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第01話 最愛の女性が出来たらしい
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「最愛の女性と出会ってしまった」
婚約者のカスパルからそう聞いた時、コルネリアは「へぇ。良かったわね」と返事を返した。
「また始まった」と思えるくらいにカスパルは女癖が悪い。
夜会などで女性給仕が飲み物は如何ですかと当たり前の事を聞いて来ただけ、通り縋りに「おはようございます」など挨拶をしてきただけで自分に気があると思うのか、タイプの女性なら直ぐに口説きにかかる。
いちいち付き合ってはいられないし、その度に言い合いをするのも馬鹿馬鹿しい。
以前は注意もしていたが、これはもう病気だ。不治の病で死んだって治らない。
それよりもこの場は夜会。
主賓や招かれている他の参加者への挨拶など他にする事が満載でコルネリアはカスパルの世迷言に付き合っている暇はないと、最近両家が手掛けている事業の関係者の顔が見えたので挨拶に向かおうとした。
のだが…。
「え?ちょっと!何処に行くの?!」
入場したばかりなのにカスパルはコルネリアを置いて帰ろうとする。
「何処って。最愛と出会ったと言ったろ?なんでお前といなきゃなんないんだよ」
――私といるっていうより、ここに招待してもらってる意味も解らないの?――
本来ならお声がかりもないような大きな事業。
コルネリアもカスパルも両家の当主代理としてここに招かれているのだから重要性は解っているものだと思ったのに。
「だからって来たばかりでしょう?」
「知った事か。妬くのは解るけど俺の愛を邪魔すんなよ」
――誰が妬くか!!――
流石に入場したばかりで出ていくとなれば主催者に失礼になるとコルネリアはカスパルを引き留めたのだが、カスパルはコルネリアの手を弾くとさっさと会場から出て何処かに行ってしまったのだった。
★~★
婚約者のカスパルはハーベ伯爵家の三男坊。長兄、次兄は父親に似た武骨な見た目をしているがカスパルは若かりし頃には「カトレアの君」と呼ばれ子息の心を鷲掴みにした母親譲りの美貌の持ち主。
中性的な顔立ちだが、目は男性にしては大きく、鼻梁もスッキリとしていて優男風の美丈夫。
こう言ってはなんだが物凄くモテる。兎に角モテる。
夜会に行けば婚約者のコルネリアとファーストダンスを曲の途中まで踊れば、男性なのに花から花へパタパタと飛んで蜜を吸う蝶のように令嬢達とのダンスが始まる。
曲が奏でられているうちはずぅぅっと踊っているのでコルネリアは壁の花になるのだが、美丈夫は舞台の中央に居なければならないと思っているようで壁の花にカスパルが寄ってくることはなかった。
曲が終わる頃にはどの段階かは判らないがいつのまにか姿が消えている。
本日のお持ち帰り令嬢と何処かにシケ込むのでコルネリアは最後まで待つことは止めてさっさと家路につく。
昼間の茶会なら、と思えばこちらもあっという間に令嬢に囲まれてコルネリアは蚊帳の外。主催者の当主夫人たちと家の事業について二言、三言交わしているうちにカスパルの姿は消えているので、探す事もせずコルネリアは家路につく。
目が3秒でも合えばもう惚れてしまっている。
なので、「運命の女性なんだ」「本物の愛なんだ」とカスパルは何度も婚約を解消してくれないかとコルネリアに行ってきた経緯がある。
その度に「いいわよ」と返事はするのだが、貴族の婚約と言うのは当人の意思は無関係なので、カスパルの言い分が通る事は今まで一度もなかった。
コルネリアが同意をしてもハーベ伯爵とジェッタ伯爵が同意しなければ婚約は継続したまま。どうにもならないのだ。
コルネリアとしてはもういい加減にウンザリ。
カスパルの婚約者だというだけであれこれ言われるのも嫌だし、不誠実なカスパルに対して良いところを探そうにもアラばかりで探すだけ時間の無駄。
その上、数日すれば「アレは気の迷いだった」と花束を持ってカスパルはコルネリアの家であるジェッタ伯爵家にやって来る。
