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cyaru

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第07-2話  捕らぬ狸の皮算用

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国外追放のため、牢を出たファティーナが荷物を取りに戻って来るだろうと待ち構えていたケネル子爵は何時まで経ってもやって来ないファティーナはネブルグ公爵家に向かってしまったのかとネブルグ公爵家に向かった。

ケネル子爵は気が気ではなかった。
同じ思いはネブルグ公爵夫妻もだった。


企んだ通りに提出はしていたが王宮内の処理が遅れただけと思ってくれたのか、ファティーナが捕縛をされる前々日に婚約破棄が、前日に後見人辞退の申し出が許可された。

破棄の当日にシード伯爵家の所有していた領地は慰謝料として名義もネブルグ公爵家となった。

その領地だけでも金の卵を産むニワトリなのに人間とは欲望に際限がない生き物。

プールされていた莫大な金については王家も金額が金額故にファティーナ本人に決めさせるとしてネブルグ公爵家にもケネル子爵家にも関係のない事だと領地の所有権移転に合わせて通達してきた。

シード伯爵が亡くなり15年。その間に領地で得られた収益はネブルグ公爵家の収益どころではない。国家予算の7,8年分に匹敵する金額にまで膨れ上がっていて、更にはここ2、3年分に至ってはファティーナが外貨運用や他国の事業に投資を王宮の外資部署に依頼していた事もあり、運用益だけで小さい国なら買い取れる。

「養育費の毎月2億なんてティナには端金はしたがねじゃないか」


ネブルグ公爵夫妻とケネル子爵はファティーナが王都を出る前に資産管理を自分に委託させる手続きをしようと目論んだ。

簡単な事である。国外に追放されるのだからプールされている金を持って行けるはずもなく、金そのものは国内で誰かに委託し運用なり送金をしてもらう必要がある。

ファティーナが成人をするまでの残り5年間。生活費として自由に引き出して使える額がネブルグ公爵家にそれまで養育費として払っていた毎月2億としても年間24億。遊んで暮らせる。

5年後には制限枠も無くなるのだから委託されたとして全てを自由に使ってもいい。尤も放っておいても金が金を生んでいるのだから働かずに楽に生活も出来る。


ネブルグ公爵にシード伯爵家の領地は渡ってしまったが、稀有な魔導士の力を持つファティーナを手元に置けばこれから先はバラ色の人生。ネブルグ公爵にファティーナの身柄は渡せとは言われていないので監視下に置けば自由に出来ると思い込んでいた。

同じくネブルグ公爵夫妻も王都追放となれば荷物を取りに来た時に捕まえて地下牢にでも放り込んでしまえばもう誰の目に触れることもないのだから、国外に出た者として奴隷のように使ってやろうと考えたのに「こちらに立ち寄ったのではないのですか?」というケネル子爵に愕然とした。

親と考えている事は同じでもアロンツォはファティーナが最後に頼ってくるのは自分だと自負していた。議場では話の出来る雰囲気ではなかったし、公爵家にはファティーナの15年間のも荷物もある。必ず立ち寄ると思ったのだ。

15歳の令嬢が1人放逐をされるのに路銀もないとなれば王都追放と言えど歩ける距離ではない。何よりファティーナは3歳になるシルヴェリオを可愛がっていた。

シルヴェリオに難しい事は判らないだろうが、ファティーナは必ず顔は見せにやって来る。今生の別れになるかも知れないのに挨拶も無しに出立するなど思ってもいなかった。



夕方になり、空に星が瞬く時間になってもファティーナはやって来なかった。

「お金もないでしょう?どうやって?」と疑問を口にするマリア。
「何故来ないんだ?」と憤るアロンツォ。


その答えを返せる者はいない。

王都から出るにも荷物もなく路銀もない。着ていたドレスでも売ったかと思われたが買い取った業者も見つからなかったため、ネブルグ公爵は「攫われたのでは?」と捜索隊を組織しようして夫人に全力で止められた。

公爵家がそんな事をしてしまえば議会の決めた判決に背く事であり、その理由を問われる。

事実を明かす事は出来ないのだから。


★~★

「それまで面倒を見てきた子なので、こんな結果にはなりましたが心配で」

殊勝な事を述べて再三問い合わせをした結果、判決の出た日から10日目に彼らには知らせが齎された。
ファティーナの最新情報を齎したのは第1王子の親衛隊でもある兵士だった。

兵士は無表情で告げた。

「ファティーナが乗車したと思われる馬車が王都を出た先で野盗に襲われ、御者、乗客全員死亡。身元の確認も出来ないほど損傷も激しいためその場で全員を埋葬したと周辺警備隊から報告があった」

「なんと!!で、では・・・ティナの…その…財産はどうなったでしょう。いえ、儚くなったのであれば弔ってやることもやぶさかでは御座いませんし…」

「葬儀などの費用という事か。詳しくは知らないが議場を出た後、所有する全ての財は国庫に寄贈したと聞いたがな。尤もそんな事をしたところで減刑になる筈もないのに奇特な人間もいたものだ。しかし…そこまで思ってやるのなら自費で行なえばどうだ?誰も咎めはしないぞ」


目論見の外れたネブルグ公爵夫妻とケネル子爵は兵士の言葉を聞いて茫然と立ち尽くす事しか出来なかった。
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