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第一章 【日常から非日常へ】
第15話 急患
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もし急患だったのなら、早く向かわなければ手遅れになる可能性がある。
ダートさんを置いて先に行くのには、気が引けるけれど今は、治癒術師として患者の事を優先するべきだ。
「ごめんなさいダートさん、急患の患者が来たかもしれないので先に行きます」
「おぅ、俺の事はいいから、さっさと行ってこい」
返事を聞く前に走り出すと、急いで患者の元に向かう。
診療所のドアを叩いている二人組の姿を見るかぎり……開拓の為に森に出ている人だろうか。
そうだとしたら、護衛がいる筈なのにどうして彼らだけでここに……?
「先生っ!出て来てくれ!」
「せんせぇ!」
「どうかしましたか?急患ですか?」
急いで駆け寄って彼らに声を掛けると、一人が血相を変えて振り向きぼくの肩を掴むと
「せっ!せんせぇ!大変なんだっ!森に厄介なモンスターが出て来て、護衛の手に負えねぇんだ!」
「お、おらたちの仲間が、そいつにやられちまって……、と、とにかく早く来てくれ!」
開拓が行われている区域には護衛達が定期的にモンスターを間引いているおかげで、滅多な事では人に危害を加えるような危険な個体は出て来ない筈。
そうなると……もしかしたら、異常種が現れたのだろうか、考えたくは無いけれどそだとしたら、何の準備もせずに患者の元に向かうのは危険だと思う。
「……とりあえず、そのモンスターの特徴について教えて貰えますか?」
「おぅ……すまねぇ、見た事ねぇ毒を持った奴で、そいつに噛まれた奴の腕が溶けて……」
「腕が溶ける……?」
「そうなんだよ!こう、噛まれた所からどろどろになって、溶けて取れちまったんだよ!」
「それでよぉ!噛まれた奴の悲鳴に気付いて、護衛が何とか追い払ってくれたのはいいけんど……と、とりあえずゆっくり話してる暇はねぇんだ!早く来てくれよ!」
肉が溶けるような毒を持ったモンスター?村の近くにはそんな危険な個体はいない筈。
奥に行くと、危険なモンスターもいるらしいけれど……滅多な事で人を襲うような事はしない。
既に生態系が完成している彼らが、未知の獲物に手を出すというリスクを自ら冒すような事をするとしたら、それは……余程飢えていて、なりふり構わなくなった時だろう。
そう考えると……やはり異常種が出たのかもしれない、これに関しては護衛も対応が遅れるのはしょうがない。
「あの……レースさん、ちょっといいですか?」
「あ?なんだぁ嬢ちゃん、今おら達は取り込み宙なんだ!話は後にしてくんな」
「あの、この人はぼくの助手です」
「助手だぁ?そんなの聞いた事ねぇぞ!この診療所は先生だけしかいなかったじゃねぇか!」
「今日から助手として来てくれたんですよ……えっとすみません、ダートさんどうしましたか?」
遅れて診療所に到着したダートさんが、心配げな声で話し掛けて来る。
場の雰囲気を読んで、口調を変えてくれるのは嬉しいけれど……どうしたのだろうか。
「ここでは話辛いのでちょっと……」
「……わかりました、すみませんがちょっとだけ離れますよ?」
「お、おいせんせぇ!」
彼女がそう言うということは、余程の事情があるのかもしれない。
だから、彼らには悪いけれど……今はこっちを優先させて貰おう。
「……わりぃな」
「いや、気にしないでください……それよりも、どうしたんですか?」
「あいつらが言ってるモンスターの事だけどさ、俺も森で迷っている時に遭遇したんだわ」
「……本当ですか?」
「おぅ、他の奴を食ってるところにでくわしたんだけどさ、やられた奴がどろどろに溶けてたから間違いないと思う」
