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第08話 初日でデートの約束
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シャウテン子爵家の庭はこじんまりとしているが綺麗に剪定をされていた。
「この時期は…そうだなぁ藤棚が終わったので向日葵なんですけど、まだ蕾なんですよ」
「左様でございますか」
「花も咲いてない庭など見ても楽しくないですよね」
「そんな事は…ありません」
――うわぁ、凄く気を使ってくれてる気がするぅ――
気を使う事はあっても、使われる事に慣れていないとどこかムズ痒い。
おまけに相手はとんでもない二つ名のある超絶美丈夫となると何処で気を緩めて良いのかも判らない。
困惑の表情も浮かべるコルネリアを見てヴェッセルは少し先にあるベンチで休みましょうと誘い、ベンチに到着するとポケットに手を入れた。
「あれ?…あれ?」
「どうなさいました?」
「いや…ハンカチを入れたと思ったんですが‥ああぁーっ!!」
突然声をあげたヴェッセルだったが、その姿をみてコルネリアも吹き出してしまった。
指先を入れてもハンカチが見当たらず、手を突っ込んでみればその手は上着の裾から飛び出ていた。ポケットは入り口があるだけでポケットになっていなかったのだ。
「ふふふっ。ふふっ…くくっ…あははは」
噴き出すだけでは堪えきれず、コルネリアは笑いだしてしまった。
「参ったなぁ。言い訳になるけど聞くだけ聞いてくれ。今日顔合わせだっていうんで急いで仕立てて貰ってさ、仕立て屋の爺さんが ”形は出来た” っていうからさぁ…なんだよ。外だけ出来てるけど内側がまだじゃん…あぁもう!ハンカチも入れたんだけど、そのまま床に落ちたんだな。全然気が付かなかったよ」
そう言いながらも上着の裾をペロッと捲り、入り口しかないポケットから手を入れて「何もない」と手振りで示すのでさらにおかしくなってコルネリアは笑いが止まらなくなり、遂には目尻に涙が滲むし、お腹まで痛くなってしまった。
「笑った方が可愛いな」
「アハハ‥‥え?」
「なんかさ、澄ましてるよりそうやって笑った方が可愛いよ」
「・・・・」
「あ、警戒しただろ?本当だぞ?取り繕ってるとか思ってるだろ?」
――取り繕うというか…腹の中で何考えてるのかなと思ったわ――
ジト目になるコルネリアにヴェッセルは裾をピンと引っ張ると姿勢を正した。
「どうしようかと思ったけど…俺、婿に行く――」
「のは止めようと思います」てっきりそう言うかと思ってコルネリアは先手を打った。
「あぁーっ!そうですよね。是非!やめておいてくださいっ!私もお断りしようと思ってました!」
「え?」
「え?って…え?」
2人の間に沈黙が流れる。聞こえるのは庭にいる鳩の「ホッホー。ホッホー」の声だけ。
「断るって…どういう?」
「父がごり押ししたからですよね。こちらから言い出した事なので断り難かったと思うんです。頭が光を反射するように人の言葉も吸収しないって言いますか、思ったままを撒き散らす父なので!初回は両家とも不味いと思うので頃合いを見計らってこちらからお断りをしようと思いまして」
うんうん。判るわぁっとコルネリアは頷くがヴェッセルは「逆だよ」と言う。
「逆?逆と言いますと…」
「俺、婿入りするよ。正直なところ話をされた時は断りにくかったてのもあったけど…あんなに声をあげて笑ってくれる女性なんて…なんていうか…正直でイイナって思ったよ」
「面白いから笑うんだと思いますが…」
「そう!それだよ。面白いのに我慢してさぁ、すまし顔ってさ、こっちも興覚めするんだよ。でもさ、あんなに笑ってくれるなら退屈しそうにないし、ハッキリと意思表示してくれるからこっちもやりがいがあるよ」
「やりがい…巻貝でも衝動買いでもなく??」
「ふはっ!そういうところ。いいなぁ。なんか惚れそう」
「ほっ惚れ?!」
――ダメよ!これが女性を口説く手がも知れないでしょ!――
コルネリアの中の警戒音が高くなっていく。
しかしヴェッセルは「よろしく」と手を差し出してきた。握手を求めているのだ。
「どうせ2,3回あって断ろうと思ってたなら、その2,3回で俺を知ってくれよ。どうせ言い出した側から断ればウチに害がないとか思ってるんだろうけど、それは横においといて。先ずは…そうだな明日。何か予定ある?」
「明日は特には…予定などありませんけど」
「じゃぁ決まりだ。9時に迎えに行くから動きやすい恰好で、少々汚れてもいい服にしてくれ」
「は、はぁ…それは構いませんが」
「昼はこっちで用意するから何も持ってこなくていいからな」
「では、お言葉に甘えて???いいんでしょうか」
「夫婦になるんだから良いんだよ」
――2,3回で断るならという前置きどこ行った?!――
