34 / 65
26.お菓子教室イベント4
しおりを挟む
全員のマフィンが完成して各々の調理台の近くに座る。みんなで完成したマフィンを食べる事になった。それぞれ雑談をしながら楽しんでいる。
「霧谷は両手に花か。くそ羨ましい……」
前方に霧谷の両隣には隣のクラスの可愛い女子がいて女子達にちやほやされている。本当に羨まし過ぎて恨めしそうに霧谷を見つめる。
「いっちーだって両手に花岡と春風だろ? すげー華があるよなー」
「嘘つけっ。女子か野郎に囲まれんのとは全然気持ちがちげーんだよ」
華があるかどうかはわからないが、一之瀬の両隣には春風と花岡がいる。一之瀬が女だったらイケメンに囲まれ華があって優越感に浸れる。しかし残念ながら一之瀬は男だ。同性だと、ちっとも楽しくはない。
「俺らよりあっちの女の子の方が良かったのか!? 俺は一之瀬の隣で嬉しいのにな……」
「こんなにも慕ってるのに一之瀬は何て酷い男なんだろう」
「お前らは何を言ってんだよ……」
こちらを向いた花岡がしょんぼりと視線を落とす。一方、悲しそうな表情の春風は演技っぽくて棒読みな台詞で言った。それを見た女子達は「可哀想ぉー」と二人に同情している。一之瀬を悪者にしたいようだ。
同時に花岡も春風も何故か一之瀬の太腿に触り出した。周りからこの角度では見えないが、ここで何をしようとしてるんだ。
「いっちーはモテて羨ましいなー」
と霧谷がその後に主に野郎に、とぼそっとニヤついて言った。この状況を面白がっていてその憎たらしい態度にそんなんじゃねぇと言わずに睨み付ける。
(全くこいつらは……)
また霧谷が女子達に霧谷くーんとちやほやされている。一々苛つくのも面倒になり見るをやめた。不意に春風が自分のマフィンを一之瀬の目の前に出した。
「一之瀬、僕のを食べてくれないかな? 今回は失敗しちゃったけど、初めてのお菓子の手作りだから一之瀬に最初に食べて欲しい」
でも無理に食べなくていいからね、と春風は続けて優しく話した。そう言われると、美味いとか不味とか別として友人として食べないといけない空気だ。
「じゃあ、俺のと一個交換するか? ただ貰うってのもわりぃし」
「いいの? ありがとう。一之瀬のものは何でも嬉しいからね」
一之瀬の問いににこやかに春風は答える。一之瀬のマフィンと春風のを交換した。
「俺のも交換しねぇか? 俺も一之瀬のマフィンが欲しい」
「お前のは交換しても意味ねぇじゃねーのか? 見た目もほとんど一緒だろ」
「俺は一之瀬のだから必要なんだ! 俺も一之瀬のを食べたい」
花岡が真剣な顔付きで話す。どんだけ俺のを食べたいんだよと内心若干引き気味つつ花岡のも交換した。
周りもマフィンを食べ始めた頃に一之瀬もマフィンを頬張る。丁度いい甘さで美味しい。マフィンを一個位食べるのは余裕であっという間に無くなった。
「口に付いてるね」
春風は一之瀬の顔に近づき口元に付いているマフィンの欠片を指で取って自分の口に入れた。それ男相手にやるなよ。今、キュンと来たじゃないかと心が焦る。
「指にも付いてんな」
花岡が一之瀬の手首を持って指先を舌で舐めとった。一瞬、擽ったくて変に感じてしまった。お前も男相手に何故やるんだ。それに素直な花岡にされると勘違いしそうだ。
「あのー、俺らもいるんだけど。ここでいちゃつくのやめてくんねぇ?」
呆れ顔の霧谷に注意された。霧谷の横にいる女子達も驚いた目をして口が半開きなっている。みんながいる前で恥ずかし過ぎる。それを見ていた霧谷を含めて女子達にあらぬ誤解を招く。ここは絶対に誤魔化さないといけないと冷静に考えた。
「お、お前らさ、冗談が過ぎるだろ。ほ、ほら、少女漫画みたいな真似はやめろって。みんな、吃驚してるだろ?」
「冗談じゃ……むぐっ」
余計な事を喋らせないように手で花岡の口を塞いだ。春風の方を見たが、片手をグーにして口元に当ててふふっと笑ってやがる。お前、笑っている場合かと呆れた。
「春風くんも花岡くんも乙女がキュンとするシーンをおさえてるんだね」
