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第11話 王家との取引②
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年齢としては先代ネブルグ公爵と国王はほぼ同じ。
王族と公爵家でもあり誰彼と親しくなる事も出来ない2人は数少ない友人同士でもあった。
先代ネブルグ公爵がどんな思いでアロンツォとファティーナの婚約を許したかは国王には判らない。
国王が初めてファティーナを見た日。
まだ寝返りがやっと打てるかどうかのファティーナがシード伯爵に抱かれやって来た。
「この子はおそらく稀代の魔導士になる。お前の息子以上にな。真っ当な道を進む魔導士にしてやってほしいが…私の孫娘とも言える。あまり泣かさないでやってくれよ」
国王は友人として先代ネブルグ公爵から頼まれた。
だからと言って肩入れをした訳ではない。
王家の動きを小娘であるファティーナが知る筈もないが、王家は15年間ネブルグ公爵家を監視していた。
先代公爵とシード伯爵が亡くなった事件については現公爵の関与がなく、物資不足から困窮した者達が野盗となり襲撃をしていた事は判明していた。
財を食いつぶすだけの現公爵のおこぼれに肖ろうと群がる貴族も居れば高潔であれと白い目で見る者も居る。全ての貴族がネブルグ公爵家のあり方を疑問視していた訳ではなかった。
ファティーナという魔導士を取り込んでいたため、追い込んでしまうとネブルグ公爵がどんな手に出るか判らなかった。
ファティーナの力は魔導士としての力だけではなく、代々受け継がれるその力により領地で採取できる薬草は国民だけでなく大陸に住む人や家畜などの命を瀬戸際で守るもの。
シード伯爵と子息が亡くなった時、領地の薬草は「あわや」の事態になった。最悪まで行かず持ち直したのはファティーナが存命だったからだろうと結論付けられていた。
ファティーナもその件についてはシード伯爵家に残された書物などで一族の存亡が関わっているのではないかと薄々感じてはいた。ファティーナの成長と共に収穫量も安定してきたこともあるし、領地に行く間隔をあけてしまうと成長度合いに差が出てしまっていたからだった。
王家としてもネブルグ公爵を追い込むのは簡単だが、ファティーナを離す事が先決。アロンツォにファティーナが想いを寄せている以上それも出来ない。ただ離すのではなくファティーナ自身が決別を意識して離れなければならないと考えていた。
ゆえに…。
王家はネブルグ公爵家の考えが読めなかった。
状況だけ見ればファティーナを死罪に追いやろうとしているとしか思えない。
捨て置くのなら王家がファティーナを引き受ける。そのつもりで様子見した。
婚約の解消や破棄を申し出てくるなら手間も省けるとさえ思ったものだ。しかし捕縛から3日経っても1週間経っても届け出は出て来なかった。
第1王子暗殺未遂ともなれば現行犯とも言えるので即決裁判で即座に極刑を執行しても良かったが、様子を見たことでネブルグ公爵の意図が見えてきた。
通常ならもう「当家には関係ない」と切り捨てるもの。
ネブルグ公爵は「身柄を引き取る」と申し出てきたのである。
「婚約の解消か破棄だと思ったんだがな」
「飼い殺しにするつもりなんでしょうか」
第1王子サミュエルはネブルグ公爵家の出してきた「身柄引き受けの嘆願書」をひらひらとさせて国王に問うた。
「命を救ってやったと恩を着せるつもりだろう」
「ハッ。罪を着せた後は己の手で脱がして今度は恩という着心地の悪いコートを着せるつもりですか。たいしたものだ」
「相当に資金繰りに行き詰まっているからな。こちらとしては経営難で両手をあげてくれればまだ差し伸べる手も用意をしていたのだが」
「ファティーナ嬢ありきですよね。父上ももう依存するのはお止めになった方がよいのでは?」
「依存?馬鹿な。可愛い教え子を救いたいだけだ」
「はいはい。そうしておきましょうか。でも父上の教え子は僕も…なんですけどね?」
国王はまだ当面取り調べをするとネブルグ公爵に回答した。
ただこの時に、ファティーナの取り調べを命じたが寝る間もなく、食事も碌に取らさずに取り調べが行われているとは夢にも思わなかった。
3週間経ち、やっとネブルグ公爵家から婚約破棄、ケネル子爵家から後見辞退の届けが出ると何を置いても最優先で処理を終え、サミュエルをファティーナの元に向かわせて実情を知った。
サミュエルが牢に行った日から議場に呼ばれる日まで取り調べが行われなかったのは遅きに失したが国王の声がかりだった。
ファティーナがサミュエルの術で保護をする為の小さな家に転移をした後、国王は消えた魔法陣にずっと頭を下げたまま動かなかった。
つま先にポトリと雫が落ちる。
幼かった教え子に国を統べる者の在り方を教えてもらった気がして恥じ入り、そして誰に向かってなのか。懺悔した涙はポトリ、ポトリと幾つも床にシミを作った。
「負うた子に教えられて浅瀬を渡るとはこの事だな。見えているつもりだった」
ファティーナは若干15歳にしてシード家の領地の重要性を判っていた。物心ついた時にはもう「家族」はいなかったのに一時不毛の地となっても復興できると考えたのは血のなせる業なのか。
