篠辺のお狐様

梁瀬

文字の大きさ
99 / 180

席次

しおりを挟む
「最初に酒は多めに用意して運んであるけど、足りなかったとき用に、くりやの棚脇に
置いてあるから、よろしく。」
 左京は、誰でも補充出来るように確認した。
「分かりました。」
 柚子と鴉山椒は、場所を一瞥して返事をした。

「前菜、簡単な和え物、お浸し…は、拝殿に運びましたよね。後は煮物と煮付け、
肉料理でしたよね…。」
 夕霧が、下拵えしている物や煮込み中の物などを確認していた。
「大丈夫ですよ。お時間なら余裕があります。」
柚子は夕霧の様子から、お狐様のお戻りの事を案じていると察して声を掛けた。

「全部の料理が並ばなくても、後からお出しすれば問題ないだろう。先に出来ているものを運び、倉稲様がお出ましになられたところで始めて頂こう。厨へ行き来したところで、そもそも急な宴席なのだから不自然ではなかろう。返って全員が席に揃っているほうが不自然だ。」
左京の言葉に皆が同意したところで、
「先程、左京さんと大まかに決めた席次で、よろしいでしょうか?」
そういってザックリとした走り書きを見せて貰った。

「拝殿の祭壇前の中央に、倉稲様。東側に大神様。西側にお狐様。両主祭神は中央に
向かい合う形でお座り頂く。東西に分かれて神主、巫女と並び、それぞれの式神が
並ぶように致しましたが、篠辺は多いので出自順という事で如何でしょう?
ただ女と言うだけで、杏と私が夕霧さんの並びというのは…ちょっと…。」
 鴉山椒は、良い淀んだ。

「言いたい事は何となく分かります。木通対策ですよね。お二人が前列なら確実に、木通のターゲットになって、折角の再会の宴を、邪魔してしまうかも知れませんね。夕霧さんの並びは私と鬼縛りに致しましょう。如何でしょうか?」
 柚子は嬉しそうに提案した。
「良いの?左京さんの後ろは、猿豆さんがついてるのよ…。私の後ろは柚子でしょ?私の並びは、犬枇杷さんと鬼縛りに頼んでも一緒でしょ?」
 夕霧は、柚子を見ながら言った。
「そうでしょうが、東雲は少ないので横並びです。先ほども言ったように、木通対策ですから、ひと席は私が。後ひと席は、犬枇杷さんか鬼縛りでしょう。…ですが、犬枇杷さんには酷だと思いますが…。」
「柚子さんの仰る通りかも知れませんね。鬼縛りさんには、私からもお願いしてみます。でも柚子さんは良いのですか?」
 鴉山椒は、いつも式神として後ろに控える事が多い柚子さんが、席を代わってくれた事を気にしていた。

「対策ねぇ。夕霧さんが良ければ、オレは良いですよ。」
 珍しく左京さんが、奥歯に物が挟まったような言い方をした。
「何か気になる事がありますか?」
夕霧は心配そうに聞いた。
「細かい事ですが、夕霧さんの並びに猿豆、柚子さん。後列に杏と鴉山椒、犬枇杷と鬼縛りさんという順でも、良いんですけどね。」
 左京は、何故か夕霧にではなく、柚子に向かって話していた。
「そうですね。…出過ぎた事を言いました。申し訳ありません。」
柚子は肩を落とした様子で、左京に謝った。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

処理中です...