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初めての合同実戦練習 銀木犀
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鬼縛りがテントに戻って、直ぐに銀木犀が飛び出してきた。
全速力で駆け抜けるつもりか!と、言いたくなる走りっぷりで、裏山に突入して
行った銀木犀は、柚子の放った苦無6本に止められた。
銀木犀としては、外巡回のルートは覚えたが、1時間以内で戻って来れた事が
なかったので、出来るだけ時間を短縮する為のスタートダッシュだったのだろう。
だが、何か一つの事に囚われたり、他が見えなくなっての行動は、独りでも誰かと
一緒でも、冷静な判断も状況確認も出来ないので、危険な行為でやってはならない。
初めてだから仕方がないとも言えるが、無鉄砲過ぎてフォローは出来ない。
何より柚子は、こういう行動をとるヤツが、最も嫌いだ。
皆を道連れにし兼ねないヤツは、最初の練習時に、記憶から二度と消えないほどの
苦痛を体に覚えさせ、繰り返させない事が大事だと、柚子は考えている。
だから初心者の銀木犀に、最初の攻撃から苦無を6本放ち、5本も手足に命中させ
動きを止めたのだろう。
しかし実戦と付いても、最初からここまでの攻撃や負傷する事も、想定していな
かったのだろう。
銀木犀は、驚きと苦痛に顔を歪めたまま、立ち尽くした。
柚子は、絶好のチャンスと間髪入れずに、苦無を3本放ち、再び命中させた。
今度は、肩、脇腹、尻に刺さり、銀木犀は膝をついた。
はぁ…こういう時、あいつの攻撃は徹底してるからなぁ。
銀木犀の心が折れなきゃ良いけど…アレは痛てぇぞ。
第一、アレだけ刺さってりゃ、間違いなく制限時間までには戻れないだろう。
柚子…お前に手を抜けとは言わないが、新人を潰すのだけはやめてくれ…。
全身の痛みに、奥歯を噛みしめながら、周囲を確認し、自身の体に刺さった苦無を
抜きながら、銀木犀は走り出した。
その後ろ姿にも、柚子は攻撃の手を緩めない。
残り3本の苦無も放たれ、1本が背中に刺さりながらも走り去った。
柚子の攻撃が終わり、木立の陰で、背中に刺さった苦無を抜き捨てた銀木犀は、
裏山のルートを思い出しているようだった。
そして、何処から攻撃されるか分からないので、冷静に慎重に周囲を確認しながら
先に進むようになった。
どんなに周囲の確認をしても、気配が分かる訳もなく、傷む体を庇いながら進む
うちに、いつの間にか杏のテリトリーに入り、幻影を見せられ、迷わされて、同じ
場所をぐるぐると回らされている事に、気付いていないようだ。
そこへ杏が、後ろから忍び寄り、短刀で背中を切りつけた。
銀木犀が怪我を負ったので、杏の短刀での攻撃は一撃のみになるが、既に満身創痍の
状態で、時間内かどうかでなく、テントに戻れるか分からないほどだった。
初心者の銀木犀には、予想以上の厳しさだろう。
全速力で駆け抜けるつもりか!と、言いたくなる走りっぷりで、裏山に突入して
行った銀木犀は、柚子の放った苦無6本に止められた。
銀木犀としては、外巡回のルートは覚えたが、1時間以内で戻って来れた事が
なかったので、出来るだけ時間を短縮する為のスタートダッシュだったのだろう。
だが、何か一つの事に囚われたり、他が見えなくなっての行動は、独りでも誰かと
一緒でも、冷静な判断も状況確認も出来ないので、危険な行為でやってはならない。
初めてだから仕方がないとも言えるが、無鉄砲過ぎてフォローは出来ない。
何より柚子は、こういう行動をとるヤツが、最も嫌いだ。
皆を道連れにし兼ねないヤツは、最初の練習時に、記憶から二度と消えないほどの
苦痛を体に覚えさせ、繰り返させない事が大事だと、柚子は考えている。
だから初心者の銀木犀に、最初の攻撃から苦無を6本放ち、5本も手足に命中させ
動きを止めたのだろう。
しかし実戦と付いても、最初からここまでの攻撃や負傷する事も、想定していな
かったのだろう。
銀木犀は、驚きと苦痛に顔を歪めたまま、立ち尽くした。
柚子は、絶好のチャンスと間髪入れずに、苦無を3本放ち、再び命中させた。
今度は、肩、脇腹、尻に刺さり、銀木犀は膝をついた。
はぁ…こういう時、あいつの攻撃は徹底してるからなぁ。
銀木犀の心が折れなきゃ良いけど…アレは痛てぇぞ。
第一、アレだけ刺さってりゃ、間違いなく制限時間までには戻れないだろう。
柚子…お前に手を抜けとは言わないが、新人を潰すのだけはやめてくれ…。
全身の痛みに、奥歯を噛みしめながら、周囲を確認し、自身の体に刺さった苦無を
抜きながら、銀木犀は走り出した。
その後ろ姿にも、柚子は攻撃の手を緩めない。
残り3本の苦無も放たれ、1本が背中に刺さりながらも走り去った。
柚子の攻撃が終わり、木立の陰で、背中に刺さった苦無を抜き捨てた銀木犀は、
裏山のルートを思い出しているようだった。
そして、何処から攻撃されるか分からないので、冷静に慎重に周囲を確認しながら
先に進むようになった。
どんなに周囲の確認をしても、気配が分かる訳もなく、傷む体を庇いながら進む
うちに、いつの間にか杏のテリトリーに入り、幻影を見せられ、迷わされて、同じ
場所をぐるぐると回らされている事に、気付いていないようだ。
そこへ杏が、後ろから忍び寄り、短刀で背中を切りつけた。
銀木犀が怪我を負ったので、杏の短刀での攻撃は一撃のみになるが、既に満身創痍の
状態で、時間内かどうかでなく、テントに戻れるか分からないほどだった。
初心者の銀木犀には、予想以上の厳しさだろう。
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