「すごーい、やっぱり恋愛上級者は違うよねぇ」
女子達が手を合わせて顔を輝かせる。そんな様子に取り敢えず、変な誤解は解けたようで一之瀬はほっと胸を撫で下ろした。
「はぁー、何か甘くて胸焼けしたかも……」
霧谷はわざとらしく言った。女子達は霧谷くんは甘いものが苦手なの? とかマフィン食べ過ぎたのかな? と霧谷を心配していた。多分、そういう意味ではない気がする。
残りは……家族にあげようか。両親と弟とちょうど三個分ある。手作りのお菓子を見ていると、懐かしいあの日が思い浮かぶ。
弥太郎くん。この手作りお菓子ね、とても美味しいよ。一生懸命に作ってくれてありがとう。
目線を合わせて嬉しそうに微笑んだ年の離れた年上の幼馴染の顔を思い出す。今度、会ったら作ってやろうかと考えたが、もう叶わないかもしれない。初恋は既に手の届かない遠くに行ってしまったのだから。
「一之瀬、どうかしたか? ぼーとして」
「いや、食うと甘いが、ちょっとほろ苦いよな……」
「……焦げてるとこでも食べたのか?」
「まぁ、こっちの話だ」
花岡が心配して声をかけたが、一之瀬の話に疑問符を浮かべていた。一之瀬は苦い過去を思い出して物思いにふけそうになった。
「霧谷は両手に花か。くそ羨ましい……」
前方に霧谷の両隣には隣のクラスの可愛い女子がいて女子達にちやほやされている。本当に羨まし過ぎて恨めしそうに霧谷を見つめる。
「いっちーだって両手に花岡と春風だろ? すげー華があるよなー」
「嘘つけっ。女子か野郎に囲まれんのとは全然気持ちがちげーんだよ」
華があるかどうかはわからないが、一之瀬の両隣には春風と花岡がいる。一之瀬が女だったらイケメンに囲まれ華があって優越感に浸れる。しかし残念ながら一之瀬は男だ。同性だと、ちっとも楽しくはない。
「俺らよりあっちの女の子の方が良かったのか!? 俺は一之瀬の隣で嬉しいのにな……」
「こんなにも慕ってるのに一之瀬は何て酷い男なんだろう」
「お前らは何を言ってんだよ……」
こちらを向いた花岡がしょんぼりと視線を落とす。一方、悲しそうな表情の春風は演技っぽくて棒読みな台詞で言った。それを見た女子達は「可哀想ぉー」と二人に同情している。一之瀬を悪者にしたいようだ。
同時に花岡も春風も何故か一之瀬の太腿に触り出した。周りからこの角度では見えないが、ここで何をしようとしてるんだ。
「いっちーはモテて羨ましいなー」
と霧谷がその後に主に野郎に、とぼそっとニヤついて言った。この状況を面白がっていてその憎たらしい態度にそんなんじゃねぇと言わずに睨み付ける。
(全くこいつらは……)
また霧谷が女子達に霧谷くーんとちやほやされている。一々苛つくのも面倒になり見るをやめた。不意に春風が自分のマフィンを一之瀬の目の前に出した。
「一之瀬、僕のを食べてくれないかな? 今回は失敗しちゃったけど、初めてのお菓子の手作りだから一之瀬に最初に食べて欲しい」
でも無理に食べなくていいからね、と春風は続けて優しく話した。そう言われると、美味いとか不味とか別として友人として食べないといけない空気だ。
「じゃあ、俺のと一個交換するか? ただ貰うってのもわりぃし」
「いいの? ありがとう。一之瀬のものは何でも嬉しいからね」
一之瀬の問いににこやかに春風は答える。一之瀬のマフィンと春風のを交換した。
「俺のも交換しねぇか? 俺も一之瀬のマフィンが欲しい」
「お前のは交換しても意味ねぇじゃねーのか? 見た目もほとんど一緒だろ」
「俺は一之瀬のだから必要なんだ! 俺も一之瀬のを食べたい」
花岡が真剣な顔付きで話す。どんだけ俺のを食べたいんだよと内心若干引き気味つつ花岡のも交換した。
周りもマフィンを食べ始めた頃に一之瀬もマフィンを頬張る。丁度いい甘さで美味しい。マフィンを一個位食べるのは余裕であっという間に無くなった。
「口に付いてるね」
春風は一之瀬の顔に近づき口元に付いているマフィンの欠片を指で取って自分の口に入れた。それ男相手にやるなよ。今、キュンと来たじゃないかと心が焦る。
