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まこ

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訓練シリーズ

閉じ込められた?

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キスのみ

攻→風見
受→七彩/視点

◇ ◆

「行ってきますー」

見送りに来てくれた柚木達にそう伝え、俺は風見先輩と共に組織を出発した。

今回の任務──というよりお使いは、風見先輩と二人でDaisyから薬を受け取るだけという簡単なもの。元々は俺に任されたものだったが、たまたまその場に居た風見先輩が「その帰りに飯でも行こうぜ」と誘ってくれたので二人で行くことになった。

「桜花のやつ、薬受け取ったらとっとと帰って来いって煩かったな」

「まぁ特殊な薬ですし、そりゃそうでしょう。紛失とかあったら大変だしー」

「俺がそんなヘマするわけねぇっての」

「はいはいー。薬だけ組織に渡したらすぐご飯行けばいいじゃないですかー」

二人で雑談をしながら歩くなんて少し新鮮で楽しくて、足取りが軽い。俺より背の高い先輩を見上げながら、何でもない話を繰り広げていると、あっという間にDaisyの組織へ到着した。

「よぉ桃太郎」

「あ、風見さん、七彩さんいらっしゃいませ。こっちまで来てくれてありがとうございます」
「わぁ!桃くんこの人達だれぇー?」

組織へ入るなり、出迎えてくれたのは子ども達に囲まれていた桃瀬だった。客人が珍しいのか、俺たちを見ると嬉しそうにはしゃぐ子ども達に俺たちのことを紹介する桃瀬は、柔らかい笑顔を見せている。

「じゃあ薬の場所へ案内しますね」

「もし良かったら俺たちで取りに行くけど。お前はその子達と遊んでやれよ」

「えぇ…いいんですか?じゃあお言葉に甘えて…。風見さんは以前行ったことがあると思いますけど、保管庫にIrisの分まとめて置いてるのでお願いします。場所覚えてます?」

「おーあの狭いとこな。覚えてる覚えてる。サンキュー」

よろしくお願いしますとぺこりと頭を下げた桃瀬から鍵を受け取ると、我が家のようにスタスタと歩き出した先輩。俺も桃瀬達に軽く頭を下げてすぐにその背中を追いかけた。

「先輩、Daisyに詳しいんですね」
「前一緒に任務した時に何回か来てるからな」

迷うことなく到着したのは、組織の建物から少しだけ離れた小さな建物。保管庫と言っていたので誰かがいる様子はない。受け取った鍵で建物の中へ入ると、小さな部屋がいくつかあるようだった。

「薬の保管は確かここだったはず」

短い廊下を進んだ先にある一つの部屋。立て付けが悪いのか、少しだけ開けるのに手こずっている様子だが、無事に扉が開いたので室内を覗くと、「Iris用」と書かれた薬が置かれている棚を発見した。

「狭いですねー」

棚が部屋を圧迫しているためか、中は二人で入るのがやっと。

「元々は使われてない倉庫だったらしいけど、薬とか道具とか色んなものを開発するようになって保管する場所が足りなくなったらしくてな。こっちに少しずつ移してるみてぇ。んじゃ帰るか」

「はぁい」

薬を収納した先輩を見て、すぐに入ってきた扉のドアノブに手をかけて力を加えてみるも、何故か動かない。

「あれ。開かないんすけど」
「古くて建て付け悪いらしいからなー。慣れたら開くよ。ほら、頑張れ七彩」
「さりげなくお尻触んないでもらえます?」

そういえば入る時も結構力入れてたもんなと、俺も更に力を加えてみるも、上手く開かない。

「っ、開かないんですけど!?重た…」
「えー?さっさと飯食いに行きたいから早くしてくんない?」
「じゃあ先輩が開けてよ!」
「狭いからあんま動けないしな~」
「いや普通に動けるでしょ!?」

必死にドアと格闘していると、先輩は後ろからぎゅっと抱き締めてきた。

「うぉい!何ですか!?俺に抱き付く暇があるなら扉開けてよ!出れないんですけど!」

「はいはい。仕方ねーなー」

暫く抱き締められた後、先輩と場所を入れ替えて扉を開けてもらおうとするも。

「あれ?何これまじで開かねぇな」

先輩が一生懸命力を入れて開けようとしてみても、俺と同じように音が鳴るだけ。

「え…」

頼りにしていた先輩でも開かないと分かると、一気に青ざめた。

「やべ。前より建て付けひどくなってんな。開かないわ、どうしよ。とりあえず桃太郎に連絡入れるわ。あいつ子供と遊んでる時あんま見れてねーから、暫くかかるかもしんないけど」

