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まこ

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Special ② (聖奈さん♡)

CROSS OVER コンペ編⑥

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「かんぱ~い!!」

居酒屋に集まった俺達四人は、それぞれ手にグラスを持ちガチャンと乾杯した。
俺と栗原さんはビール、桃瀬は当然未成年の為ウーロン茶だが、篠田くんもアルコールではなくオレンジジュースを頼んでいる。

「篠田くんは飲まないの?」
「僕は酔ってベロベロになった未南さんを持って帰らないといけないので」
「持って帰るな」

しょっぱなから漫才をしてる俺達のやり取りを聞いていた桃瀬が口を挟む。

「てかさっきから気になってたんですけどどうして未南さん声枯れてるんですか?俺達と別れるまで普通だったでしょ」

「…まぁ、そりゃ色々あって」
「色々で済ませるんですか」

四人がけのテーブル席に俺と篠田くんは隣同士、桃瀬と栗原さんは対面に座っている。完全個室のちょっとお洒落な居酒屋の為、他のお客さんに話を聞かれる心配もない。Daisyの人達、手広くやってんなぁ。

「そうそう早速聞きたかったんですけど、桃瀬さんって薬の開発もしてるんですよねー?!僕も興味あって、今度薬の分野も勉強して自作できたらなーって思ってたんです!今度是非教えて下さい!」

交流する気満々だった篠田くんが元気に声をあげた。互いに情報交換しながら技術を競い合っていきたいと言っていたので、この場を待ちわびていたのか一番生き生きとして楽しそうだ。

「勿論いいですよ。ちなみにこの間まで主に研究してたのは痒み薬ですね。拷問や訓練に使うものです」

桃瀬の方も篠田くんの技術力には一目置いているみたいで、この二人はすぐに意気投合していた。…いや、このドS悪魔二人が組んだらロクなもの作らなさそうな未来しか見えないんだけど!

「なるほど、痒み薬も拷問に使われたりするん
だぁ!今度絶対作ろーっと!」
「いや絶対作らなくていいから!!いいか、絶対作るなよ!絶対作るなよ!」
「未南さんこういうフリ上手いから~」
「フリじゃねーって!!」

ぎゃあぎゃあと騒ぐ俺達を見ながら、桃瀬は楽しそうに、栗原さんは静かにマイペースに飲んでいる。正反対の雰囲気ながらも、長年一緒に過ごしてきたのだろうか、この二人は実に良く息が合っていそうなコンビだ。

「俺達はDaisyで任務をこなしながら技術者として拘束台や薬を開発してるんですけど、未南さん達は任務に出ないんですか?」
「いや俺が任務なんて行くわけねーだろ。戦闘力皆無だぞ。もし敵が攻めこんできた時もIrisの人達に守ってもらうつもりだから」

注文していたツマミが届いたのでポリポリと食べながら桃瀬の質問に適当に答えていると、オレンジジュースしか飲んでない筈の篠田くんがハイテンションで割り込んできた。

「未南さん、人任せにしてないでいざという時は自分の身は自分で守らないとですよ。これだけ優秀な技術者なら悪い組織から狙われてさらわれるかもしれないですよねぇ…心配だなぁ。もしさらわれた時の為に今から”訓練”しといた方が良いんじゃないですか~?大丈夫です、その時の為に僕がマンツーマンでしっかり訓練してあげますから!」

いらねーって!!と言いながら篠田くんの方を見ると、串に刺さった立派なタコ足のおでんを注文していた。な、なんかそれ見たらゾワッてする!!しかも何故かそれを俺の口元に持ってこようとしてるし!

「ひィっ!!そのタコ見せるな!なんか俺未だにちょっと触手恐怖症が抜けてないの!誰かさんのせいで!!え、ちょちょちょ近付けるなって!!」
「はい、立派なタコ足あ~んしてあげます。口開けて~」

アルコールの入っていない篠田くんのおふざけが加速し、それに感化されたのか黙って見ているだけだった栗原さんも料理を運んできた店員さんに言い出した。

「あ、俺達もタコ串おでん二つ追加で」
「やめろ増やすな!!」

賑やかな俺達を見て笑う店員さん。かしこまりましたと言って去っていくと、俺は料理と一緒に持ってきた追加のビールを勢いよくあおる。
ペース早いですねぇと嬉しそうに言う篠田くんが目の前まで差し出してきたタコ足おでんを結局そのまま噛みちぎってもぐもぐしていると、桃瀬がまた質問してきた。