「指にも付いてんな」
花岡が一之瀬の手首を持って指先を舌で舐めとった。一瞬、擽ったくて変に感じてしまった。お前も男相手に何故やるんだ。それに素直な花岡にされると勘違いしそうだ。
「あのー、俺らもいるんだけど。ここでいちゃつくのやめてくんねぇ?」
呆れ顔の霧谷に注意された。霧谷の横にいる女子達も驚いた目をして口が半開きなっている。みんながいる前で恥ずかし過ぎる。それを見ていた霧谷を含めて女子達にあらぬ誤解を招く。ここは絶対に誤魔化さないといけないと冷静に考えた。
「お、お前らさ、冗談が過ぎるだろ。ほ、ほら、少女漫画みたいな真似はやめろって。みんな、吃驚してるだろ?」
「冗談じゃ……むぐっ」
余計な事を喋らせないように手で花岡の口を塞いだ。春風の方を見たが、片手をグーにして口元に当ててふふっと笑ってやがる。お前、笑っている場合かと呆れた。
「春風くんも花岡くんも乙女がキュンとするシーンをおさえてるんだね」
「すごーい、やっぱり恋愛上級者は違うよねぇ」
女子達が手を合わせて顔を輝かせる。そんな様子に取り敢えず、変な誤解は解けたようで一之瀬はほっと胸を撫で下ろした。
「はぁー、何か甘くて胸焼けしたかも……」
霧谷はわざとらしく言った。女子達は霧谷くんは甘いものが苦手なの? とかマフィン食べ過ぎたのかな? と霧谷を心配していた。多分、そういう意味ではない気がする。
残りは……家族にあげようか。両親と弟とちょうど三個分ある。手作りのお菓子を見ていると、懐かしいあの日が思い浮かぶ。
弥太郎くん。この手作りお菓子ね、とても美味しいよ。一生懸命に作ってくれてありがとう。
目線を合わせて嬉しそうに微笑んだ年の離れた年上の幼馴染の顔を思い出す。今度、会ったら作ってやろうかと考えたが、もう叶わないかもしれない。初恋は既に手の届かない遠くに行ってしまったのだから。
「一之瀬、どうかしたか? ぼーとして」
「いや、食うと甘いが、ちょっとほろ苦いよな……」
「……焦げてるとこでも食べたのか?」
「まぁ、こっちの話だ」
花岡が心配して声をかけたが、一之瀬の話に疑問符を浮かべていた。一之瀬は苦い過去を思い出して物思いにふけそうになった。
0
あなたにおすすめの小説
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
ヤリチン伯爵令息は年下わんこに囚われ首輪をつけられる
桃瀬さら
BL
「僕のモノになってください」
首輪を持った少年はレオンに首輪をつけた。
レオンは人に誇れるような人生を送ってはこなかった。だからといって、誰かに狙われるようないわれもない。
ストーカーに悩まされていたレある日、ローブを着た不審な人物に出会う。
逃げるローブの人物を追いかけていると、レオンは気絶させられ誘拐されてしまう。
マルセルと名乗った少年はレオンを閉じ込め、痛めつけるでもなくただ日々を過ごすだけ。
そんな毎日にいつしかレオンは安らぎを覚え、純粋なマルセルに毒されていく。
近づいては離れる猫のようなマルセル×囚われるレオン
【完結】勇者パーティーハーレム!…の荷物番の俺の話
バナナ男さん
BL
突然異世界に召喚された普通の平凡アラサーおじさん<山野 石郎>改め【イシ】
世界を救う勇者とそれを支えし美少女戦士達の勇者パーティーの中……俺の能力、ゼロ!あるのは訳の分からない<覗く>という能力だけ。
これは、ちょっとしたおじさんイジメを受けながらもマイペースに旅に同行する荷物番のおじさんと、世界最強の力を持った勇者様のお話。
無気力、性格破綻勇者様 ✕ 平凡荷物番のおじさんのBLです。
不憫受けが書きたくて書いてみたのですが、少々意地悪な場面がありますので、どうかそういった表現が苦手なお方はご注意ください_○/|_ 土下座!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる