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20:二人きりの夜の庭で
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自転車に飛び乗り、急いで漣里くんの家に向かうと、漣里くんはまだ外にいた。
庭の木の前にしゃがんで、ある一点を見ている。
彼の視線の先には墓石に見立てたらしい丸い石が置いてあった。
言われなくともわかる。
あれがもちまるのお墓なのだろう。
「漣里くん」
声をかけると、漣里くんはゆっくりとした動きで私を振り返った。
彼の表情はない。
なんでここに、とも言わない。
彼の頭上に広がる空は曇っていて、星一つ見えない。
漣里くんの気持ちをそのまま表しているかのようだった。
「……もちまる、亡くなっちゃったんだってね」
「ああ」
棒読みのような口調が、とても悲しい。
「……私もお墓参りさせてもらってもいい?」
「どうぞ」
漣里くんは横に移動して、私に場所を譲ってくれた。
二人肩を並べて、もちまるのお墓の前で屈む。
漣里くんの肩が私の肩に触れる、そんな距離。
もちまるのお墓を見て、再び漣里くんの横顔を見る。
悲しみに暮れて、沈みきった、無表情。
「……もちまる」
私は再びもちまるのお墓に向き直り、両手を合わせて目を閉じた。
「漣里くんと離れるのはとても悲しいと思います。寂しいと思います。でも、安心してください。私がもちまるの分まで漣里くんを幸せにします……とは言い切れませんが、努力します」
「……ちょっと待て。なんだそれ」
隣から突っ込まれて、そちらを向く。
漣里くんは呆れたような、怪訝そうな、複雑な顔をしている。
「だって、私がもちまるだったら、自分がいなくなって落ち込んでる漣里くんを心配すると思うの。漣里くんが好きだった分だけ、もちまるも漣里くんのことを好きだったと思う」
「……そんなこと、わかるわけない」
「わかるよ」
目を逸らしてしまった漣里くんに、私は訴えた。
「漣里くんはもちまるの写真や動画を送ってくれたでしょう? 楽しそうにもちまるとの思い出を話してくれたでしょう? 私は知ってるよ。漣里くんがもちまるのことが大好きだったこと。大切にしてたこと。もちまるだってきっと、漣里くんのことが大好きだったよ」
「…………」
漣里くんは何も言わない。
落ち込んだ顔のまま、視線をもちまるのお墓に向けている。
悲しみに閉ざされた心を開くには、もう一押しが必要なようだ。
「ちょっと失礼」
私はそう前置きして、漣里くんの右手を取った。
驚いたように漣里くんが私を見る。
「漣里くん。突然だけど、手のひらのことを『たなごころ』っていうのは知ってる? たなごころは『手の心』っていう意味があるの」
「……は?」
漣里くんは、わけがわからない、という顔をした。
庭の木の前にしゃがんで、ある一点を見ている。
彼の視線の先には墓石に見立てたらしい丸い石が置いてあった。
言われなくともわかる。
あれがもちまるのお墓なのだろう。
「漣里くん」
声をかけると、漣里くんはゆっくりとした動きで私を振り返った。
彼の表情はない。
なんでここに、とも言わない。
彼の頭上に広がる空は曇っていて、星一つ見えない。
漣里くんの気持ちをそのまま表しているかのようだった。
「……もちまる、亡くなっちゃったんだってね」
「ああ」
棒読みのような口調が、とても悲しい。
「……私もお墓参りさせてもらってもいい?」
「どうぞ」
漣里くんは横に移動して、私に場所を譲ってくれた。
二人肩を並べて、もちまるのお墓の前で屈む。
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「……もちまる」
私は再びもちまるのお墓に向き直り、両手を合わせて目を閉じた。
「漣里くんと離れるのはとても悲しいと思います。寂しいと思います。でも、安心してください。私がもちまるの分まで漣里くんを幸せにします……とは言い切れませんが、努力します」
「……ちょっと待て。なんだそれ」
隣から突っ込まれて、そちらを向く。
漣里くんは呆れたような、怪訝そうな、複雑な顔をしている。
「だって、私がもちまるだったら、自分がいなくなって落ち込んでる漣里くんを心配すると思うの。漣里くんが好きだった分だけ、もちまるも漣里くんのことを好きだったと思う」
「……そんなこと、わかるわけない」
「わかるよ」
目を逸らしてしまった漣里くんに、私は訴えた。
「漣里くんはもちまるの写真や動画を送ってくれたでしょう? 楽しそうにもちまるとの思い出を話してくれたでしょう? 私は知ってるよ。漣里くんがもちまるのことが大好きだったこと。大切にしてたこと。もちまるだってきっと、漣里くんのことが大好きだったよ」
「…………」
漣里くんは何も言わない。
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悲しみに閉ざされた心を開くには、もう一押しが必要なようだ。
「ちょっと失礼」
私はそう前置きして、漣里くんの右手を取った。
驚いたように漣里くんが私を見る。
「漣里くん。突然だけど、手のひらのことを『たなごころ』っていうのは知ってる? たなごころは『手の心』っていう意味があるの」
「……は?」
漣里くんは、わけがわからない、という顔をした。
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