「もうちょっと長生きしないといけないな」
視線を消えてしまった魔法陣のあった場所に移し、国王はファティーナとの約束を果たす事を心に誓った。
王族と公爵家でもあり誰彼と親しくなる事も出来ない2人は数少ない友人同士でもあった。
先代ネブルグ公爵がどんな思いでアロンツォとファティーナの婚約を許したかは国王には判らない。
国王が初めてファティーナを見た日。
まだ寝返りがやっと打てるかどうかのファティーナがシード伯爵に抱かれやって来た。
「この子はおそらく稀代の魔導士になる。お前の息子以上にな。真っ当な道を進む魔導士にしてやってほしいが…私の孫娘とも言える。あまり泣かさないでやってくれよ」
国王は友人として先代ネブルグ公爵から頼まれた。
だからと言って肩入れをした訳ではない。
王家の動きを小娘であるファティーナが知る筈もないが、王家は15年間ネブルグ公爵家を監視していた。
先代公爵とシード伯爵が亡くなった事件については現公爵の関与がなく、物資不足から困窮した者達が野盗となり襲撃をしていた事は判明していた。
財を食いつぶすだけの現公爵のおこぼれに肖ろうと群がる貴族も居れば高潔であれと白い目で見る者も居る。全ての貴族がネブルグ公爵家のあり方を疑問視していた訳ではなかった。
ファティーナという魔導士を取り込んでいたため、追い込んでしまうとネブルグ公爵がどんな手に出るか判らなかった。
ファティーナの力は魔導士としての力だけではなく、代々受け継がれるその力により領地で採取できる薬草は国民だけでなく大陸に住む人や家畜などの命を瀬戸際で守るもの。
シード伯爵と子息が亡くなった時、領地の薬草は「あわや」の事態になった。最悪まで行かず持ち直したのはファティーナが存命だったからだろうと結論付けられていた。
ファティーナもその件についてはシード伯爵家に残された書物などで一族の存亡が関わっているのではないかと薄々感じてはいた。ファティーナの成長と共に収穫量も安定してきたこともあるし、領地に行く間隔をあけてしまうと成長度合いに差が出てしまっていたからだった。
王家としてもネブルグ公爵を追い込むのは簡単だが、ファティーナを離す事が先決。アロンツォにファティーナが想いを寄せている以上それも出来ない。ただ離すのではなくファティーナ自身が決別を意識して離れなければならないと考えていた。
ゆえに…。
王家はネブルグ公爵家の考えが読めなかった。
状況だけ見ればファティーナを死罪に追いやろうとしているとしか思えない。
捨て置くのなら王家がファティーナを引き受ける。そのつもりで様子見した。
婚約の解消や破棄を申し出てくるなら手間も省けるとさえ思ったものだ。しかし捕縛から3日経っても1週間経っても届け出は出て来なかった。
第1王子暗殺未遂ともなれば現行犯とも言えるので即決裁判で即座に極刑を執行しても良かったが、様子を見たことでネブルグ公爵の意図が見えてきた。
通常ならもう「当家には関係ない」と切り捨てるもの。
ネブルグ公爵は「身柄を引き取る」と申し出てきたのである。
「婚約の解消か破棄だと思ったんだがな」
「飼い殺しにするつもりなんでしょうか」
第1王子サミュエルはネブルグ公爵家の出してきた「身柄引き受けの嘆願書」をひらひらとさせて国王に問うた。
「命を救ってやったと恩を着せるつもりだろう」
「ハッ。罪を着せた後は己の手で脱がして今度は恩という着心地の悪いコートを着せるつもりですか。たいしたものだ」
「相当に資金繰りに行き詰まっているからな。こちらとしては経営難で両手をあげてくれればまだ差し伸べる手も用意をしていたのだが」
「ファティーナ嬢ありきですよね。父上ももう依存するのはお止めになった方がよいのでは?」
「依存?馬鹿な。可愛い教え子を救いたいだけだ」
「はいはい。そうしておきましょうか。でも父上の教え子は僕も…なんですけどね?」
国王はまだ当面取り調べをするとネブルグ公爵に回答した。
ただこの時に、ファティーナの取り調べを命じたが寝る間もなく、食事も碌に取らさずに取り調べが行われているとは夢にも思わなかった。
3週間経ち、やっとネブルグ公爵家から婚約破棄、ケネル子爵家から後見辞退の届けが出ると何を置いても最優先で処理を終え、サミュエルをファティーナの元に向かわせて実情を知った。
サミュエルが牢に行った日から議場に呼ばれる日まで取り調べが行われなかったのは遅きに失したが国王の声がかりだった。
ファティーナがサミュエルの術で保護をする為の小さな家に転移をした後、国王は消えた魔法陣にずっと頭を下げたまま動かなかった。
つま先にポトリと雫が落ちる。
幼かった教え子に国を統べる者の在り方を教えてもらった気がして恥じ入り、そして誰に向かってなのか。懺悔した涙はポトリ、ポトリと幾つも床にシミを作った。
「負うた子に教えられて浅瀬を渡るとはこの事だな。見えているつもりだった」
ファティーナは若干15歳にしてシード家の領地の重要性を判っていた。物心ついた時にはもう「家族」はいなかったのに一時不毛の地となっても復興できると考えたのは血のなせる業なのか。
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