俺、魔王なんだけど、実は指からお湯しか出せないんだよね。

魔界の朝は早い。
 カラスの群れが俺の安眠を阻害する。
 重い体を引きずりながら自室のカーテンを開く、遠くに所狭しとぼろ臭い家と畑が建ち並びんでいる。
 魔界の昔からの光景ではあるが、どうも今日はあまり見ていて良い気分がしない、どこを見ても、変わり映えのない景色しか見えないのは何だか味気ない、と、言っても、俺も、前まではあのぼろ臭い家の一つに住んでいたわけだが。
 魔界の周りを囲むように崖があり、その崖の先はここからでは霧が濃く、確認出来ない、俺の知っている限りでは崖の先を見に行くといって旅だった者で帰ってきた奴は一人もいない。
 そんな面白みのない魔界の中で一際目立つ俺の屋敷、家の表札には大きく「魔王」と書かれている。
 俺は、その屋敷と表札を尻目に、屋敷近くに置かれている台座への一本道を歩いている。
 普通の日の魔王の仕事なんて、朝起きたら、着替えて夜が更けるまであの台座に座っているだけなので、本当につまらない。
 俺が魔王になってから、もう何年たったろうな。
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