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めでたし、めでたし?な俺
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翌朝、目を覚まして初めて自分が眠っていたのだと知る。見慣れない天井に昨夜の出来事が蘇り、あわてて布団をめくると自分の体は綺麗に始末され、高級そうなガウンに包まれていた。
横目で隣を確認すると、くぼんだ枕が残されているだけだ。
「くぅ……っ」
となりに加賀美がいなくて良かった。
全力でスーパー賢者タイムに悶えられる。昨日の快感が大きかっただけに反動がキツい。
タヌキ顔を甘やかす予定が、氷の美貌を持つ上司にヤラれて……。
自らの痴態を断片的に思い出し頭を抱えると、関節が軋んだ。結局、昨日は何回やったのか。横のゴミ箱を見れば答え合わせができるが、確認するのはやめた。
慎重に体を起こすと歩けないことはない。
壁づたいにベッドルームを出ると、加賀美はキッチンでコーヒーを淹れているところだった。その横顔は冷たい表情を浮かべている。加賀美がアルコールに弱いことを思い出し、ワンチャン忘れていることを期待した。
振り返った加賀美は壁に縋り付く俺を見るとニヤリと笑った。
だめだ、全部覚えてる。
俺は気まずさを感じているのに、加賀美はくつろいだ表情だ。
「コンプライアンス部のやつ紹介しようか?」
セクハラとパワハラの合わせ技でクビもありえるのに余裕の態度が腹立たしい。通報するつもりはないとバレているのが悔しいので憎まれ口を叩く。
「……あんたの取り巻きじゃ、どうせ揉み消されるんだろ。卑怯者」
「俺からは頼まないけど、勝手に便宜を図られる可能性はある」
「クソ」
悪態をついても加賀美は気分を害した様子もなく、愉快そうな笑みを深める。そんな顔は会社で一度も見たことがなかったから、くすぐったい。
「やっぱりお前は面白い。入ってきたときから毛色が違うとは思ったが、想像以上に伸び代があるな。まだまだ成長できるぞ」
「エビデンスは?」
言ってみたかっただけだ。全く知りたくないのに、加賀美は自分の首筋をトントンと叩いてから俺の方を指した。いいから見てこいと促され、鏡のある洗面所へ行って絶叫した。
「はぁ?!」
点々と散る赤い痕の数は尋常じゃないが、ひとつもつけられた記憶はない。
「お前が自分でもっとって言ったんだ。エビデンスは、ほら」
後ろに回った加賀美は、鏡越しに目を合わせながら首筋を強く吸った。
「んッ」
勝手に漏れる甘い声に愕然とする。こんなところで、強い快感を覚えたことはない。かわい子ちゃんを悶えさせたことはあっても!
「お前のことは俺が育ててやるよ」
「いーです! お断りです!」
「出世したいだろ?」
「セクハラとパワハラのコンボかよ?!」
「何言ってんだ。来月に技術研修の予定入れといたから、予習しとけよ」
「そっちか!」
このタイミングで業務連絡を入れてこないで欲しい。というか上司と部下の間で体の関係があるってまずい気がする。これからのことを考えたら急に面倒くさくなり、月曜日の出社が憂鬱になる。もういっそ辞めるか。
「お前は打てば響く、素直なやつだな。育てがいがある。がんばれ」
「う、わぁ……ここで、それかよ」
この不意打ちは効いた。
冷血上司はタイプでもなんでもないはずなのに、なんだこれ。
「お前が想像した方、やってやろうか。週末だしな。時間はたっぷりある」
「いや、いい。もう帰——んっ!」
逃げようとしたが、再び首筋を強く吸われた。背筋に沿って全身に甘い痺れが広がっていく。肌触りの良いガウンの布地は薄く、反応を始めた股間を隠してくれない。不本意な願望を加賀美に伝えてしまう。
「ここ? ベッド?」
耳元でささやく笑いを含んだ声が俺の理性にとどめをさした。
「……ベッド」
「了解。まずはここで」
「は?!」
「……がんばれ♡」
完全に俺の弱点バレてるな?!
