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しおりを挟む顎クイしていた手が、今度は私の手首を優しく掴んだ。
口にはまだ奏哉くんの唇が触れていて、そっと塞がれたまま。
ん……?
もう一方の手、私のシャツを捲ってる?
これじゃ、ブ、ブラが見えちゃうよ!?
掴まれてない方の手で、奏哉くんの肩を軽く叩いて抗議する。
するとようやく離れていった奏哉くんの唇。
だけどまだ、お互いの顔の距離が近すぎて。
慌ててパッと目を逸らす。
奏哉くんの整った顔、男の子にしては綺麗な顔だなぁとしか前は思わなかったのに。
今はなんていうか……大人の男の色気っていうのかな。
なんだか見てはいけないものを見てしまった気がする。
奏哉くんの顔は見ないようにして視線をずらし、木目の天井を見ながらゆっくりと深呼吸をした。
とりあえず、一度落ち着かないと。
「も、もぅ奏哉くん、からかわないで。こんなシーン漫画に無いでしょ?」
「ありましたよ?」
「ぇ……」
手を伸ばした奏哉くんが一冊の本を掴む。
見た事ない表紙。
でも絵の感じは知ってる。
私の好きな作者さんの描く絵。
ぁ、そっか……
帯がついたままだから、たぶん今日届いた本だ。
『初挑戦』『TL』と目立つ字で帯に書かれていて。
チラリと見えた表紙には『親の再婚』『連れ子』『義弟』の文字。
冒頭のページを開いて、奏哉くんが見せてくれた。
確かに女性が男性に押し倒され告白されている。
セリフも奏哉くんが言っていたのと、同じ。
ただ、違うのは――
服を捲られている女の人、ブラもずらされておっぱい出てた。
『どうして、こんなことに――!?』って
キスされたヒロインが心の中で絶叫してる。
奏哉くんは本を閉じると、私の頭のすぐそばに置いた。
ぇ、ぇ、ぇ、次のページが気になるっ
あの後の展開、どうなっちゃうの!?
「続き、してもいいですよね」
「ぁ、だ、だめっ……」
「さすが義姉さん、届いたばかりの本だったけどネットで先に読んでたりしたんですか? セリフ合ってるし、上手ですね。次の俺のセリフは……、そうそう『義姉さんお願い、俺を受け入れて』」
俺を受け入れて……ってどういう意味!?
奏哉くんの指先が、私のブラに触れた。
「ストップ、ストップ! やめて、奏哉くん!」
私の大きな声で、奏哉くんの動きがビクッと止まる。
怯えたような瞳でこちらを見つめる奏哉くんは、まるで捨てられた仔犬みたい。
ぅぅ、悲しそうな表情に、もの凄い罪悪感が……っ
「『再現してみよう』って言ったのは義姉さんなのに。俺が恋も知らない童貞だからって、からかったんですか……?」
「ぇ、ち、ちがっ、からかって、ないよっ」
こんなにカッコイイのに奏哉くん童貞なのっ、て事に驚いて。
からかってないよと思わず全力で否定してしまった。
安心したのか、嬉しそうに微笑む奏哉くん。
ぅぁ、可愛い……
奏哉くん、カッコイイのに、可愛い。
「よかった。それじゃ続き、しますね」
「ぅ、ん……?」
いいの、かな??
TLって、確か……
読んだことは無いけど、ティーンズラブの略だったはず。
ティーンズ、ラブ……
10代の、恋愛?
それなら読者の多くは18歳未満よね。
じれったいくらいにゆっくり恋を育む展開が得意な作者さんだし。
冒頭は過激だったけど、中身はそうでもないのかも。
再び奏哉くんの顔が近づいてくる。
キスをされたと思ったら、そのまま熱い何かがヌルリと口内に入ってきて。
「んぅ……ッ!」
クチュ、と濡れた音を立てながら、私の舌に絡まってきた。
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