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第4章 女装潜入警官、再び

34: ミス・サセジリィ 快楽、淫楽、いや何かもっとすごいもの

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 舞台に黒いラバーを着込んだ若い男がひとり、現れた。 
 その顔には見覚えがある。 
 先ほどから、舞台に現れては補助作業をしていたクラブの裏方従業員風の男だ。  
 ラバーの上から見ても腹部に脂肪がつきすぎているきらいはあるが、がっちりとした逞しい体躯をしている。 
 当然、こんな格好で出現したからには、淫らな媾合が実演されるのはまちがいない……、と門戸は期待した。
 次は何が始まるのか、と門戸はわくわくしながらペニスを勃立させていた。

 門戸の頭に描くシナリオは、若い男がいきなり前に立ちはだかってサセジリィ嬢に問答無用のフェラチオをさせる、というものだった。
 嫌も応もない、鼻先に突きつけられたペニスをおしゃぶりしなければならない……。 というものだ。
 しかし、実際には、それとは少しちがう行為が始まった。 
 サセジリィ嬢は頭を後ろに反らし、天井を仰ぎ見る格好になる。 
 そのサセジリィ嬢の顔面を、若い男が跨いだ。 

 サセジリィ嬢は、男にラバーで覆われた尻朶の間に鼻面を突っ込み、舌を這わせはじめた。 
 位置でいうと、玉袋の垂れ下がる根元から肛門穴のあたりを、舐めさせられている……。 
 舐めるのを強制されているわけではなくて、むしろ、積極的に舌を使っているのだが、門戸は『舐めさせられているのだ』と思ってしまう。
 それはたぶん、彼女の両手が革輪で繋がれているためだろう。
 革枷には鎖が付いていて、見るからに兇々しい。

 サセジリィ嬢の腰の上下動は中断している。 
 肛穴の奥深くにまで太いディルドウを埋没させたまま、男の尻穴を舐めさせられる屈辱……、門戸はゾクゾク、と身体に震えが走るのを感じた。
 
 舞台が回りはじめた。 
 観客は、あらゆる角度からサセジリィ嬢の痴態を眺めることになる。 
 男の尻は、ラバーに覆われていてもいかにも男の尻で、決して見た目はそそるものではない。 
 サセジリィ嬢は両手で手すりを握りしめ、上体を後ろに反らせて、懸命になってラバー越しの尻舐めに没頭している。
 男のペニスがラバーサックの中で勃起してくる。 
 当然、次に来るのはフェラチオ行為のはずだ。 
 若い男は体の向きを変えて、サセジリィ嬢の前に立った。 
 眼前には、ラバーで覆われたの屹立した肉棒が迫っている。 

 しかし彼女の表情は、門戸には不可解だった。 
 こんな太いのを、面前でおしゃぶりするなんて恥ずかしい……、という羞じらいの色はまったく見られない。
 逆に、この硬いのをはやくしゃぶらせて……、という風な淫欲がギラついた風情でもない。 
 かといって今にも泣き出しそうなのか……、いや、そうではない、なんとそれは沈痛な面持ちなのだ。
 何か深刻な苦悩を裡にかかえて辛そうな……、門戸にはそのように見える。
 けれども、彼女のペニスは、反り返ってそそり立ったままだ。

 ラバーサックの中の亀頭の尿道口からは透明粘汁があふれ出て裏筋に滴り、血管の浮いた肉胴を濡らしている筈だ。
 男が腰を突く。 
 サセジリィ嬢は膨れ上がったラバーの陽根を口に咥えた。 
 手指でラバーの胴幹を握りしめて口唇と舌を使うようなフェラチオではない。
 まさに口腔を強犯されていた……。 
 両手の自由を奪われているために、彼女には主導権はない。
 だが、不自由な口淫奉仕を強いられながらも、彼女は腰を上下しはじめた。
 口にラバーの肉棒を与えられて、肛内粘膜襞に摩擦快感が欲しくなる……、その淫らな欲望は、門戸にもよく理解できる。  

 舞台では、若い男が、サセジリィ嬢の後頭部を抱えて腰を使っている。 
 惨絶な口唇ファックだ。
 男のマウスレイプに、サセジリィ嬢はされるがままになっている。
 太い張形で身体に心棒を通されたように下から貫通されて、両手首は鎖の付いた革輪で結わえられているのだから抵抗のしようがない。
  もう、口唇と舌を使って硬立ペニスを愛撫するというような光景ではなくなっている。 
 サセジリィ嬢の口唇からはよだれが垂れ、優柔なあごを伝って滴り落ちてラテックスで覆われた乳房を濡らせて光らせている。
 たおやかな白い肌は、透明ラテックスの下でほんのりと桜色に染まり、今にも湯気の白い煙が立ち上りそうだ。
 やはり、門戸は、彼女の下腹部を凝視してしまう。 
 彼女の男根はギンギンにそそり立っている……。 

『……あんなことされてるのに、昂奮してるぜ。あいつは、彼女の口の中に出すつもりらしいな』 
 男の腰がヒキヒクと引き攣れるように小刻みな抜き刺しを繰り返したかと思うと、動きが止まった。
 男が腰を退く。 
 濃い白濁スペルマがラバーサックの先端の穴から滴り落ちて、サセジリィ嬢の口唇の端からこぼれ落ちる。 
 よだれと同じ経路をたどって、あごから滴って乳房をトロリと汚す。 
 男は唾液と精液にまみれた亀頭を彼女の頬に押しつけて摺り上げる。
 まるで、彼女の頬の皮膚をタオル代わりにして拭いているみたいだ。 