ヴェッセルの口調に乗せられてしまったようなコルネリアはデートの約束をしてしまったのだった。
「この時期は…そうだなぁ藤棚が終わったので向日葵なんですけど、まだ蕾なんですよ」
「左様でございますか」
「花も咲いてない庭など見ても楽しくないですよね」
「そんな事は…ありません」
――うわぁ、凄く気を使ってくれてる気がするぅ――
気を使う事はあっても、使われる事に慣れていないとどこかムズ痒い。
おまけに相手はとんでもない二つ名のある超絶美丈夫となると何処で気を緩めて良いのかも判らない。
困惑の表情も浮かべるコルネリアを見てヴェッセルは少し先にあるベンチで休みましょうと誘い、ベンチに到着するとポケットに手を入れた。
「あれ?…あれ?」
「どうなさいました?」
「いや…ハンカチを入れたと思ったんですが‥ああぁーっ!!」
突然声をあげたヴェッセルだったが、その姿をみてコルネリアも吹き出してしまった。
指先を入れてもハンカチが見当たらず、手を突っ込んでみればその手は上着の裾から飛び出ていた。ポケットは入り口があるだけでポケットになっていなかったのだ。
「ふふふっ。ふふっ…くくっ…あははは」
噴き出すだけでは堪えきれず、コルネリアは笑いだしてしまった。
「参ったなぁ。言い訳になるけど聞くだけ聞いてくれ。今日顔合わせだっていうんで急いで仕立てて貰ってさ、仕立て屋の爺さんが ”形は出来た” っていうからさぁ…なんだよ。外だけ出来てるけど内側がまだじゃん…あぁもう!ハンカチも入れたんだけど、そのまま床に落ちたんだな。全然気が付かなかったよ」
そう言いながらも上着の裾をペロッと捲り、入り口しかないポケットから手を入れて「何もない」と手振りで示すのでさらにおかしくなってコルネリアは笑いが止まらなくなり、遂には目尻に涙が滲むし、お腹まで痛くなってしまった。
「笑った方が可愛いな」
「アハハ‥‥え?」
「なんかさ、澄ましてるよりそうやって笑った方が可愛いよ」
「・・・・」
「あ、警戒しただろ?本当だぞ?取り繕ってるとか思ってるだろ?」
――取り繕うというか…腹の中で何考えてるのかなと思ったわ――
ジト目になるコルネリアにヴェッセルは裾をピンと引っ張ると姿勢を正した。
「どうしようかと思ったけど…俺、婿に行く――」
「のは止めようと思います」てっきりそう言うかと思ってコルネリアは先手を打った。
「あぁーっ!そうですよね。是非!やめておいてくださいっ!私もお断りしようと思ってました!」
「え?」
「え?って…え?」
2人の間に沈黙が流れる。聞こえるのは庭にいる鳩の「ホッホー。ホッホー」の声だけ。
「断るって…どういう?」
「父がごり押ししたからですよね。こちらから言い出した事なので断り難かったと思うんです。頭が光を反射するように人の言葉も吸収しないって言いますか、思ったままを撒き散らす父なので!初回は両家とも不味いと思うので頃合いを見計らってこちらからお断りをしようと思いまして」
うんうん。判るわぁっとコルネリアは頷くがヴェッセルは「逆だよ」と言う。
「逆?逆と言いますと…」
「俺、婿入りするよ。正直なところ話をされた時は断りにくかったてのもあったけど…あんなに声をあげて笑ってくれる女性なんて…なんていうか…正直でイイナって思ったよ」
「面白いから笑うんだと思いますが…」
「そう!それだよ。面白いのに我慢してさぁ、すまし顔ってさ、こっちも興覚めするんだよ。でもさ、あんなに笑ってくれるなら退屈しそうにないし、ハッキリと意思表示してくれるからこっちもやりがいがあるよ」
「やりがい…巻貝でも衝動買いでもなく??」
「ふはっ!そういうところ。いいなぁ。なんか惚れそう」
「ほっ惚れ?!」
――ダメよ!これが女性を口説く手がも知れないでしょ!――
コルネリアの中の警戒音が高くなっていく。
しかしヴェッセルは「よろしく」と手を差し出してきた。握手を求めているのだ。
「どうせ2,3回あって断ろうと思ってたなら、その2,3回で俺を知ってくれよ。どうせ言い出した側から断ればウチに害がないとか思ってるんだろうけど、それは横においといて。先ずは…そうだな明日。何か予定ある?」
「明日は特には…予定などありませんけど」
「じゃぁ決まりだ。9時に迎えに行くから動きやすい恰好で、少々汚れてもいい服にしてくれ」
「は、はぁ…それは構いませんが」
「昼はこっちで用意するから何も持ってこなくていいからな」
「では、お言葉に甘えて???いいんでしょうか」
「夫婦になるんだから良いんだよ」
――2,3回で断るならという前置きどこ行った?!――
ヴェッセルの口調に乗せられてしまったようなコルネリアはデートの約束をしてしまったのだった。
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