……という事は、もしかしたら昨日ダートさんと出会った場所の近くにいた可能性がある。
これは……個人的にも、早く駆除した方がいいだろう。
「これは提案なんだけど、そのモンスター俺達で討伐しねぇか?おめぇは治癒術師だから、ある程度は戦えんだろ?」
「確かに戦えはしますが、まずは患者の容態を確認しないと……」
治癒術師は職業柄、負傷者が多く出る環境に滞在する事が多い。
特に自ら危険な戦場へと出向く人達もいて、身を守る為に戦いに秀でている者もいる。
むしろ……ぼくのように安全な村に滞在して、個人で診療所を運営する方が珍しいくらいだ。
「それでいいぜ?……けど、どうした?」
「あぁ、いえ……」
もちろん、ぼくもある程度の戦闘が出来るように師匠から鍛えられてはいる。
けど……危険な場所に出向くことが多い教会所属の治癒術師と違って、実戦経験は乏しいから、駆除をした方がいいとは思いはしたけど、うまく戦えるかと言われたら自信は無い。
「特に無いなら戻るぜ?」
「……えぇ、そうしましょうか」
とりあえず今はあれこれ考えてしまうよりも、彼らの案内が無いと患者の場所が分からないから、二人の元に戻った方がいいだろう。
「……すみません、お待たせしました」
「おせぇよせんせぇ!話が終わったんならさっさといくぞ!」
「助手のお嬢さんも、とりあえず一緒に来てくれ!」
「はい、ですが……その前に、必要な道具を持ってくるので少しだけお待ちください」
そう言うと、急いで診療所に入り必要だと思う薬をダートさんの空間収納に入れて貰う。
後は治癒術師の象徴である長杖を手に取り、外の二人に合流すると彼らに案内をして貰い、患者の元へと向かう。
「……これは」
「まじかよ、こいつはひでぇ……」
現場に着いて、目に映った光景に思わず絶句してしまう。
溶け落ちた腕は応急処置の為に、強く縛って止血が施されているけれど、つんっと鼻をつく嫌な臭いが傷口から煙と共に出ているのを見ると、今の現在進行形で体内が溶けているのだろうか。
けど……患者がまだ生きているのなら、何とか出来るかもしれない。
ダートさんを置いて先に行くのには、気が引けるけれど今は、治癒術師として患者の事を優先するべきだ。
「ごめんなさいダートさん、急患の患者が来たかもしれないので先に行きます」
「おぅ、俺の事はいいから、さっさと行ってこい」
返事を聞く前に走り出すと、急いで患者の元に向かう。
診療所のドアを叩いている二人組の姿を見るかぎり……開拓の為に森に出ている人だろうか。
そうだとしたら、護衛がいる筈なのにどうして彼らだけでここに……?
「先生っ!出て来てくれ!」
「せんせぇ!」
「どうかしましたか?急患ですか?」
急いで駆け寄って彼らに声を掛けると、一人が血相を変えて振り向きぼくの肩を掴むと
「せっ!せんせぇ!大変なんだっ!森に厄介なモンスターが出て来て、護衛の手に負えねぇんだ!」
「お、おらたちの仲間が、そいつにやられちまって……、と、とにかく早く来てくれ!」
開拓が行われている区域には護衛達が定期的にモンスターを間引いているおかげで、滅多な事では人に危害を加えるような危険な個体は出て来ない筈。
そうなると……もしかしたら、異常種が現れたのだろうか、考えたくは無いけれどそだとしたら、何の準備もせずに患者の元に向かうのは危険だと思う。
「……とりあえず、そのモンスターの特徴について教えて貰えますか?」
「おぅ……すまねぇ、見た事ねぇ毒を持った奴で、そいつに噛まれた奴の腕が溶けて……」
「腕が溶ける……?」
「そうなんだよ!こう、噛まれた所からどろどろになって、溶けて取れちまったんだよ!」
「それでよぉ!噛まれた奴の悲鳴に気付いて、護衛が何とか追い払ってくれたのはいいけんど……と、とりあえずゆっくり話してる暇はねぇんだ!早く来てくれよ!」
肉が溶けるような毒を持ったモンスター?村の近くにはそんな危険な個体はいない筈。
