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訓練シリーズ
マッサージクリーム①
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聖奈さんに書いて頂いた「CROSS OVER」にて、訓練と検品の世界が交わったので、篠田×未南のお話しです。
攻→篠田
受→未南/視点
◇ ◆
「マッサージクリーム?」
「はい。日頃任務に出られているメンバーのために体を解すようなものを作って欲しいと風見さんに言われましてね」
当然のように俺の部屋で寛ぐ篠田くんの手の平には、大きめの軟膏容器が置かれていた。
「今までは機械とか玩具とか、そう言った物が多かったので、違った物を作りたいと思って桃瀬さんに色々聞いてみたんですよ。それで完成したのがこのクリームです」
「へぇ。そりゃ凄いね。どんな効果があるの?」
そこからは真剣モードの篠田くんのトークが始まり、皮膚に塗布するとこりをほぐすような成分があること、保湿効果もあること等。働く人々には嬉しい効果が山ほどある内容だった。
「って事で。実際に未南さんを癒したいと思いましてね。どうです?マッサージさせてもらえません?」
「嫌な予感しかしないから無理だ。──って言いたい所だけど、結構気になるから試してよ。ただし条件がある」
「何ですか?」
「エロい事は一切禁止だ」
声量を上げてそう伝えると、篠田くんはいつものニコッとした人懐っこい笑顔を浮かべると「もちろんです」と言った。
「…あと、拘束とかはなし。俺が嫌だ!って言ったらすぐにやめる事。いいな」
正直信用ならないがここ最近作業に明け暮れて体はバキバキだった。マッサージ店に行こうと悩んでいたくらいだったので、無償で解してもらえのは有難い。
「分かりました。じゃあ僕の部屋に来てもらえますか?クリームを体に塗るので少しお布団が汚れちゃうかもしれないので。未南さんに試した後は風見さんをマッサージすることになってて、新しいシーツも複数準備してもらえましたので」
その言葉に少し不安を覚えるも、それ以上にその後に告げられた言葉が引っかかった。
「──お前が風見さんのマッサージをするわけ?」
「? はい。それで問題なければ組織のメンバーの人に配る予定です。そんなことより、早く部屋来て下さいよ」
「…」
一瞬だけ心の奥でモヤッとした気持ちが芽生えた気もしたが、勘違いだと思い直して隣の部屋へ移動した。
「未南さんは何処が特に凝ってるとかあります?」
「んー、肩と腰がバッキバキかな。最近はしゃがんで作業して変に体重かかってるし足も痛いけど」
「じゃあまずは足からマッサージしていきますね。ベッドに寝転んでもらえます?」
「うん」
綺麗に整えられた篠田くんのベッドへうつ伏せで寝転ぶと、ふわりと彼の香りが鼻を通る。
(…安心する)
何故か自分の布団よりも、癒される気がする。枕に顔を埋めて抱き締めると更に安心した。
「未南さん。クリーム塗るのでズボン脱がしていいですか?」
「はぁ?エロい事はなしっつったろ」
「えぇ…でも服、汚れちゃいますよ?」
「……下着は履いとくからな」
「はい。今日は純粋なマッサージだけなので、変に警戒しないで下さいよ」
「お前には前科がありまくりなんだよ」
丁寧にズボンを脱がされると、すぐに足の裏から脹脛にかけてクリームが塗られた。
「このクリーム、じんわりと温めてくれる効果があるんです。そしたらこりも解れやすいらしくて」
「ん…確かにちょっとあったかい。気持ち良い」
足の裏のツボを押す篠田くんの親指は痛気持ち良いと感じるもので、完全にただのマッサージ。
最初こそは警戒していたが、日々の疲れが吹き飛ぶような気持ち良さにウトウトし始めると、篠田くんの指は上半身に移動した。