「えぇ…俺からも桃瀬に電話しましょうか?」

「んや、連絡に気付かなくても鍵返しにこないなと思って見には来るだろ」

桃瀬に連絡を終えた先輩は、俺とは正反対でこの状況を楽しんでいるように見える。殆ど大きな動きが出来ない狭いスペースで二人きり。これが敵の組織とかなら一切の余裕もないだろうが、ここは仲間でもあるDaisyの組織。そして数時間もすれば必ず見つけてもらえる状況だと、ある程度の余裕はあるわけで。

「…せっかく閉じ込められたわけだし、楽しんどく?」

「はぁ!?ここ何処だと思ってんですか!?数時間もすれば誰か来るでしょうけど、結構かかるかもしれないんですよ?」

「うん。閉じ込められてこわーい。不安だからせめて大好きな七彩にこの恐怖を和らげてもらおうかと思ってー」

「怖いなんて一ミリも思ってねーだろ!?あ……ちょっと変なとこ触んな!」

近くにはたくさんの薬品が並んでいて派手には動けない状況の中、先輩はわざとらしくそう言いながらも、壁ドンをしてきた。

「っ…」

「あれ、顔赤くないー?今俺たち閉じ込められて絶体絶命の状況なんだぞー?」

「うっざぁ…もう…!そんなに…近付かないでっ」

「狭いだから仕方ねーだろ?しかもここ寒いしー。二人でくっついてた方が良くね?」

壁についていた先輩の手が俺の体に触れると、それだけでピクッと体が跳ねた。

「七彩ーこっち向いてー?」
「っ、もう、やめ……」

先輩の顔が近付いてくると、ふわっと大好きな匂いも鼻に届いて、心臓が激しく高鳴り出した。

「ほら、こっち。顔」

グイッと顎を掴むと、先輩はニヤけながら無理矢理顔を上げさせた。

「うわー真っ赤ー。可愛いー。外でくっつこうとしたら怒るもんなぁ」

「っそりゃそうでしょ!」

視線を逸らそうとしても解放してくれないので仕方なく睨み付けると、柔らかい感触が唇に触れた。

「んむぅっ、……ちょ、外でキスすんなって、何度言ったら…」

「まぁ外は外だけど今は密室じゃん。誰も見てねぇって」

「んん……っ」

その後、逃げようとしても何度も唇を重ねられ、先輩の舌が口内へ入ると、俺も少しずつスイッチが入ってきてしまい、目を閉じて背中へ手を回した。

「っ先輩…」
「んー?」
「好き……」
「俺も好きだよ」

二人しか居ない狭い空間で、暫く甘い言葉を吐きながら抱き締め合っていると、トタトタと足音が聞こえてきた。

「!」

その音にすぐに反応して体を離そうとするも、先輩は未だニヤニヤしながらキスを繰り返し、服の中へ手まで入れてきた。

「ちょっ、あ、んぅっ、だれ、かっ、来たぁ」

「どうせ桃太郎だろ。見せつけりゃいーじゃん」

「むりむりっ、ちょ、やはッ、変なとこ、触──」

散々痴態を見せてきたとは言え、こんな甘々モードの自分を見られるのは絶対に嫌だ。力いっぱい押し返そうとしても、無駄に力強い先輩に叶うはずもなく、足音は部屋の前まで来てしまった。

「おい、大丈夫か」

低い声と共にコンコンとノックされたがその声は桃瀬ではなかった。

「おー、大丈夫ー。薬受け取ったんですぐ開けまーす」
「!?」

やっと体を離してくれた先輩はぺろりと唇の端を舐めた後、あっさりと中から扉を開けた。

部屋の外に居たのは──確か、コンペの時とか桃瀬の隣に居た人。

「栗原さーん。時間かかってすみませーん。なっかなか扉が開かなくてー」

「…いやあっさり開いてんじゃねーか。桃瀬から様子見てきてって言われたけど余計だったみたいだな」

「まぁ確かにちょっと早すぎた気もするけど、満足出来たからいいぜ。んじゃ、今日はサンキュー。行くぞ、七彩」

外に居たのは栗原という男だったらしく、風見先輩はその人と軽く会話を交わした後、ご機嫌に歩き出した。

「……邪魔したな」

気まずそうに頬を染めながら俺と視線を合わせようとしない栗原の態度にぶわっと顔が赤くなり、とりあえず深々と頭を下げた後、風見先輩にパンチした。

end.
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