 門戸には、未だに彼女の性の正体が判らない。
 少なくともやっている事はマゾに見えるのだが、どう見てもその表情はマゾではない。
 性の苦行僧のような感じだ。 
 けれども、サセジリィと呼ばれる彼女の体内には、魔淫の蟲が棲みついているのはわかる。 

 舞台から男が去った、しかしサセジリィ嬢が主役のショーはまだ終わりではない。 
 男が射精してから離れて行き、一人残された彼女は、しばらくの間、うつろな表情で宙空に目線を泳がせていた。 
 通常の若い男の精液の放出量を考えると、彼女はその大半を嚥下したようだ。
 口唇の端からこぼれて乳房に垂れた白粘汁はたいした量ではない。
  ……それにしても、と、門戸は彼女を見つめながら思った。 

 口元に付着したザーメンを手で拭うことさえできない。
 きれいに塗られていたルージュはぼやけて拡散してしまい、口唇のまわりを薄桃色に染めてしまっている。 
 サセジリィ嬢が再び動きはじめた。 
 腰を上下させて、切なそうに顔をしかめる。 
 両手で手すりを握りしめて、肛穴のより奥深くまでディルドウを侵犯させようとしている。
 彼女は爪をそんなに長く伸ばしていない。
 淡いピンクにマニキュアされたかわいい爪だ。
 『あのコのペニスは、今にも暴発してしまいそうだ。しかしケツの穴を舐めて、尺八するだけで相手は何もしてないんだぞ』 

 奇妙な演出だった。
 たとえば、舞台に上がった男が少し身体を屈めて手を伸ばせば、彼女の乳房を揉みしだいてやる事もできたはずだ。
 勃起したペニスを手指で擦りあげて、彼女を悦ばせてやる事もできたはずだ。 
 けれど、舞台に上がった男は、一切そういうことはせずに、牡の欲望を彼女の口の中にぶちまけて去っていった。
 『生殺しだな、自分で手コキしたくてもできない。でもマゾとかじゃない。・・・自分を罰してるんだ。面白い女だ。』 
 しかし門戸は、ペニスに直接に刺激を与えられなくとも射精ができる事を知っている。 
 その際は、強烈な絶頂感を伴った爆発ではないけれど、ツーン、と響いて、トロッ、と精液が漏れてしまうのだ。
 アナル快感だけで射精には到達できる……、ただし、アナルへの極烈な快感でなければならないが……。 


 舞台に二人目の男が現れた。 
 さっきの男ほどがっしりした体格ではない。
 さっさと同じように全身ラバーで登場し、すでにペニスはサックをぱんぱんにして勃立して、自らの手でしごきあげている。 
 彼の陽根はラバー越しでも黒々として獰猛に見える。
 特別に太いようには見えないが、形が良く見るからに硬くて持久力がありそうだ。 

 その思いはサセジリィ嬢も同様らしく、精悍な長棹をもの欲しげに見つめている。 
 濃いメイクでも判る理系女子風の顔立ちに、猥欲の風情が宿ると妖しくも淫媚だ。 
 ……だが、やはり、彼女の願いは叶えられない。 
 男は彼女の顔面を跨ぎ、彼女は尻舐め奉仕するしかない。  
 サセジリィ嬢はラバーの上からの玉舐めに移っている。
 飢えたようにラバーで包まれた玉袋をねぶりまわしている。
 彼女の亀頭尿道口からは、まるでよだれを垂らしているようにカウパー腺液があふれスポットライトに反射して光っている。

 男が体の位置を変えて彼女の前に立ちはだかり、フェラチオさせはじめた。 
 男は腕を組んでふんぞりかえるようにして立っている。
 両方の手首を革輪で拘禁されているサセジリィ嬢は、首と顔の動きだけで口淫作業をしている。 
 だが、上目使いに媚びた眼差しを男に向けてみたり、頬張ったペニスを口から出して淫語を口走ってみたり、などという事はまったくしない。
 舌をねっとりと絡みつかせて舐め上げたり、口唇を搾りながら、顔の往復運動を加えてペニス棒を口唇粘膜で摩擦したりと、卑猥というより、鬼気迫るようなフェラチオなのだ。 
 まるで虜われの女囚人が男の看守に性虐待を受けているようにも見える。
 抵抗は許されずに、男の要求に応じてセックス奴隷として弄ばれる身分……。 
 なのに何故か、性虐待を受けているのは男のように見える。

 男はラバー越しに陰茎を握りしめて、自らの手で擦り上げている。 
 サセジリィ嬢は口を開き、舌を伸ばして舌先で雁裏をラバーの上からチロチロと舐め摺りながら待ち受けている。 
 そして、ついに、男の淫らな太い棒の先端が爆裂した。 
 ドバッ、と発射された白粘のオス汁は、ラバーサックの先端からほとばしり、サセジリィ嬢の口中にあふれ、わずかな間を置いた第2射から、男は己の肉砲の角度を変えた。
  ドピュッ、ドピュッ、と亀頭から噴射された汚濁精液はサセジリィ嬢の顔に飛散する。
 目を閉じて、びくっ、と美貌をふるわせたものの、彼女は顔面ブッカケを真正面から受けとめた。 

 男は舞台から退場し、顔じゅう精液まみれのサセジリィ嬢に観客の視線が集まる。 
 小鼻の横から口唇に向かって、ぬるっ、と白い粘汁がひと筋流れ、顎を伝ってラバーの胸元に流れ落ちてゆく。
 彼女は、ふたりの男のザーメンの濃厚な匂いにむせているにちがいない。 
 門戸が彼女の下腹部に目をやると、ペニスはそそり立ったままだ。 
 ……たぶんこの女は、いや男は一段と強烈な興奮に酔っているはずだ。
 それは快楽……、……淫楽、いや何か、もっとすごいものだ……。


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