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2巻
2-2
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呆気にとられながら、傷ついた『ソード・ステッキ』に目を落とす。
仕方ない、日を改めよう。ま、当面は『スモール・ソード』があるから問題はないだろう。けれど、もしこの傷が見た目以上に深刻で、あとになって割れたりしたら嫌だな。
カシュンと隠し剣を出し入れしつつ傷を確認していると、その先の視線に気付いた。
「それ、杖なの?」
少女が立ち止まってこちらを見ている。なんだ、まだいたのか。
「ここで買った『ソード・ステッキ』だけど」
「へぇ……珍しい形。で、なんで杖なんか持ってるの?」
「魔法使いだからだよ! 見れば分かるだろ」
「へ? 本当に?」
疑いの眼差しを向ける少女。
「本当だよ!」
「見えないなぁ~。そんな格好の魔法使い、ぼく、見たことないよ」
「じゃあ、俺は一体何に見えるのさ?」
「うーん、召喚ほやほやで右も左も分からない医者か……現実を受け入れられない学者とか。いるんだよね、たまに。もしくはー……目立ちたがり屋か、不審者だね」
「ふ、不審者? それはちょっと言い過ぎでしょ?」
「割合で言うと、医者一割、学者一割、目立ちたがり屋一割で、不審者が七割かな」
「ほぼ不審者ってこと!?」
「あははっ、そーゆーこと」
堪えられないといった感じで少女が笑い出した。
目の前で揺れる少女の額。こんなにデコピンしたくなったのは生まれて初めてだ。
一発くらいはいいかもしれない……そう思っていると、少女の手が『ソード・ステッキ』へと伸びた。
「貸して」
「え? あ、あぁ」
少女はステッキを受け取ると、慎重な手つきで柄のほうからまじまじと見つめ始めた。
その表情に、今までのふざけた様子は見られない。しばらくして杖の傷まで辿り着いた彼女は、それを様々な角度から舐めるように眺め、ふーんと頷いた。
「これ、預かっとくよ」
「また急だな……預かるって、いつまで? ダハクさんが修理してくれるの?」
「ん~、ダハ爺、実はちょっと具合が悪くてね。今は奥で寝てるんだ」
「少し前に会った時は元気そうだったけど……風邪?」
「いやー……ま、歳だからさ。病気の一つや二つはあるよ」
「病気って……」
「やだなー、そんな深刻なもんじゃないって。ちょくちょく休むのは前からだし、すぐに良くなるよ」
あっけらかんと言う少女。
身近にいる彼女がそう言うのなら、そうなのかもしれない。
「これ、他所では扱ってない杖だと思うんだよね。だから修理はダハ爺に見てもらったほうがいいよ。起きたら言っておくからさ」
「それは助かるけど……ダハクさんにあまり無理させないでね」
「あははっ、分かってる」
果たしてこの子に任せて大丈夫だろうか、という若干の不安はある。少なくとも数分前の彼女で判断すると、答えはNOだろう。
だけど、あんな風に扱ってくれるのなら……大丈夫かな。
「杖は……大事にしないとね」
手にしたそれを撫でながら、少女は呟いた。
2 プレゼント
朝日を浴びてキラキラと輝く湖面を背景に、少年は剣を構える。
両刃の双剣を逆手に引いて十分に溜めを作った彼は、湖から吹き抜ける風を背に受けて地を蹴った。
瞬時に詰まる彼我の距離。
しかし、この感覚にはもう慣れた。
呼吸を乱すこともなく、ただ手にした『スモール・ソード』を突き放つ。
二つの刃が重なる。
――キィイイン!