「未南さんと篠田さんは勤めてる会社で出会ったと思うんですけど、どうしてそんなに仲良くなったんですか?」

口調からして純粋な質問なんだと思うが、俺は恥ずかしくて絶対答えられない。すると篠田くんはよくぞ聞いてくれましたとばかりにぶっちゃける。

「端的に言うと僕がドMだって嘘ついて近づいたらあっさりと騙されました!」
「いや端的に言い過ぎだろ!しかもあんまり質問の答えになってないし!それ以上言わなくていい!」

アルコールがかなり回ってきた俺は顔を真っ赤にしながら篠田くんにしがみつく。当時を思い出すと恥ずかしさで本当に顔から火が出そうだ。
…でも、あれがなかったら篠田くんとペアを組めてなかったんだよなと思うとそれも寂しくなり、かなり酔っている俺は篠田くんにしがみついたままぎゅっと力を入れて呟く。
「だっていじめさせてくれるって言うから…」

篠田くんは俺の頭をよしよしと撫で、酔いが回っているせいで普段の俺とは違う言動に驚いている二人に更にぶっちゃけた。

「未南さんこう見えて純粋なんですよ。無防備すぎますし。デスクの上に篠田泣かすってメモ置いたままスヤスヤ寝てたぐらいなんで」

「…~~~ッッ!!」
それを聞いてまさかの栗原さんは顔を手で押さえながらぷるぷると笑いを堪えていた。なんかツボに入ったらしい…。

「…ッ、いや、無いだろ、そんな漫画みたいな話…くくッ…!」
「えぇ~!栗原さんがこんな笑ってるの見るのいつ以来?!栗原さんを笑わせるなんて…未南さん、やりますね。滅多にそんな人居ませんよ」

笑う栗原さんを見て目を丸くする桃瀬に褒められているのかいないのかも分からないが、篠田くんに水を勧められるとそれも一気に飲み干した。

「笑わないで下さいよぉ柿原さん…」
「柿原じゃねーよ」

今度は桃瀬がツボったみたいでテーブルを叩きながら爆笑しており、篠田くんもつられて一緒に笑いまくっている。え、え、俺の何がそんなに可笑しいんだ!?ともはや理解できず、桃瀬と篠田くんの楽しそうな会話を横で流しながらふわふわとした頭で更にビールを追加した。

「いや面白すぎるでしょこの人…本当に篠田さんとベストコンビですね。いろんな意味でお似合いです」
「しーっ。…これでも未南さん自分の事はドSだってずっと思ってるんですから黙っときましょう。ふふっ、ほんっと可愛くて面白いです。
…ちょっと未南さん!!ハイほら水も飲んで!お酒と同量水も飲まないと身体に悪いんですよ!」

トントンと背中を叩かれ、ぼーっとしながら言われるがまま素直に両手でコップを持ちゴクゴクと飲む。すると篠田くんが愛でるような視線で「なんかリスみたいですね。可愛い」と言ってきた。うるせぇ。もっとカッコいい動物にしろ。

…その後も俺達の話は留まることを知らず、結局ずーーっと朝までワイワイと盛り上がっていた。

悔しくも篠田くんの予想通り俺がベロベロに酔って何を喋ってるかも記憶も曖昧な頃、朝焼けに照らされながら長かった打ち上げもお開きとなった。
半分寝かけの俺は篠田くんの肩に手を回して支えられ、店から出た俺達四人は並んでゆっくりと歩いていく。暫くすると、桃瀬が時計を見て名残惜しそうに言った。

「うーわ、気づいたらもうこんな時間!昨日から疲れてた筈なのに楽し過ぎてあっという間でした。またIrisにも近いうちに寄らせてもらいますので」

「…Daisyに戻ったらまたやらなきゃいけねー事が山程あって今から憂鬱だな。ま、コンペの準備で俺たちの分の任務を引き受けてくれてた奴らも居るし。…それ終わったらまた会うかもな」

俺と同じで少し眠いのか、目をこすりながらも笑顏で手を振る桃瀬と、結構飲んでいた筈なのに全然酔った素振りを見せずいつも通りの栗原さん。
睡魔は限界だし視界も思考もおぼろげだが、俺も篠田くんの肩に支えられながらなんとか手を振って「またな」と伝えた。

篠田くんも「またこうやって集まりたいですね。今度は僕達が作ってきた商品も持ってきますので」と言って手を振っていた。…桃瀬と栗原さんは、顔を見合わせて頷く。

眩しい朝日を浴びながら去っていく二人を見えなくなるまで見送り、ふらふらとおぼつかない足取りで歩き始める俺と、それをしっかり支えながら同じ歩幅でゆっくり歩いてくれる篠田くん。

今まではここで別れそれぞれの家へ帰っていたが、
今は帰る道も、帰る場所も同じだ。

ーーその感覚が、少し不思議で、嬉しくて。

ずっと続けばいいなと思った。


end.
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