篠辺のお狐様

梁瀬

文字の大きさ
17 / 180

双子の七五三 7 言い訳

しおりを挟む
「お子様の事が心配だった…そうでしょうか?私が連絡を入れるまで気付かなかったんですよね?昨夜は、久しぶりにご両親と一緒に夕食を食べたと、この子達から聞きました。一緒にいたのに気付かなかったなんて変ですね。」
「一緒にいたって分からない事もあるでしょう。」
「夜中に出歩くなんて思ってもなかったんです。」
双子の両親が当然とばかりに顔を見合わせ頷くと
「そうでしょうか?昨夜は、この子達がお願いして、いつもより少し早めに夕食とお風呂を済ませたと聞きました。その時、訳を聞かなかったのですか?更に、久しぶりに一緒に食事したのに何も話さなかったんですか?折角、両親が揃っているのに、いつもより早く寝ると言い出した時、不思議に思いませんでしたか?それに、服装を見てください。この子達の足で歩いて約30分位でしょうか。日の出前の冬に出歩く事を考えて、かなり厚着をしています。この子達の事ですから、きっと夜のうちに準備してあったはずです。気付きませんでしたか?貴方達がこの子達に目を向けていれば気付いたはずです。さっきお子様の事が心配と言われましたが、私が連絡をした際、この子達の様子は聞かれませんでしたよ。」
「いいえ。篠辺神社の神主をしている真淵左京って名乗る人が、お子様達はこちらでお預かりしています。って、そう言ったのよ!」
母親は額に青筋を立てて言い放った。

「ええ。お預かりしているとは言いましたが、それ以上の事は聞かれませんでしたから、この子達の様子は一言も伝えていません。」
落ち着いた声で左京が話すと
「お前っそれでも母親か!」
父親は声を荒げた。
「そんなっ…パニックになっていたから。貴方だって一緒でしょ!」
夫婦は再び言い争い、罵り合った。

「子供の事にパニックですか…言葉では何とでも言えますよね。」
左京が大声で夫婦の口喧嘩に割って入った。
「まだ何か!」
夫婦は初めて声を揃えた。

「ご自宅から神社まで、子供の足で約30分。貴方達に連絡を入れてから、お二人が車で到着されるまで約50分。随分と時間が掛かっているように思うのですが…。」
「私達は、あの電話で起こされたんです。準備していた訳ではありませんから、当然時間が掛かります。最低限の事だけにしたって、ある程度は掛かります。」
「分かります。それにしても、お父様はスタイリッシュですね。仕事の出来る男性って感じがします。電話で起こされて、髭を剃り、整髪料で髪を整え、ブランド物の時計に靴、ジャケットにスカーフなんて、準備していても時間が掛かりますよね!」
左京は微笑んで父親を見ていたが、父親には返す言葉がなかった。
 
 そんな父親の様子を鼻で笑った母親に、夕霧が
「同性として言わせて貰うなら、電話で起こされて軽いメイクまでは分かります。でもイヤリングとブレスレットは華美な感じがします。更に足元はハイヒールですから走る事は難しいですし、此処までの石段は歩き難かったのではありませんか?」
「身嗜みですよ!」
母親は食い下がった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...