静かに布団には入るらしんだけど。でもすぐに眠れなかったり、寝ても眠りが浅かったり。
先生たちは、新しいぬいぐるみだからじゃないか。別に寝られないわけじゃないから、すぐに新しいぬいぐるみに慣れて、また眠れるようになるだろう、と言っていたらしいけど。
でも、サブロウじいちゃんは、やっぱり、自分のぬいぐるみじゃないからなんじゃ、と思ったそうだ。
それに、他にもある出来事が。今は保育園はお休みだけど、昨日までは普通に保育園はやっていて、サブロウじいちゃんのところへもみんな遊びに来ていた。だけど、時々どこかへいく子供たちがいて。
どこかへ行くって言っても、行くのは幼稚園の建物の裏に設置されている屋外倉庫で。中を覗いては、しまったサブロウじいちゃんにぬいぐるみを見て、『かめしゃん』と言い。それから寂しそうに、みんなの元に戻ってくる。というような事を、子供たちは繰り返していたと。
『だからのう、もしもまだ、子供たちがワシのぬいぐるみを必要としてくれているのなら。新しいリスのぬいぐるみと共に、これからも一緒にいて欲しいと思ったんじゃよ。それには、ぬいぐるみを綺麗にし、壊れているところは修復をしなければ、先生たちは認めてくれんじゃろ。そこで晴翔の噂を聞いて、ぬいぐるみの修復を晴翔に頼めないかと思ったんだじゃ』
『ほらみろ、やっぱり子供は素直だし、自分に必要な物が何なのか、きちんと理解してんじゃねぇか』
『誰かの一方的な考えで、決める事はダメだって事だな』
『そんなにみんな大好きなら、修復してあげたら? みんなとっても喜びそうだね! それに今までみたいに、みんなまた大切に使ってくれるんじゃない?』
う~ん、話しは分かったけど、園長先生たちに何も言われてないのに、俺が勝手に修復するのもな。仮にもしもぬいぐるみを修復するとしても、勝手に持っていくこともできない。他にもいろいろと問題が。俺はその事をサブロウじいちゃんやみんなに話した。
「今まではみんな、自分の物を俺の所へ持ってきただろう? でも今回は保育園の物だから、俺たちの勝手じゃ修復する事は難しいよ」
『ああ、その辺についてじゃが。ワシが昨日のうちに対策しておいたぞい。子供たちが帰ってから、いらない物を回収するトラックが来ての。先生たちがいらない物を庭へ運び始めたんじゃ。その時にぬいぐるみも持っていかれての……』
そうして荷物を運び終えた先生たちは、次は教室の片付けを始め。その時にサブロウじいちゃんは、ぬいぐるみを助け出し、ある場所へ隠したらしい。
そうして他の物は、トラックに乗せられ運ばれていき。先生たちは、ぬいぐるみが運ばれたと思っているはずだと。
『池の隣に埋めたんじゃ。木の箱に入っているから、土で汚れてはいないはずじゃ。今掘り返すから待っていてくれ』
そう言い、フンッ!! とサブロウじいちゃんが立ち上がった。っていうか支えなしに亀って立てるのか!? なんてちょっと驚いていると、さらに驚く事が起きた。
じいちゃんだからか、カメだからなのか、今まで動きがゆっくりだったサブロウじいちゃん。だけど本来のカメの姿勢に戻ると、カメとは思えない速さで手と足を動かし、地面を堀り始めたんだ。ズババババッ!! って感じにな。
あまりの勢いと速さに、俺もシロタマも他のみんなも、は? って感じでサブロウじいちゃんを見ちゃったよ。
そうして5分も経たないうちに、サブロウじいちゃんは池の横に大きな穴を掘り、その掘った場所には、大きな木の箱が2つ埋められていた。その木の箱を取り出し、蓋を開け中を確認する。
するとサブロウじいちゃんに言っていた通り、少し古ぼけている、そしていろいろと見覚えのある部分もある。サブロウじいちゃんの、たくさんのぬいぐるみが出てきた。
『新しい……か?』
『ああ。せっかく新しい場所に行くのだから、他も変えられる物は、新しい物に変えて、新しい生活を始める、と言っていた。それでわしのぬいぐるみも、置いていかれることになったのじゃ』
『はぁぁぁ、古いのだろうが、新しいのだろうが、皆が大切にしている物ならば、古くても持っていけば良いだろう』
『新しい物も悪くないが、今までお前に世話になっておいてそれか』
『でも、新しいのをって気持ちも分かるよ。僕だって、大切にしている古い物もあるけど、新しい物も好きだもん』
寂しく話すサブロウじいちゃん。そしてみんながそれぞれ意見をいう。まぁ、考えは人それぞれ、あやかしそれぞれだからな。何が正解って事はないけれど。
でもサブロウじいちゃんの様子を見ると、かなり寂しそうにしている。そうだよな、今までずっと子供たちを見守ってきたんだもんな。寂しいに決まってるよな。
少しだけその場が静まり返る。が、すぐにシロタマが話しを続けた。
