篠辺のお狐様

梁瀬

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式神 6 猿豆

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 それは左京が〝猿豆〟と会うた時じゃ。
「オレは、真淵左京まぶちさきょう。今、オレの式神になってくれるヤツっていうか植物?を探してる。でも正直言って、擬人化っていうのが出来そうにないんだよ。だから猿豆からイメージした〝猿〟の姿で、まずオレの話しを聞いてくれないか?」
そう言い出したかと思うと、
「話しをしたいだけだから。オレの事知って貰いたいんだ。自分の事なんて、ほとんど話した事ねぇから、上手く話せるか自信ないんだけど、取り敢えず、その姿で出て来てくれると助かる。」

 狐は、左京が何を考えておるのか全く分からなかったが、夕霧の時も式神への儀式とは思えぬ、口説き文句じゃった故、どうせ左京も型破りな事をするじゃろう…とは思うておった。

 暫くして、少し離れた所に〝小猿〟が姿を現した。
「ありがとうな。オレさ猿豆から〝小さい猿〟しかイメージ出来なくて…ごめん。勇気出して姿現してくれて、本当にありがとう。一つ約束する。オレの式神になっても良いって思ってくれるまで、何回でも会いに来るし、嫌なら命令したりしない。だから話し聞いてくれないか?」
 食い入るように左京を見ていたが、土の上にドカッと胡坐あぐらをかいて座っている左京の姿や言葉に、嘘がないと思ったのか、ちょっと左京に近づいて座った。
 
 左京は聞いてくれるつもりだと分かり、自分の家族構成から子供の頃の話しをした。その間、黙って聞いていた。
「今日はここまで。おぉ3時間も聞いてくれてたんだ!ありがとうな。また明日来たら、続きを聞いてくれるか?」
小猿は小さく頷いて、パッと姿を消した。

【戯れ言に、狐を付き合わせる気か?】
狐は、九つの尾を揺らしながら左京を見据えた。
「無理矢理、命令して従わせたくないです。それでは本当の仲間にも家族にもなれませんし、信頼関係なんて築けない。そんなのは嫌なんです。オレには黙って従わせる力も、説き伏せるだけの知識もない。そんな実力もない奴に命令されたってだけで、ずっと従い続けるなんて納得出来ないはずです。オレなら絶対に嫌です。だから俺を知って貰って、未熟物の若造だって分かった上で、オレの式神になって欲しいんです。だから今は時間が欲しいんです。お狐様に毎回、時間を割いて貰うような事は致しません。納得した上で意思の確認が出来た時に、式神の儀式に立ち会って貰えませんか?」
 左京の瞳も、あの時の夕霧同様、真っ直ぐで迷いがなかった。
【好きにすれば良い。が、期日は夏までじゃぞ。】
狐の言葉に、左京は頭を下げた。

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