現代のモフかわあやかしVS 異世界の強面魔獣の大激突!!

ありぽん

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3話 美味しいどら焼きと俺たち結び手の存在

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『優希、ぼくこれにするぷー』

『私、やっぱりこっちにしようっと』

『今日はこれにしましょう』

 俺と勝三じいちゃんが話しているうちに、クルルたちがどら焼きを選び終わり。春江ばあちゃんが、どら焼きを箱に詰めてくれる。

「何だ? 今日はいつもより少ないんじゃないか?」

「ああ、もうすぐ夕飯だから。食べ過ぎないように半分ずつ食べさせようと思って」

「何だ何だ、戦ってきたもんが、どら焼き1個食べたところで変わらんだろう。婆さん、全員分入れてやれ。糖分を取って、しっかり体を休めんか!」

「そうねぇ。戦いで疲れている時は、美味しいものをたくさん食べないと」

 そう言って箱を変え、注文していないどら焼きや他の和菓子を、ヒョイヒョイ詰めていく春江ばあちゃん。それを見て目を輝かせるクルルたち。

「そういえば、訓練はまたあそこへ行くのか?」

「うん。なんかこの頃予約が取りづらくて。少しの間、山へ行って訓練する予定でいるんだ」

「そうなのか?」

「和也おじさんが今、新しい訓練所を探している最中だって。候補を2つに絞ったから、もう1度見に行って決めるって言ってたよ。1ヶ月後には使えるようにするって」

「あいつはあいかわらず動くのが遅い! 皆が訓練できずに、もしものことがあったらどうする。いや、あいつ自身が、この間怪我をしそうになったと言っとったな……。よし、優希! 次の訓練は久しぶりにわしが見てやろう。ついでに和也も呼んで、わしが気合を入れてやる!」

「ありがとうじいちゃん。ただ、和也おじさんは無理じゃないかな。支部長になってから、かなり忙しそうにしてるし」

「なに、あやつが飲み歩いとるのは知っとるんじゃ。その時間が取れて、訓練の時間が取らないなんてことはあるまい」

 夜、ようやく仕事が終わって、ゆっくりする時間と、訓練の時間をわざわざ取るのは違うんじゃ? と思ったけど。勝三じいちゃんは、言ったら絶対に実行するからな。うん、何も言わないでおいて、和也おじさんには頑張ってもらおう。

「和也のところのあやかしも、久しぶりに動けると喜ぶじゃろうて」

「あら、なら私も一緒にいこうかしらね。みんなの様子をしっかりと見てあげるわ」

「え? でもそうしたらお店は?」

「お店なんて臨時休業にすれば良いんですよ。私にはみんなの方が大切でからね」

「何じゃ、お前もくるんか」

「あら、私が行って、困ることは何もないでしょう?」

「むぅ、それはのう」

 ばあちゃんがくると、じいちゃんが自由に動けなくなるからな。じいちゃん、張り切ってたし、本当はいろいろチェックをしてくるばあちゃんに、来て欲しくないんだろうな。

 でも俺は、じいちゃんとばあちゃんが訓練を見てくれることを、本当にありがたく思っているんだ。こんな凄い人たちに直接指導してもらえるなんて、普通じゃまずあり得ないことだからな。

 谷口勝三、春江老夫婦。この2人は、とても優れた能力の持ち主で。また家族以上の絆で結ばれた存在と共に暮らしている。だから、じいちゃんたちに訓練をつけてもらいたいと願う人たちが、全国にどれだけいることか。

 そんなある界隈で有名な2人だけど、政府ではなく協会に所属していて、今でも現役で活動しいる。俺もその協会に所属しているぞ。

 協会の名は『結び手協会』。あやかしや妖精、精霊といった存在と共に生き、その力を借りて異世界人や魔獣と戦う人々がいる、って前に話したけど。

 日本では、こうした存在と共に戦う人々のことを『結び手』と呼んでおり。海外では妖精使いとか精霊使いとか、国や文化によって呼び方はさまざまだ。まぁ、言い方は違っても、内容は基本同じで、共に異世界人や魔獣たちと戦っているぞ。

 そもそも、こうした存在と共に生きる人々は、異世界人の侵攻が始まる何十年も前から現れ始めていたんだ。
 だけど初めのうちは、そうした存在が見える人はごく僅かで。そのため世界中の人々に、嘘つきと罵られ、冷たい視線を浴びせられてしまうことになってしまった。

 でも、見える者の数が増えるにつれて、否定する声は次第に小さくなり始め。さらには、あやかしや妖精、精霊の中には共に生きられる存在もいれば、人間や仲間に害をなす凶暴な者たちも存在するため。

 そういった害をなす者たちと戦うようになると、小さくなっていた否定の声はさらに消え。今では世界の半数以上の人々が、そういった存在を認識できるようになり。俺たちのような存在を否定する人は、ほとんどいなくなった。

 そうして俺たちは、あやかしと共に異世界人や魔獣と戦い、戦いのない日には訓練を繰り返す。そんな日々を送っているぞ。

 今日も俺たちは、異世界からやってきた異世界人と魔獣たちと戦い終わり、帰っているところだ。

『おばあちゃん、それも欲しいぷー』

「はいはい。みんなの分も入れてあげましょうね」

「こら! 勝手に注文を増やすんじゃない」

『でも美味しそうぷー。みんなで食べるぷーよ』

『ボクの顔、すっぽり入るね』

『何でこんな形のがあるの?』

「ちょっと失敗しちゃってねぇ。これは破棄しようと思っていた物だから、気にしないで持っていきなさい」

 そういって、どら焼きの皮の。真ん中がぽっかり空いている皮や、ギザギザの形の皮、何故か星型や三角のような形になっている皮を。ばあちゃんが袋に、ヒョイヒョイ入れてくれる。

 失敗か……。じいちゃんもばあちゃんも、ワザと失敗したって言って。いつも戦いの後、みんなにくれようとして、用意しておいてくれるんだよな。うちのあやかしはみんな、じいちゃんたちの和菓子が大好きだから。

 だから今度、ある計画を考えている。俺たちがじいちゃんたちに、返せるものは少ないけど。じいちゃんたちの誕生日がもうすぐだから、盛大に誕生日パーティーを開こうと思って。みんなもそれに同意し、今は楽しそうにプレゼントを作っている最中だ。

「さぁ、これで良いかしらね。はい、今日は2000円ね」

「ばあちゃん、いくらなんでもそれはないよ。また俺が母さんに怒られるんだから」

 紙袋2袋にぎっしり詰まった和菓子が、2000円だなんて信じられない。

「いいから、持ってけ持っていけ。わしがお前たちが帰る前に電話しといてやるから。早く帰らんと、それこそ夕飯前だと、食べられなくなるぞ」

「でも……」

『はい、2000円』

「こら、ヒナタ!」

「はい、ちょうど受け取りましたよ」

「はぁ、じいちゃん、ばあちゃん、いつもありがとう」

「それじゃあ、訓練に行く日は連絡する。奴も絶対に連れていくぞ」

「ハハッ、おじさん来られると良いけど」

「絶対じゃ」

「それじゃあ」

「気をつけて帰りなさい」

 こうして俺たちは、大量の和菓子のお土産をもらって、再びセレナの背に乗り、家へと向かい始めた。
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