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第24話 寝相の悪さが問題だ
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副王都滞在の最終日。ちょっとしたアクシデントが起きた。
最終日は宿を予約していたのだが、宿屋の手違いで1室に2人の宿泊となってしまったのである。
「前金で1名1室。2室を予約していたはずだ」
「そうなんですが…申し訳ございません!もうお客様がお部屋に入られてしまって空きは1室しかないんです」
副王都の中心部なら他の宿屋に回る事も出来ただろうが、明日はもう王都に向けて出立をするので副王都のはずれにある宿屋まで来てしまった。
3、4時間くらい中心部に戻れば宿は取れるだろう。
しかしそれでは翌朝片方が来るのを待たねばならない。
ヴェッセルとしては自分が中心部に戻るのは吝かでないが、宿屋の理不尽さに呆れた。
宿屋の朝食は午前7時から9時。なのだがこの宿のチェックアウトは10時まで。
どんなに急いでヴェッセルがやってきても7時開始の朝食が7時に終わる筈はなく、朝食抜きで馬を走らせても10時には間に合わない。
明日、雨が降っていようがコルネリアは部屋から出て待たねばならない。
考えていても仕方がない。考えている間にも時間は経っているし中心部に戻って真夜中になれば空いているであろう部屋があっても宿屋が当日受付終了になっていれば野宿になってしまう。
「仕方ありません。部屋はあるんですし、2名の宿泊用なんでしょう?」
「はい、お部屋はお2人で1室を使って頂けるようご用意致しました」
シングル2つがツインになっただけ。旅なんだからこんなアクシデントもあるとコルネリアは「いいんじゃない?」宿屋の代替案を受け入れたのだが、案内された部屋でまたアクシデント。
「これって…ツインじゃなくてダブルよね」
「どうみてもそうだな」
ヴェッセルはベルボーイに「簡易寝台はあるか?」と問うた。
大抵数台は宿屋にあるものなので貸して貰おうと思ったのだ。
「申し訳ございません。簡易寝台も本日は全て他のお客様にご使用頂いておりまして」
ないものは仕方がい。
では次に「僕が、私がソファで寝る」と言う流れになるのだがそれも出来なかった。
テーブルセットはあるのだが背凭れのない丸椅子が2脚。
とても寝台の代わりには出来なかったのである。
「俺は床で寝るよ」
「何言ってるの?明日から3、4日馬に揺られるのよ?私は気にしないから一緒に寝ればいいわ」
――俺が気にする。ものすご~く気にする――
「どうしたの?ダブルサイズだから広いし私、そんなに寝相は悪くないと思うの。ヴェッセルはかなり悪い方なの?」
「いや、悪くはないと思う。いろいろと…」
そう。 ”色々悪くない” のだ。
理性を保つことが出来れば苦行の時間になるだけで。
ヴェッセルの心拍数だけが爆上がりする中、「先に休むわね。おやすみなさい」とコルネリアはさっさと寝台に寝転がり「わぁ!シーツが気持ちいい!!」と大はしゃぎ。
――俺もはしゃいでるよ――
ヴェッセルは部分的に大はしゃぎする部位の鎮まりを待って寝台に潜り込んだのだった。
★~★
「どうしたの?寝不足?」
「・・・・・」
最初は馬に乗るのも初めてと怖がっていたのに副王都までの往復を1人で騎乗出来るようになったコルネリアはヴェッセルが眠そうな顔をしているので、隣を並走して顔を覗き込んでくる。
――もう王都に戻ったら容赦はしないからな!――
昨夜は全く眠れなかった。スースーと隣で寝息を立てていたコルネリア。
「寝相は良い方」と言っていたのに、寝返りを打ってヴェッセルの隣にピタっとくっついたかと思うと足を絡めて来てヴェッセルは最大級の忍耐を試された。
その後もヴェッセルの体温で暑くなったのか元の位置にコロンと転がると掛布を足で蹴飛ばす。その度に「風邪ひくだろ」と掛布を掛けるのだが、寒くなるとまたヴェッセルにピタリとくっついて暑くなると離れての繰り返し。
二の腕に押し付けられる柔らかい双璧もだが、どちらかと言えばお世辞にもよいとは言えない寝相だったので宿屋の寝間着は胸元がギリギリまではだけていて、その度に「暗闇でも視界良好!」だったのだ。
――いいか?!俺じゃなかったらとっくに食われてるからな!――