奥に行くと、危険なモンスターもいるらしいけれど……滅多な事で人を襲うような事はしない。
既に生態系が完成している彼らが、未知の獲物に手を出すというリスクを自ら冒すような事をするとしたら、それは……余程飢えていて、なりふり構わなくなった時だろう。
そう考えると……やはり異常種が出たのかもしれない、これに関しては護衛も対応が遅れるのはしょうがない。
「あの……レースさん、ちょっといいですか?」
「あ?なんだぁ嬢ちゃん、今おら達は取り込み宙なんだ!話は後にしてくんな」
「あの、この人はぼくの助手です」
「助手だぁ?そんなの聞いた事ねぇぞ!この診療所は先生だけしかいなかったじゃねぇか!」
「今日から助手として来てくれたんですよ……えっとすみません、ダートさんどうしましたか?」
遅れて診療所に到着したダートさんが、心配げな声で話し掛けて来る。
場の雰囲気を読んで、口調を変えてくれるのは嬉しいけれど……どうしたのだろうか。
「ここでは話辛いのでちょっと……」
「……わかりました、すみませんがちょっとだけ離れますよ?」
「お、おいせんせぇ!」
彼女がそう言うということは、余程の事情があるのかもしれない。
だから、彼らには悪いけれど……今はこっちを優先させて貰おう。
「……わりぃな」
「いや、気にしないでください……それよりも、どうしたんですか?」
「あいつらが言ってるモンスターの事だけどさ、俺も森で迷っている時に遭遇したんだわ」
「……本当ですか?」
「おぅ、他の奴を食ってるところにでくわしたんだけどさ、やられた奴がどろどろに溶けてたから間違いないと思う」
……という事は、もしかしたら昨日ダートさんと出会った場所の近くにいた可能性がある。
これは……個人的にも、早く駆除した方がいいだろう。
「これは提案なんだけど、そのモンスター俺達で討伐しねぇか?おめぇは治癒術師だから、ある程度は戦えんだろ?」
「確かに戦えはしますが、まずは患者の容態を確認しないと……」
治癒術師は職業柄、負傷者が多く出る環境に滞在する事が多い。
特に自ら危険な戦場へと出向く人達もいて、身を守る為に戦いに秀でている者もいる。
むしろ……ぼくのように安全な村に滞在して、個人で診療所を運営する方が珍しいくらいだ。
「それでいいぜ?……けど、どうした?」
「あぁ、いえ……」
もちろん、ぼくもある程度の戦闘が出来るように師匠から鍛えられてはいる。
けど……危険な場所に出向くことが多い教会所属の治癒術師と違って、実戦経験は乏しいから、駆除をした方がいいとは思いはしたけど、うまく戦えるかと言われたら自信は無い。
「特に無いなら戻るぜ?」
「……えぇ、そうしましょうか」
とりあえず今はあれこれ考えてしまうよりも、彼らの案内が無いと患者の場所が分からないから、二人の元に戻った方がいいだろう。
「……すみません、お待たせしました」
「おせぇよせんせぇ!話が終わったんならさっさといくぞ!」
「助手のお嬢さんも、とりあえず一緒に来てくれ!」
「はい、ですが……その前に、必要な道具を持ってくるので少しだけお待ちください」
そう言うと、急いで診療所に入り必要だと思う薬をダートさんの空間収納に入れて貰う。
後は治癒術師の象徴である長杖を手に取り、外の二人に合流すると彼らに案内をして貰い、患者の元へと向かう。
「……これは」
「まじかよ、こいつはひでぇ……」
現場に着いて、目に映った光景に思わず絶句してしまう。
溶け落ちた腕は応急処置の為に、強く縛って止血が施されているけれど、つんっと鼻をつく嫌な臭いが傷口から煙と共に出ているのを見ると、今の現在進行形で体内が溶けているのだろうか。
けど……患者がまだ生きているのなら、何とか出来るかもしれない。
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