それが恒例の事で、コルネリアは国内で最も力のある筆頭公爵家での夜会で入場するなりカスパルに言われ、置いてけぼりを食らってしまったが「いつもの事だ」と気にも留めていなかった。
婚約者のカスパルからそう聞いた時、コルネリアは「へぇ。良かったわね」と返事を返した。
「また始まった」と思えるくらいにカスパルは女癖が悪い。
夜会などで女性給仕が飲み物は如何ですかと当たり前の事を聞いて来ただけ、通り縋りに「おはようございます」など挨拶をしてきただけで自分に気があると思うのか、タイプの女性なら直ぐに口説きにかかる。
いちいち付き合ってはいられないし、その度に言い合いをするのも馬鹿馬鹿しい。
以前は注意もしていたが、これはもう病気だ。不治の病で死んだって治らない。
それよりもこの場は夜会。
主賓や招かれている他の参加者への挨拶など他にする事が満載でコルネリアはカスパルの世迷言に付き合っている暇はないと、最近両家が手掛けている事業の関係者の顔が見えたので挨拶に向かおうとした。
のだが…。
「え?ちょっと!何処に行くの?!」
入場したばかりなのにカスパルはコルネリアを置いて帰ろうとする。
「何処って。最愛と出会ったと言ったろ?なんでお前といなきゃなんないんだよ」
――私といるっていうより、ここに招待してもらってる意味も解らないの?――
本来ならお声がかりもないような大きな事業。
コルネリアもカスパルも両家の当主代理としてここに招かれているのだから重要性は解っているものだと思ったのに。
「だからって来たばかりでしょう?」
「知った事か。妬くのは解るけど俺の愛を邪魔すんなよ」
――誰が妬くか!!――
流石に入場したばかりで出ていくとなれば主催者に失礼になるとコルネリアはカスパルを引き留めたのだが、カスパルはコルネリアの手を弾くとさっさと会場から出て何処かに行ってしまったのだった。
★~★
婚約者のカスパルはハーベ伯爵家の三男坊。長兄、次兄は父親に似た武骨な見た目をしているがカスパルは若かりし頃には「カトレアの君」と呼ばれ子息の心を鷲掴みにした母親譲りの美貌の持ち主。
中性的な顔立ちだが、目は男性にしては大きく、鼻梁もスッキリとしていて優男風の美丈夫。
こう言ってはなんだが物凄くモテる。兎に角モテる。
夜会に行けば婚約者のコルネリアとファーストダンスを曲の途中まで踊れば、男性なのに花から花へパタパタと飛んで蜜を吸う蝶のように令嬢達とのダンスが始まる。
曲が奏でられているうちはずぅぅっと踊っているのでコルネリアは壁の花になるのだが、美丈夫は舞台の中央に居なければならないと思っているようで壁の花にカスパルが寄ってくることはなかった。
曲が終わる頃にはどの段階かは判らないがいつのまにか姿が消えている。
本日のお持ち帰り令嬢と何処かにシケ込むのでコルネリアは最後まで待つことは止めてさっさと家路につく。
昼間の茶会なら、と思えばこちらもあっという間に令嬢に囲まれてコルネリアは蚊帳の外。主催者の当主夫人たちと家の事業について二言、三言交わしているうちにカスパルの姿は消えているので、探す事もせずコルネリアは家路につく。
目が3秒でも合えばもう惚れてしまっている。
なので、「運命の女性なんだ」「本物の愛なんだ」とカスパルは何度も婚約を解消してくれないかとコルネリアに行ってきた経緯がある。
その度に「いいわよ」と返事はするのだが、貴族の婚約と言うのは当人の意思は無関係なので、カスパルの言い分が通る事は今まで一度もなかった。
コルネリアが同意をしてもハーベ伯爵とジェッタ伯爵が同意しなければ婚約は継続したまま。どうにもならないのだ。
コルネリアとしてはもういい加減にウンザリ。
カスパルの婚約者だというだけであれこれ言われるのも嫌だし、不誠実なカスパルに対して良いところを探そうにもアラばかりで探すだけ時間の無駄。
その上、数日すれば「アレは気の迷いだった」と花束を持ってカスパルはコルネリアの家であるジェッタ伯爵家にやって来る。
それが恒例の事で、コルネリアは国内で最も力のある筆頭公爵家での夜会で入場するなりカスパルに言われ、置いてけぼりを食らってしまったが「いつもの事だ」と気にも留めていなかった。
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