相方募集中!

白い黒猫

文字の大きさ
2 / 20
相方募集中

小さい分、伸びしろはある筈!

しおりを挟む
 苗字の他に俺にはもう一つ悩みがあった。柔らかでサラサラの髪。バサバサと長いまつ毛につぶらな瞳と形のよいシュッとした唇に細い顎。そして、百六十三センチという身長。
 小学校までは、『王子様のようだ』と言われて結構周りからの評判も良かった。女の子にも友人の母親にもよくモテた。将来はアイドルになり、意外に人気も出るよ! とも言われていた。
 中学生あたりから気が付いてくる。自分はモテていたのではなく、単にオモチャとして弄られていただけという事に。
 初恋のに告白した時に返ってきた言葉はコレ。
『それはあり得ない。相方さかたくんに男を感じない』
 俺としては既にかなり良い感じの関係だと思ってた女の子。それだけに断られるショックはかなりのモノである。ちょっとした俺のトラウマ。
 思ったよりも打たれ強く、怒り哀しみより女の子への興味のほうが強かったようだ。女の子の事も嫌いにはなれなかった。
 俺は女の子にモテる為に努力をしていく事になる。それまで朗らかで優しいと言われていた性格に、ヤンチャさを加え男らしさを演出すると。さらに楽しいトークも出来る男にシフトチェンジしていった。内面は女の子大好きな肉食系野郎なのに、見た目儚げな草食系とアンバランスな俺が出来上がる。
 友人からは小柄の童顔のお調子者に見えるようだ。気が付けば女子に人気のあるヤツの引き立て役となっていた。

 まあ、その地位でもそれなりに彼女を作り楽しくやって来たから不満はない。そう言う自分は嫌いではない。とはいえ普通にモテる男というヤツにはうっすらと嫉妬を感じてしまう自分がいた。
 基本、本当にモテる男というのは、俺のように女の子へ積極的にアプローチしなくてもモテるものだ。
 女性の目なんて意識もしないで、何かに一心に打ち込む姿は俺がみても格好良い。最近の女子は追われるより追いかけ攻略する恋愛を楽しむようだ。
 大人になり、その傾向はさらに強くなる。社会に出て世間を知った事で男を見る目が肥えてきたのもある。また結婚という要素が加わりよりシビアな目で男を見るようになったから。それ故に優良物件の取り合いがあり、ますます追う方の立場で行動になるのだろう。
 社会人に出て一年目のおちゃらけたチビでカワイイキャラの俺はどうなのか? 弄ってもらえるけれど攻略対象外認定人物となってしまう。こうなるとさらなるキャラチェンジの必要性を感じる今日この頃。

「そろそろ出た方が良くないか?」
 俺は上司である清酒せいしゅさんのその声で、パソコン画面から顔をあげる。時計を、見ると一時三十分チョッと前。
「コレあと少しなので仕上げてから出ます」
 清酒さんは『そうか、分かった。でも遅れるなよ』と頷き、自分のデイスプレーに視線を戻し仕事を再開させる。キッチリ自分の仕事をこなして、俺の面倒をシッカリ見ている所は凄いと思ってしまう。

 俺が専ら今目指しているモテる男像はこのお方。何が良いって、顔は普通なのだが、なんか格好良い。格好つけている訳でもなく、自然な行動が格好良く、所作がクール。一言で言うと大人の男という感じ。知的で理論的な会話を駆使して営業でも上位の輝かしい結果を出して成績も良い。
 頭がキレて仕事も出来る。かといって頭が固い訳でもなく、優しげに見える笑みを浮かべジョークも飛ばしたりする。モテない訳がなく、女性社員にとって攻略対象ランキングも上位につけていた。
 取り合えず顔も性格も悪くはない。そんな俺がこの仕事ぶりを身に付けれは、かなり良い感じの男になれるのではないだろうか? そう思い、そのノウハウを学び部ことにする。直属の上司であることを良いことに、ひっつき仕事を頑張っているのも、格好良い大人の男たるを学ぶ為。一緒に仕事しているだけに、清酒さんとは物理的には、かなり近い存在にはなれている。
 とはいえ苗字である相方からはほど遠く、よく言えば可愛い後輩、悪く言えば世話のかかる子分。それ以上の存在に進化するには頑張るしかないようだ。

 外勤の前に仕上げた書類を経理に提出しようと部屋に入る。同期の仲間なかま雪絵が笑顔で出迎えてくれる。別に俺に気があるのではなく普通に同僚に対する親愛の表情。某美人女優と名前はほぼ同じだが、タイプは真逆。むしろその所為で絶対ワンレンは出来ないとかいつも言っている。珍名プラス有名人とほぼ同姓同名ということで俺とはまた別の名前による苦労を背負っているようだ。バレー部出身ならしい彼女はショートヘアーで明るく元気な女性。致命的な所は性格と胸がスッキリしすぎていて色気に欠けている。でもそこが変に意識もしなくてすみ、接しやすく気楽に話せる相手だった。
「これ、交通費よろしく~」
 俺は書類を渡し、仲間はそれを念のためと目で簡単にチェックしてから頷き受け取る。
「OK! 確かに受け取りました。ところでさ、相方くん」
 仲間は俺と同じ歳の筈なのに、俺の事を「くん」と上目線で呼んでくる。
「ん?」
 そんな声をあげる俺に、少し顔を寄せてコソコソ話をするような体勢は何だろうか?
「清酒さんって、今彼女とかいるの? 先輩達とその話になって気になって」
 その言葉に首を傾げるしかない。清酒さんとは仲は良い。新しい面白そうな家電の話とか、人気のスポットとかそういった会話は楽しんでいる。しかし恋愛関係の話はしていない事に気が付く。まあ学生時代の友人ならともかく会社の人と恋バナなんてあまりしない。
「知らん!」
 俺の言葉に、仲間は思いっきり顔を顰める。
「使えない男!」
 エライ言われようである。
「こっちは、色々大変なんだから、そんな下らない話なんてしないんだよ」
 その言葉に多少むかつきながら、そう答える。
「アンタ、清酒さんのペットなんでしょ? 飼い主の事ぐらいちゃんと分かってなさいよ」
 ペット……て……。どういう認識のされ方なのか……。
『その書類頼んだからな』とだけ言って部屋を出る事にした。外出する前に、なんでここまで疲れなきゃならないのか? 俺は深呼吸して気分を入れ換える。

※   ※   ※

仲間は日本人苗字ランキング2201位です。1664世帯数あり ナカマ、ナカカドといった読み方をされています。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

ミルクと砂糖は?

もにもに子
BL
瀬川は大学三年生。学費と生活費を稼ぐために始めたカフェのアルバイトは、思いのほか心地よい日々だった。ある日、スーツ姿の男性が来店する。落ち着いた物腰と柔らかな笑顔を見せるその人は、どうやら常連らしい。「アイスコーヒーを」と注文を受け、「ミルクと砂糖は?」と尋ねると、軽く口元を緩め「いつもと同じで」と返ってきた――それが久我との最初の会話だった。これは、カフェで交わした小さなやりとりから始まる、静かで甘い恋の物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おじさん、女子高生になる

一宮 沙耶
大衆娯楽
だれからも振り向いてもらえないおじさん。 それが女子高生に向けて若返っていく。 そして政治闘争に巻き込まれていく。 その結末は?

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...