あなたが私にくれたもの

cyaru

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第43話  ♡答えられないキース

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「にゃは♡頂きますわ」

「どうぞ。熱いからな。ゆっくり、少しづつだぞ?」

「解っておりますわ!焼きナスを食べさせたら右に出る者はいない私なのです。ご安心くださいませ。ふぅふぅ…あむっ‥‥うぅぅん♡」


街の家も何時までも留守にはしておけず、森の家も明日には出立をせねばならない。
今回は持っていくものがグレイスが持っていたカンパのお金、そして少しの野菜の苗。

名残惜しかったが、村の状況を見る限り森の家が地震で揺れなかったのが不思議なくらい。
キースは隣国の街に移住する事を決めたのだ。

留守番の報酬が幾ら貰えるのかは判らないので、あてにはせず国の支援で安く貸し出してくれる国営住宅に留守番をする間、何度か申し込んでみることをグレイスと決めた。

今はファルスマテア王国から流れてきた者が多くいるのでかなりの倍率になる。
民間の賃貸はどこも満室で建設中の物件ですら入居者が決まっているので国営住宅しか借りられそうな物件はなかった。

なはっはらなかったら…はふはふ…ここに戻るのですよね?」

「グレイス、全部食べてからでいいから。火傷するぞ?」

「大丈夫ですわ!私、焼きナスで火傷するなら本望ですもの」

「なんか違うぞ?」

「だって、火傷してもキース様がお水をくださいますもの。ふふっ」


キースは移住することは決めたが、グレイスが光って見えるのが自分以外だとすると、と考えると迷ってしまうがガルティア王国は救済人や精霊人に頼らないほうに舵取りをしてかなりの時間が経っている。

なので、精霊人など口にすると「メルヘンね」と言われてしまう。
信じている人は殆どいないのだ。

その点では安心しているが、キース以外にオーラのような光が見える者がいるかも知れない。それが不安要素だった。

そしてもう1つ。
いつもと変わらない笑顔を向けてくるグレイスに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。



★~★

昨夜の事だ。

キースはグレイスに見たまま、思うままを伝えた。

「グレイス、話があるんだ」

「なんですの?」

「俺は、グレイスが精霊人じゃないかと思っているんだ」

「へ?‥‥嫌ですわ。キース様、そんな事あり得ませんわ」

やはりグレイスは自分の事を「もしや?」とも思っていない、そんな言葉を返してきた。
しかし、キースに聞こえた声、そして今もグレイスを包む光、グレイスが来てから起こる不思議な事を語って聞かせるとグレイスも思うところがあるのか考え込んだ。

「自分自身を精霊人と思ったことはありませんが、物事が上手く進む、大きな失敗をしない事は気が付いておりましたわ。間違いに気が付いても少しの後戻りで良かったり、場合によっては間違っていた方が良かった事も御座います」

「そうだったのか」

「キース様はもし…私が本当に精霊人だったら…どうされるおつもりなのです?」

「え?…そ、そうだな…」

キースは答えられなかった。
精霊人ともなればキースがいなくても生きて行ける。

急に現実を考えてしまった。
今も現実なのだが、グレイスとこんな関係になった元を辿ればシリウスがグレイスが生き延びるのに最適だとキースを選び、託したから。

――それも、精霊の導きだったのか?――

そう考えると、ゼル侯爵の捨ててこいと言った山が反対だったのはゼル侯爵の意思ではなく、精霊によって導かれた結果なのではないかと思えた。

――俺じゃなくても良かったのか?――

グレイスと目が合う。グレイスはキースの返事を黙って待っていた。

ここに来た時、泥だらけでボロボロだったけれどキースには到底手が出ない上質な布地で仕立てた服をグレイスは着ていた。

なのに今はどうだ。

逆立ちしても新品の服は買ってやれず、何処の誰が着たかも判らない古着をグレイスは着ている。
キースは思った。

――俺はグレイスに何もしてやれない――

「ごめん。ちょっと夜風に当たって来る」

ガタン。椅子の音をさせて立ち上がったキースにグレイスが不安げな顔をしたがキースはこの場にいることが居た堪れなくなり外に出てしまった。


結局キースはグレイスが精霊人だとなればどうするのか。
グレイスに返事を返せないまま朝を迎えたのだった。
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