「…未南さん、上脱げます?」
「ん…分かった」
半分寝かかっていたので重たくなってしまった体を起こし、素直に上の服も脱いで軽く畳んで再び枕に顔を埋めた。
「気持ち良いですか?クリーム、どうです?」
「俺、昔よくマッサージ行ってたけどもみほぐししかした事なかったからすげー気持ち良い」
「男性は服の上から指圧することが多いですもんね」
「そうそう。女性はオイルマッサージとか色々あるみたいだけど、何か恥ずかしくてさぁ」
「オイルも色んな効果がありますもんね。けど良かった。誰も未南さんに触ってなくて」
「…俺に触りたいと思う変態はお前くらいだよ」
「だといいですけどね。未南さんは可愛いから、危なっかしいですし。僕だけがいいです」
腰に添えられた親指は、グリグリと気持ち良い所を揉み込んだ。
このまま眠ったら絶対に変なことされる。だから眠っちゃだめだと思いつつも、気持ち良い刺激と、篠田くんの心地良い声色に睡魔が襲いかかる。瞼が閉じかけた時、篠田くんが俺の名を呼んだ。
「──ねぇ、未南さん」
「……何」
「さっき、僕が風見さんをマッサージするって言った時随分険しい顔してましたけど、なんでですか?」
ギシッとベッドが軋む音が聞こえたかと思えば、ずしっと体に重みが加わる。
後ろから覆い被さるように乗っかってきた篠田くんは、悪戯ぽく笑いながらそう問いかけた。
「は……?おい、やめろ。エロい事と拘束は禁止だって──」
「エロい事って? 僕はただ、未南さんの手を握って質問してるだけですよ?」
ふぅ、と息を吹きかけられた後、耳元で問いかけられると小さく体が跳ねた。
「ぁ……っ!く、クリームつくぞ……っ」
「すぐに体に浸透するので、平気ですよ。ねぇ、未南さん。僕が風見さんをマッサージするの、嫌?」
「ひぅ…っ、そこで、喋んな…っ」
わざとらしく耳元で問い掛けてくるので、篠田くんが喋る度にぞわぞわとした感覚が襲ってくる。身を捩っても篠田くんの体で殆ど動けないし、何よりもこうやって密着する事はあまりなかったのでやけに緊張する。
「…耳、弱いですよね。けど別にこれはえっちな行為には入らないでしょ? えっちって、こういうことを言いますよね」
後ろから手が伸びてきたのは胸元。シーツとくっついていた乳首に指が差し込まれ、きゅっと摘まれた。
「──ッ、」
「可愛い。少し硬くなってますよ?」
「…っ、ん、…篠田、くんっ」
「何ですか?」
「…風見、さんにもこんな触り方、すんの?」
「はぁ? するわけないでしょ。想像するだけでも気持ち悪いんでやめてくれません?ていうか僕、あんまり人に触るの好きじゃないですし、マッサージするのも気が進まないんですけどね」
その言葉に何故か安心する自分が居て。
エロい事はするなと伝えたし、俺が嫌だと言ったらやめろとも言った。なのに、「嫌だ」という言葉が出てこない。
「…っ、じゃあ俺が、ちゃんとこのクリームの効果、伝えるから……っ、わざわざお前が風見さんにマッサージする必要はねぇよ」
ぎゅっとシーツを握り締め、枕に顔を埋めて言うだけで精一杯だった。そう伝えると、篠田くんは俺の耳元でクスッと笑ったのが分かった。
「…僕が風見さんのマッサージするの、嫌ですか?」
こうやってこいつが直接誰かに触れたりするのは──。
「……や、だ」
「分かりました。素直に言えたいい子にはご褒美あげましょうね」
嬉しそうに笑った篠田くんは、俺に覆い被さったまま右手を脇腹に移動させた。
「うあっ」
「可愛い声、聞かせて下さい」
脇腹に置かれた手がこちょこちょと動き出すと、俺の体は思いっきり跳ねたが、篠田くんの体に制御されて逃げる事は叶わなかった。
「おいっ……!ばかっ、ひゃはははっ!」