静かな湖畔に甲高い金属音が鳴り響いた。
ここは《ルーデン》の西に位置する《レーニャの湖》。
何故かモンスターの現れないこの場所は、《ルーデン》の水瓶として機能する一方、今のところまともな攻撃魔法がない俺の、剣の稽古場でもある。
「ふぅ……お疲れさま」
「お疲れさまです! 今日もありがとうございました!」
サラサラの金髪が勢いよく落ちる。
この日本人顔負けの九十度のお辞儀をしているのは、異世界出身ルーツ・ブロード十五歳。俺の稽古相手だ。
「お礼を言いたいのはこっちだよ。ルーツ君の動きは凄く勉強になる」
「もう、タヒトさんはお上手ですね」
「いや、お世辞とかじゃなくて、本当だよ。速くてとても真似はできないけどね」
「全然勝てる気がしないのですけど……」
それは俺が【Excil】を使っているからだ。
【Excil】で彼の動きの全てを予測しているから、どんな攻撃でも捌ける。だけど……
「すぐに勝てるようになるよ」
「あははっ、頑張ります」
ルーツは笑って受け流すが、それは俺の本心だった。
というのも、彼の動きは本当に速いのだ。とてもレベル6……まして「無職」とは思えない速さの攻撃を繰り出す。
それはあの騎士団長ルーカスを思わせるほどの速さ……はちょっと言い過ぎか。いずれにしろ、物凄い力を秘めているはず。このまま順調にレベルが上がれば、【Excil】を使っても勝てるかどうか分からない。
あとは、ピンチに実力が発揮できないというメンタルさえ克服できれば言うことなし。
「お疲れさまです~! はいっ、タヒトさん」
弾むような声と共に差し出される水筒を受け取る。
「ありがとう、シズクちゃん」
「どういたしまして」
朝も早くから全開の笑みを浮かべるシズク・コトワリ。
何故彼女がここにいるかと言うと、ルーツと剣の稽古をする話になった際、突然「はい!」と手を挙げたのだ。
「私、マネージャーやります!」
「マネージャー!? シズクちゃん、部活じゃないんだから……」
「でも朝練ですよね? 朝練といえば部活、部活といえばマネージャーが必要だと思うんです。マネージャーのサポートが」
「うーん、そんなにお願いするようなことはなさそうだけど」
「いえいえありますよ。お水出したり、差し入れしたり……あとは、えーと時間を計ったり? 何なら、朝、お迎えに行きます!」
「いや、それはちょっと……」
「お願いします、ご迷惑はかけませんから!」
瞳をうるうるさせて迫るシズク。
何か違う気がするけど……
「……まぁいいか。じゃ、お願いします」
「わぁ! ありがとうございます!」
といった経緯でマネージャーに就任したのだった。
「はい、ルーツ君もお水」
「あっ、すみません」
「いいのいいの、遠慮しないで。はい、これは差し入れです」
そう言って手のひらより少し大きなサイズの木箱を差し出すシズク。
木箱の中には、薄くスライスされた果物が赤い液体に浸されて浮かんでいた。
「これは……」
「ハチミツレモン、作ってみました。どうぞ、召し上がれ」
血のように真っ赤な液体が、目の前でたぷんと音を立てる。
なかなかに見た目毒々しい差し入れ。
「ハチミツレモン……俺の知ってるものとは大分違う気がするけど」
「えへへ、レモンはなかったので、似た果物を使ってみました。結構探しましたよ~」
「ほうほう……この赤いのは?」
「イーリャです。タヒトさんも好きですよね? ハチミツもなくてどうしようかと思ったんですけど、イーリャジュースにお砂糖を混ぜるとそれっぽくなりました」
「へ、へぇ……」
それはもう既にハチミツレモンじゃなくて、別の何かだと思うんです……
イーリャとはこの世界で親しまれている、甘いニンジンのような味の果実だ。
確かに俺もジュースはよく飲むんだけど……
その禍々しいビジュアルに若干引き気味だが、食べない訳にはいかない。
こんな朝早くの稽古に付き合ってくれて、わざわざ差し入れまで用意してくれた女の子の厚意を無下にはできない。
すぐ傍でシズクちゃんの期待に満ちた眼差しも感じるし……
俺は思い切って果実の一枚を掴んで口に放り込んだ。
「……あれ? 美味い」
「本当ですか!?」
「うんうん。ちゃんとハチミツレモンしてるよ」
「ですよね!? ですよね!? 良かった~」
ほっと胸を撫でおろすシズク。実は本人も自信がなかったのかもね。
「ルーツ君も食べなよ。美味しいよ」
「食べて、食べて」
「はい、いただきます……んん、美味しい。とても酸っぱくて、甘くて……初めての味です」
「んふふ、青春の味だよっ」
ルーツも気に入ったようで、二人で次々摘まんで木箱はあっという間に空になった。
「御馳走様でした」
「ありがとね、シズクちゃん」
「いえいえ、マネージャーとしてこれくらいは当然です」
シズクはそう言って頷いてから、キョロキョロと辺りを見回し始めた。
「どうしたの?」
「いえ……せっかくなのでツララさんにも食べてもらいたかったなーなんて。だけど今日はもう、来なそうですね」
「……ああ、そうだね」
力なく同意して傍にある一本の木に目を移す。
この朝稽古は今日で四回目で、過去三回いずれもツララは顔を見せていた。
シズクのようにマネージャーに立候補した訳でもないし、こちらからお願いした訳でもないのだけれど、きっちり時間通りにやってきて、俺達が剣を振るっている様子をただじっと見ていたのだ。
ちょうど、あの木の下に座って、猫のユキを膝の上で撫でながら。
そんなツララが来ていない。これも、「あの夜」以降の変化の一つだ。
まずいね、これは。
それまで友達だと思っていた人でも、何となくすれ違って次第に疎遠になっていく……前の世界でよくあったパターンだ。
早く何とかしないと、取り返しのつかないことになる。
あの時のことは思い出せないし、直接聞く訳にもいかない。物凄い地雷を踏むかもしれないからな。
そのへんはもう考えても仕方ないし諦めよう。問題は今、これからどうするかだ。
打開策を考えていると、まだ諦められない様子で辺りを見渡しているシズクが目に入った。
……そうだ。女の子のことは、女の子に聞くのがよい。ルーツが席を外した隙に聞いてみた。
「ね、シズクちゃん」
「はい?」
「女の子って何をしてあげると喜ぶ?」
「えー! 何ですか、その質問。意味深ですね」
「あ、あんまり深く考えないで。例えばシズクちゃんだったら、何をされると嬉しいかな?」
「気になるなぁ。それって男の人にって意味ですか?」
「まぁ、そうだね」
「うわー、何だかドキドキしてきました。えーと、そうですね……やっぱり褒めてもらうと嬉しいです」
上目遣いで、少し照れたように言うシズク。
褒めるか。基本といえば基本だけど……ちょっと想像してみよう。
『ツララ、今の魔法凄かったな。流石賢者』
『今更でしょ。上から目線で言わないで』
……これじゃない。
『ツララは何でも知ってるな。流石賢者』
『あなたが無知なだけよ。少しは自分を省みなさい』
……これでもない。
『ツララって可愛いよね』
『気持ち悪い』
うぐぐ……ダメだ。
現在の負のイメージがべったりこびりついちゃってる。
「他には?」
「髪型とか服とか、ちょっとした違いに気が付いてくれると、見てくれてるんだって嬉しくなります」
「髪型かぁ」
髪型といえば……
『髪、切った?』
『切ってない』
既に失敗してた!