横目で隣を確認すると、くぼんだ枕が残されているだけだ。
「くぅ……っ」
となりに加賀美がいなくて良かった。
全力でスーパー賢者タイムに悶えられる。昨日の快感が大きかっただけに反動がキツい。
タヌキ顔を甘やかす予定が、氷の美貌を持つ上司にヤラれて……。
自らの痴態を断片的に思い出し頭を抱えると、関節が軋んだ。結局、昨日は何回やったのか。横のゴミ箱を見れば答え合わせができるが、確認するのはやめた。
慎重に体を起こすと歩けないことはない。
壁づたいにベッドルームを出ると、加賀美はキッチンでコーヒーを淹れているところだった。その横顔は冷たい表情を浮かべている。加賀美がアルコールに弱いことを思い出し、ワンチャン忘れていることを期待した。
振り返った加賀美は壁に縋り付く俺を見るとニヤリと笑った。
だめだ、全部覚えてる。
俺は気まずさを感じているのに、加賀美はくつろいだ表情だ。
「コンプライアンス部のやつ紹介しようか?」
セクハラとパワハラの合わせ技でクビもありえるのに余裕の態度が腹立たしい。通報するつもりはないとバレているのが悔しいので憎まれ口を叩く。
「……あんたの取り巻きじゃ、どうせ揉み消されるんだろ。卑怯者」
「俺からは頼まないけど、勝手に便宜を図られる可能性はある」
「クソ」
悪態をついても加賀美は気分を害した様子もなく、愉快そうな笑みを深める。そんな顔は会社で一度も見たことがなかったから、くすぐったい。
「やっぱりお前は面白い。入ってきたときから毛色が違うとは思ったが、想像以上に伸び代があるな。まだまだ成長できるぞ」
「エビデンスは?」
言ってみたかっただけだ。全く知りたくないのに、加賀美は自分の首筋をトントンと叩いてから俺の方を指した。いいから見てこいと促され、鏡のある洗面所へ行って絶叫した。
「はぁ?!」
点々と散る赤い痕の数は尋常じゃないが、ひとつもつけられた記憶はない。
「お前が自分でもっとって言ったんだ。エビデンスは、ほら」
後ろに回った加賀美は、鏡越しに目を合わせながら首筋を強く吸った。
「んッ」
勝手に漏れる甘い声に愕然とする。こんなところで、強い快感を覚えたことはない。かわい子ちゃんを悶えさせたことはあっても!
「お前のことは俺が育ててやるよ」
「いーです! お断りです!」
「出世したいだろ?」
「セクハラとパワハラのコンボかよ?!」
「何言ってんだ。来月に技術研修の予定入れといたから、予習しとけよ」
「そっちか!」
このタイミングで業務連絡を入れてこないで欲しい。というか上司と部下の間で体の関係があるってまずい気がする。これからのことを考えたら急に面倒くさくなり、月曜日の出社が憂鬱になる。もういっそ辞めるか。
「お前は打てば響く、素直なやつだな。育てがいがある。がんばれ」
「う、わぁ……ここで、それかよ」
この不意打ちは効いた。
冷血上司はタイプでもなんでもないはずなのに、なんだこれ。
「お前が想像した方、やってやろうか。週末だしな。時間はたっぷりある」
「いや、いい。もう帰——んっ!」
逃げようとしたが、再び首筋を強く吸われた。背筋に沿って全身に甘い痺れが広がっていく。肌触りの良いガウンの布地は薄く、反応を始めた股間を隠してくれない。不本意な願望を加賀美に伝えてしまう。
「ここ? ベッド?」
耳元でささやく笑いを含んだ声が俺の理性にとどめをさした。
「……ベッド」
「了解。まずはここで」
「は?!」
「……がんばれ♡」
完全に俺の弱点バレてるな?!
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