隣をフンフン♪鼻歌を歌いながら並走するコルネリアにヴェッセルは心の中で吠えた。
最終日は宿を予約していたのだが、宿屋の手違いで1室に2人の宿泊となってしまったのである。
「前金で1名1室。2室を予約していたはずだ」
「そうなんですが…申し訳ございません!もうお客様がお部屋に入られてしまって空きは1室しかないんです」
副王都の中心部なら他の宿屋に回る事も出来ただろうが、明日はもう王都に向けて出立をするので副王都のはずれにある宿屋まで来てしまった。
3、4時間くらい中心部に戻れば宿は取れるだろう。
しかしそれでは翌朝片方が来るのを待たねばならない。
ヴェッセルとしては自分が中心部に戻るのは吝かでないが、宿屋の理不尽さに呆れた。
宿屋の朝食は午前7時から9時。なのだがこの宿のチェックアウトは10時まで。
どんなに急いでヴェッセルがやってきても7時開始の朝食が7時に終わる筈はなく、朝食抜きで馬を走らせても10時には間に合わない。
明日、雨が降っていようがコルネリアは部屋から出て待たねばならない。
考えていても仕方がない。考えている間にも時間は経っているし中心部に戻って真夜中になれば空いているであろう部屋があっても宿屋が当日受付終了になっていれば野宿になってしまう。
「仕方ありません。部屋はあるんですし、2名の宿泊用なんでしょう?」
「はい、お部屋はお2人で1室を使って頂けるようご用意致しました」
シングル2つがツインになっただけ。旅なんだからこんなアクシデントもあるとコルネリアは「いいんじゃない?」宿屋の代替案を受け入れたのだが、案内された部屋でまたアクシデント。
「これって…ツインじゃなくてダブルよね」
「どうみてもそうだな」
ヴェッセルはベルボーイに「簡易寝台はあるか?」と問うた。
大抵数台は宿屋にあるものなので貸して貰おうと思ったのだ。
「申し訳ございません。簡易寝台も本日は全て他のお客様にご使用頂いておりまして」
ないものは仕方がい。
では次に「僕が、私がソファで寝る」と言う流れになるのだがそれも出来なかった。
テーブルセットはあるのだが背凭れのない丸椅子が2脚。
とても寝台の代わりには出来なかったのである。
「俺は床で寝るよ」
「何言ってるの?明日から3、4日馬に揺られるのよ?私は気にしないから一緒に寝ればいいわ」
――俺が気にする。ものすご~く気にする――
「どうしたの?ダブルサイズだから広いし私、そんなに寝相は悪くないと思うの。ヴェッセルはかなり悪い方なの?」
「いや、悪くはないと思う。いろいろと…」
そう。 ”色々悪くない” のだ。
理性を保つことが出来れば苦行の時間になるだけで。
ヴェッセルの心拍数だけが爆上がりする中、「先に休むわね。おやすみなさい」とコルネリアはさっさと寝台に寝転がり「わぁ!シーツが気持ちいい!!」と大はしゃぎ。
――俺もはしゃいでるよ――
ヴェッセルは部分的に大はしゃぎする部位の鎮まりを待って寝台に潜り込んだのだった。
★~★
「どうしたの?寝不足?」
「・・・・・」
最初は馬に乗るのも初めてと怖がっていたのに副王都までの往復を1人で騎乗出来るようになったコルネリアはヴェッセルが眠そうな顔をしているので、隣を並走して顔を覗き込んでくる。
――もう王都に戻ったら容赦はしないからな!――
昨夜は全く眠れなかった。スースーと隣で寝息を立てていたコルネリア。
「寝相は良い方」と言っていたのに、寝返りを打ってヴェッセルの隣にピタっとくっついたかと思うと足を絡めて来てヴェッセルは最大級の忍耐を試された。
その後もヴェッセルの体温で暑くなったのか元の位置にコロンと転がると掛布を足で蹴飛ばす。その度に「風邪ひくだろ」と掛布を掛けるのだが、寒くなるとまたヴェッセルにピタリとくっついて暑くなると離れての繰り返し。
二の腕に押し付けられる柔らかい双璧もだが、どちらかと言えばお世辞にもよいとは言えない寝相だったので宿屋の寝間着は胸元がギリギリまではだけていて、その度に「暗闇でも視界良好!」だったのだ。
――いいか?!俺じゃなかったらとっくに食われてるからな!――
隣をフンフン♪鼻歌を歌いながら並走するコルネリアにヴェッセルは心の中で吠えた。
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