「可愛い手がバタバタしてますよー?僕の手を止めれるかなー?」
「ぁはっ! あはははは!! やめろ!!」
「未南さんの笑った声、可愛いから好きなんですよね」
篠田くんの手を掴もうと手を伸ばしても、ちょこまかと動いて掴むことが出来ない。
「あはっ…、ぁ!あぅっ……ふ…、ンンッ」
「こうやって優しくなぞってあげるとエッチな声出すのも可愛いです」
ゆっくりと指が肌をなぞると、篠田くんの言葉通り俺の口からは甘い声が漏れる。
「ゃめ…っ、ぁはぁ、…んっ、ははははっ、ぁはッ」
何度手を掴みに行っても捕えることが出来なかったため、俺は行動を変えた。動きを止めることが出来ないなら、声を出さないようにするしかない。
きつく枕を抱き締めて声を堪えると、擽ってくる手はそのままに篠田くんは再度俺の耳元へやってきた。
「未南さん、こちょこちょこちょ~」
「ひっ、んぅっ……ふふっ、…やめ、やっ、めっ、て、」
「鳥肌凄いですね。焦らしたりするような刺激、苦手ですもんね」
「~~──っ、ん、ん……!」
いつものような激しい擽ったさではない、頭が溶けるような優しい刺激に上手く言葉が出せない。
「未南さん。……ですよ」
前にも何か言われた気がしたけど、蕩けた俺にはその言葉が上手く聞き取れなかった。
「な、に…っ?何て、っ──!?ひゃはははは!!」
「前もスルーしたでしょ。ちゃんと聞いてくれない人にはお仕置きです」
こちょこちょと両側から脇腹を擽られると、体は反射的に暴れ出して逃げようと身を捩る。
「ぁははははは!! おいばかぁぁあ!やめっ、ろやぁぁぁあ!!」
「はいはい、擽ったいですねぇ~」
脇腹から胸の横辺りに移動すると、枕を抱き締めることなど出来ず、暴れながら必死に腕を掴もうと奮闘した。
「僕の手、掴んでみて下さいよ。まぁねじ伏せますけどねぇ」
「てんっめ……ッ、ぁ、はははははは!!ぎゃあああ!」
脇の下に指が差し込まれると、こちょこちょと動かされる。激しい擽ったさに腕を締めるも、入り込んだ指はうねうねと動く。
「ひっ、はぁ!あはぁぁ!!やめろっ、擽ったいぃぃ!!離せぼけぇぇぇ!!」
「えー?無償でマッサージしたんですから、少しくらいいいでしょう」
「あ"はははははぁぁ!!苦じぃっ、苦し"ぃぃぃぃっ」
「苦しいですねぇ。可愛い。こちょこちょこちょ」
「ひはぁっ!!耳元で喋ってくんな変態ぃぃっっ」
「ん…耳元で言ったら余計擽ったく感じるでしょ?」
はむ、と耳の縁を咥えながらこちょこちょと指が動くと擽ったさと気持ち良さでじんわりと汗が滲み、涙で視界が潤む。
「ね、未南さん。もっかい言いますね。……ですよ」
耳元で囁かれ、初めて届いた言葉。
その言葉にカァッと体が熱くなると、篠田くんはちゅっと耳元へキスを落とした。
「耳まで赤くしちゃって可愛い」
「てめ…っ、人を揶揄うなっ…」
「まぁ未南さんからかえばからかうほど面白くて可愛いですからね。でもさっき伝えた言葉はからかったわけじゃなくて、僕の本心ですよ」
「……っ、バカ」
「あはは。そんな真っ赤な顔で言われても可愛いだけですけどね」
クスクスと笑う篠田くんの声はいつもより優しくて、どんどんと甘い雰囲気になっていく。
──と、思ったのだが。
「じゃあラストスパートはクリームで肌の滑りやすくしてくすぐりますか」
「え」
「ん?あれ、甘い雰囲気期待しました?ざーんねんでした」
ニヤニヤ笑う顔は、いつもと変わらないいじめっ子全開で。
「…っ、篠田てめぇぶっ飛ばすからなぁぁぁぁ!!」
◇ ◆
その後、散々擽られて泣かされた俺だったのだが、クリームの効果なのか体はめちゃくちゃスッキリしていた。
悔しいがその効果を伝えると、クリームはすぐに組織内に配られ、重宝されたのだった。
end.