『それで、ぬいぐるみの事は分かったが。晴翔を呼んだという事は、そのぬいぐるみに関係あるんだろう? 何だ? 置いていかれるぬいぐるみを、やはりここに置いていく事はできないって、引き取って欲しいのか? それとも新しいリスのぬいぐるみの方で、何か問題があるのか?』
そうだった。しんみりしてしまっていたけれど、俺は話しを聞きにきたんだった。
『実はの、この数日の子供たちの様子が気になっての。そして、ちょうど晴翔の話しを聞いて。もしもわしの考えが間違っておらんかったら、晴翔にわしのぬいぐるみの修復を頼めないかと思ったんじゃ』
サブロウじいちゃんの話しによると、リスのぬいぐるみに変わってから、子供たちの眠りがあまり良くないらしい。前のようにお昼寝の時に暴れ回る事はなく、静かに布団には入るらしんだけど。でもすぐに眠れなかったり、寝ても眠りが浅かったり。
先生たちは、新しいぬいぐるみだからじゃないか。別に寝られないわけじゃないから、すぐに新しいぬいぐるみに慣れて、また眠れるようになるだろう、と言っていたらしいけど。
でも、サブロウじいちゃんは、やっぱり、自分のぬいぐるみじゃないからなんじゃ、と思ったそうだ。
それに、他にもある出来事が。今は保育園はお休みだけど、昨日までは普通に保育園はやっていて、サブロウじいちゃんのところへもみんな遊びに来ていた。だけど、時々どこかへいく子供たちがいて。
どこかへ行くって言っても、行くのは幼稚園の建物の裏に設置されている屋外倉庫で。中を覗いては、しまったサブロウじいちゃんにぬいぐるみを見て、『かめしゃん』と言い。それから寂しそうに、みんなの元に戻ってくる。というような事を、子供たちは繰り返していたと。
『だからのう、もしもまだ、子供たちがワシのぬいぐるみを必要としてくれているのなら。新しいリスのぬいぐるみと共に、これからも一緒にいて欲しいと思ったんじゃよ。それには、ぬいぐるみを綺麗にし、壊れているところは修復をしなければ、先生たちは認めてくれんじゃろ。そこで晴翔の噂を聞いて、ぬいぐるみの修復を晴翔に頼めないかと思ったんだじゃ』
『ほらみろ、やっぱり子供は素直だし、自分に必要な物が何なのか、きちんと理解してんじゃねぇか』
『誰かの一方的な考えで、決める事はダメだって事だな』
『そんなにみんな大好きなら、修復してあげたら? みんなとっても喜びそうだね! それに今までみたいに、みんなまた大切に使ってくれるんじゃない?』
う~ん、話しは分かったけど、園長先生たちに何も言われてないのに、俺が勝手に修復するのもな。仮にもしもぬいぐるみを修復するとしても、勝手に持っていくこともできない。他にもいろいろと問題が。俺はその事をサブロウじいちゃんやみんなに話した。
「今まではみんな、自分の物を俺の所へ持ってきただろう? でも今回は保育園の物だから、俺たちの勝手じゃ修復する事は難しいよ」
『ああ、その辺についてじゃが。ワシが昨日のうちに対策しておいたぞい。子供たちが帰ってから、いらない物を回収するトラックが来ての。先生たちがいらない物を庭へ運び始めたんじゃ。その時にぬいぐるみも持っていかれての……』
そうして荷物を運び終えた先生たちは、次は教室の片付けを始め。その時にサブロウじいちゃんは、ぬいぐるみを助け出し、ある場所へ隠したらしい。
そうして他の物は、トラックに乗せられ運ばれていき。先生たちは、ぬいぐるみが運ばれたと思っているはずだと。
『池の隣に埋めたんじゃ。木の箱に入っているから、土で汚れてはいないはずじゃ。今掘り返すから待っていてくれ』
そう言い、フンッ!! とサブロウじいちゃんが立ち上がった。っていうか支えなしに亀って立てるのか!? なんてちょっと驚いていると、さらに驚く事が起きた。
じいちゃんだからか、カメだからなのか、今まで動きがゆっくりだったサブロウじいちゃん。だけど本来のカメの姿勢に戻ると、カメとは思えない速さで手と足を動かし、地面を堀り始めたんだ。ズババババッ!! って感じにな。
あまりの勢いと速さに、俺もシロタマも他のみんなも、は? って感じでサブロウじいちゃんを見ちゃったよ。
そうして5分も経たないうちに、サブロウじいちゃんは池の横に大きな穴を掘り、その掘った場所には、大きな木の箱が2つ埋められていた。その木の箱を取り出し、蓋を開け中を確認する。
するとサブロウじいちゃんに言っていた通り、少し古ぼけている、そしていろいろと見覚えのある部分もある。サブロウじいちゃんの、たくさんのぬいぐるみが出てきた。
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