攻→篠田
受→未南/視点
◇ ◆
「マッサージクリーム?」
「はい。日頃任務に出られているメンバーのために体を解すようなものを作って欲しいと風見さんに言われましてね」
当然のように俺の部屋で寛ぐ篠田くんの手の平には、大きめの軟膏容器が置かれていた。
「今までは機械とか玩具とか、そう言った物が多かったので、違った物を作りたいと思って桃瀬さんに色々聞いてみたんですよ。それで完成したのがこのクリームです」
「へぇ。そりゃ凄いね。どんな効果があるの?」
そこからは真剣モードの篠田くんのトークが始まり、皮膚に塗布するとこりをほぐすような成分があること、保湿効果もあること等。働く人々には嬉しい効果が山ほどある内容だった。
「って事で。実際に未南さんを癒したいと思いましてね。どうです?マッサージさせてもらえません?」
「嫌な予感しかしないから無理だ。──って言いたい所だけど、結構気になるから試してよ。ただし条件がある」
「何ですか?」
「エロい事は一切禁止だ」
声量を上げてそう伝えると、篠田くんはいつものニコッとした人懐っこい笑顔を浮かべると「もちろんです」と言った。
「…あと、拘束とかはなし。俺が嫌だ!って言ったらすぐにやめる事。いいな」
正直信用ならないがここ最近作業に明け暮れて体はバキバキだった。マッサージ店に行こうと悩んでいたくらいだったので、無償で解してもらえのは有難い。
「分かりました。じゃあ僕の部屋に来てもらえますか?クリームを体に塗るので少しお布団が汚れちゃうかもしれないので。未南さんに試した後は風見さんをマッサージすることになってて、新しいシーツも複数準備してもらえましたので」
その言葉に少し不安を覚えるも、それ以上にその後に告げられた言葉が引っかかった。
「──お前が風見さんのマッサージをするわけ?」
「? はい。それで問題なければ組織のメンバーの人に配る予定です。そんなことより、早く部屋来て下さいよ」
「…」
一瞬だけ心の奥でモヤッとした気持ちが芽生えた気もしたが、勘違いだと思い直して隣の部屋へ移動した。
「未南さんは何処が特に凝ってるとかあります?」
「んー、肩と腰がバッキバキかな。最近はしゃがんで作業して変に体重かかってるし足も痛いけど」
「じゃあまずは足からマッサージしていきますね。ベッドに寝転んでもらえます?」
「うん」
綺麗に整えられた篠田くんのベッドへうつ伏せで寝転ぶと、ふわりと彼の香りが鼻を通る。
(…安心する)
何故か自分の布団よりも、癒される気がする。枕に顔を埋めて抱き締めると更に安心した。
「未南さん。クリーム塗るのでズボン脱がしていいですか?」
「はぁ?エロい事はなしっつったろ」
「えぇ…でも服、汚れちゃいますよ?」
「……下着は履いとくからな」
「はい。今日は純粋なマッサージだけなので、変に警戒しないで下さいよ」
「お前には前科がありまくりなんだよ」
丁寧にズボンを脱がされると、すぐに足の裏から脹脛にかけてクリームが塗られた。
「このクリーム、じんわりと温めてくれる効果があるんです。そしたらこりも解れやすいらしくて」
「ん…確かにちょっとあったかい。気持ち良い」
足の裏のツボを押す篠田くんの親指は痛気持ち良いと感じるもので、完全にただのマッサージ。
最初こそは警戒していたが、日々の疲れが吹き飛ぶような気持ち良さにウトウトし始めると、篠田くんの指は上半身に移動した。
「…未南さん、上脱げます?」
「ん…分かった」
半分寝かかっていたので重たくなってしまった体を起こし、素直に上の服も脱いで軽く畳んで再び枕に顔を埋めた。
「気持ち良いですか?クリーム、どうです?」
「俺、昔よくマッサージ行ってたけどもみほぐししかした事なかったからすげー気持ち良い」
「男性は服の上から指圧することが多いですもんね」
「そうそう。女性はオイルマッサージとか色々あるみたいだけど、何か恥ずかしくてさぁ」
「オイルも色んな効果がありますもんね。けど良かった。誰も未南さんに触ってなくて」
「…俺に触りたいと思う変態はお前くらいだよ」
「だといいですけどね。未南さんは可愛いから、危なっかしいですし。僕だけがいいです」
腰に添えられた親指は、グリグリと気持ち良い所を揉み込んだ。
このまま眠ったら絶対に変なことされる。だから眠っちゃだめだと思いつつも、気持ち良い刺激と、篠田くんの心地良い声色に睡魔が襲いかかる。瞼が閉じかけた時、篠田くんが俺の名を呼んだ。
「──ねぇ、未南さん」
「……何」
「さっき、僕が風見さんをマッサージするって言った時随分険しい顔してましたけど、なんでですか?」
ギシッとベッドが軋む音が聞こえたかと思えば、ずしっと体に重みが加わる。
後ろから覆い被さるように乗っかってきた篠田くんは、悪戯ぽく笑いながらそう問いかけた。
「は……?おい、やめろ。エロい事と拘束は禁止だって──」
「エロい事って? 僕はただ、未南さんの手を握って質問してるだけですよ?」
ふぅ、と息を吹きかけられた後、耳元で問いかけられると小さく体が跳ねた。
「ぁ……っ!く、クリームつくぞ……っ」
「すぐに体に浸透するので、平気ですよ。ねぇ、未南さん。僕が風見さんをマッサージするの、嫌?」
「ひぅ…っ、そこで、喋んな…っ」
わざとらしく耳元で問い掛けてくるので、篠田くんが喋る度にぞわぞわとした感覚が襲ってくる。身を捩っても篠田くんの体で殆ど動けないし、何よりもこうやって密着する事はあまりなかったのでやけに緊張する。
「…耳、弱いですよね。けど別にこれはえっちな行為には入らないでしょ? えっちって、こういうことを言いますよね」
後ろから手が伸びてきたのは胸元。シーツとくっついていた乳首に指が差し込まれ、きゅっと摘まれた。
「──ッ、」
「可愛い。少し硬くなってますよ?」
「…っ、ん、…篠田、くんっ」
「何ですか?」
「…風見、さんにもこんな触り方、すんの?」
「はぁ? するわけないでしょ。想像するだけでも気持ち悪いんでやめてくれません?ていうか僕、あんまり人に触るの好きじゃないですし、マッサージするのも気が進まないんですけどね」
その言葉に何故か安心する自分が居て。
エロい事はするなと伝えたし、俺が嫌だと言ったらやめろとも言った。なのに、「嫌だ」という言葉が出てこない。
「…っ、じゃあ俺が、ちゃんとこのクリームの効果、伝えるから……っ、わざわざお前が風見さんにマッサージする必要はねぇよ」
ぎゅっとシーツを握り締め、枕に顔を埋めて言うだけで精一杯だった。そう伝えると、篠田くんは俺の耳元でクスッと笑ったのが分かった。
「…僕が風見さんのマッサージするの、嫌ですか?」
こうやってこいつが直接誰かに触れたりするのは──。
「……や、だ」
「分かりました。素直に言えたいい子にはご褒美あげましょうね」
嬉しそうに笑った篠田くんは、俺に覆い被さったまま右手を脇腹に移動させた。
「うあっ」
「可愛い声、聞かせて下さい」
脇腹に置かれた手がこちょこちょと動き出すと、俺の体は思いっきり跳ねたが、篠田くんの体に制御されて逃げる事は叶わなかった。
「おいっ……!ばかっ、ひゃはははっ!」
「可愛い手がバタバタしてますよー?僕の手を止めれるかなー?」
「ぁはっ! あはははは!! やめろ!!」
「未南さんの笑った声、可愛いから好きなんですよね」
篠田くんの手を掴もうと手を伸ばしても、ちょこまかと動いて掴むことが出来ない。
「あはっ…、ぁ!あぅっ……ふ…、ンンッ」
「こうやって優しくなぞってあげるとエッチな声出すのも可愛いです」
ゆっくりと指が肌をなぞると、篠田くんの言葉通り俺の口からは甘い声が漏れる。
「ゃめ…っ、ぁはぁ、…んっ、ははははっ、ぁはッ」
何度手を掴みに行っても捕えることが出来なかったため、俺は行動を変えた。動きを止めることが出来ないなら、声を出さないようにするしかない。
きつく枕を抱き締めて声を堪えると、擽ってくる手はそのままに篠田くんは再度俺の耳元へやってきた。
「未南さん、こちょこちょこちょ~」
「ひっ、んぅっ……ふふっ、…やめ、やっ、めっ、て、」
「鳥肌凄いですね。焦らしたりするような刺激、苦手ですもんね」
「~~──っ、ん、ん……!」
いつものような激しい擽ったさではない、頭が溶けるような優しい刺激に上手く言葉が出せない。
「未南さん。……ですよ」
前にも何か言われた気がしたけど、蕩けた俺にはその言葉が上手く聞き取れなかった。
「な、に…っ?何て、っ──!?ひゃはははは!!」
「前もスルーしたでしょ。ちゃんと聞いてくれない人にはお仕置きです」
こちょこちょと両側から脇腹を擽られると、体は反射的に暴れ出して逃げようと身を捩る。
「ぁははははは!! おいばかぁぁあ!やめっ、ろやぁぁぁあ!!」
「はいはい、擽ったいですねぇ~」
脇腹から胸の横辺りに移動すると、枕を抱き締めることなど出来ず、暴れながら必死に腕を掴もうと奮闘した。
「僕の手、掴んでみて下さいよ。まぁねじ伏せますけどねぇ」
「てんっめ……ッ、ぁ、はははははは!!ぎゃあああ!」
脇の下に指が差し込まれると、こちょこちょと動かされる。激しい擽ったさに腕を締めるも、入り込んだ指はうねうねと動く。
「ひっ、はぁ!あはぁぁ!!やめろっ、擽ったいぃぃ!!離せぼけぇぇぇ!!」
「えー?無償でマッサージしたんですから、少しくらいいいでしょう」
「あ"はははははぁぁ!!苦じぃっ、苦し"ぃぃぃぃっ」
「苦しいですねぇ。可愛い。こちょこちょこちょ」
「ひはぁっ!!耳元で喋ってくんな変態ぃぃっっ」
「ん…耳元で言ったら余計擽ったく感じるでしょ?」
はむ、と耳の縁を咥えながらこちょこちょと指が動くと擽ったさと気持ち良さでじんわりと汗が滲み、涙で視界が潤む。
「ね、未南さん。もっかい言いますね。……ですよ」
耳元で囁かれ、初めて届いた言葉。
その言葉にカァッと体が熱くなると、篠田くんはちゅっと耳元へキスを落とした。
「耳まで赤くしちゃって可愛い」
「てめ…っ、人を揶揄うなっ…」
「まぁ未南さんからかえばからかうほど面白くて可愛いですからね。でもさっき伝えた言葉はからかったわけじゃなくて、僕の本心ですよ」
「……っ、バカ」
「あはは。そんな真っ赤な顔で言われても可愛いだけですけどね」
クスクスと笑う篠田くんの声はいつもより優しくて、どんどんと甘い雰囲気になっていく。
──と、思ったのだが。
「じゃあラストスパートはクリームで肌の滑りやすくしてくすぐりますか」
「え」
「ん?あれ、甘い雰囲気期待しました?ざーんねんでした」
ニヤニヤ笑う顔は、いつもと変わらないいじめっ子全開で。
「…っ、篠田てめぇぶっ飛ばすからなぁぁぁぁ!!」
◇ ◆
その後、散々擽られて泣かされた俺だったのだが、クリームの効果なのか体はめちゃくちゃスッキリしていた。
悔しいがその効果を伝えると、クリームはすぐに組織内に配られ、重宝されたのだった。
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