「他には?」
「いつも一緒にいてくれると嬉しいですね。お買い物とか、してみたいなぁ」
ほうほう、買い物に……
「ピクニックに行って、手作りのお弁当一緒に食べたり……」
お弁当に……
「二人っきりで、星を眺めるなんてのもロマンチックですよね……あぁ、いいなぁ」
星……
何ということでしょう。
既にやってしまったことばかりだ。困ったな……ついでにシズクちゃんがどこか遠くの世界に行きかけている。
「それでそれで、星空の下でプロポーズされて、指輪なんて貰ったり……キャー!」
おーい、シズクちゃん。戻っておいで。
「そうです!」
「どわっ!」
急にシズクが顔を寄せた。
「ゲンキンだと思われるかもしれませんけど、やっぱり形に残る物が欲しいです!」
「そ、そうなの?」
「はい、プレゼントです!」
「プレゼントか。案外、素直というか、単純だなぁ」
「女の子は単純なんです。少なくとも、私は単純ですよ」
「そうは見えないけど……」
「単純なんです! だから……期待しても、いいですか?」
「……へ?」
見上げる少女の目には、妙な熱がこもっていた。
何か地雷、踏んだ?
† † †
プレゼント……そんなことでツララの機嫌が直るなら、お安い御用だ。
幸いにも貯えはそこそこある。あとは何を贈るかだ。
稽古を終えて宿に戻ってきた。
とりあえず部屋でゆっくり考えようと二階へ上がろうとしたところ、宿屋の親父が俺を呼んだ。
「おう、タヒト。郵便が来てるぜ。ほれ」
そう言って両手に溢れんばかりの郵便物を見せる。
「これ、全部俺宛てですか?」
「そうだ。ま、ほとんどチラシみたいだがな」
「チラシ……こんなにも」
折り重なった紙の束には、「激安」の文字が躍っていた。
おお、これはある意味グッドタイミング。もしかしたら何か良い品があるかも。
親父からチラシを受け取り、ざっと目を通す。
なになに――
『一家に一つ、幸運を呼ぶ秘術を施した壺! 今なら激安500万マークぽっきり!!』
『もうポーションなんて要らない! どんな病気もたちまち治す恐るべき水! 一本280万マーク! 限定五十本! ※お一人様につき一本の販売となります』
『冒険者の間で大流行!? 装備するだけでレベル上昇速度が上がるという、噂のあの腕輪がついに《ルーデン》へ上陸! 777万マークより大好評販売中』
『天空城を探し隊、隊員求む!! 《ラフタ》のどこかに存在するという天空城――幻のあの国を見つけるのは、貴方だ! ※入隊費はレベルに関係なく一律50万マーク。お知り合いを紹介して頂き、その方が入隊すると20万マークの紹介料をお支払いいたします』
目眩がした。
壺に水に腕輪……効果は胡散臭いし、高すぎる。
最後のはなんだ、これ。異世界式ねずみ講か?
どこの世界も変わらないなー。
呆れ気味でチラシを眺めていると、親父が顔を近付けて小声で言った。
「タヒト……お前、おかしな噂でも広まってるんじゃねぇか?」
「噂?」
「ああ、チラシなんて金を貯め込んでる奴にしか届かねぇからな」
「まさか。そんなこと自分で言うはずないですし、噂を流すような人間とは関わってませんけど……」
何せ関係者が少ない。小金を貯め込んでいることは否定しないけど。
「そうか。ならいいけどな。だけど気を付けろよ。世の中には金のために何でもする奴が五万といるからな」
「分かりました、ありがとうございます」
心配してくれた親父に頭を下げて部屋へ戻る。
抱えた大量のチラシはゴミ箱へ。
おかしな噂、か。
親父にはああ言ったけど、落ち着いて考えると気になるな。
ちょうど狩りは休みで日中暇だし、ギルドにでも行って探りを入れてみますか。
† † †
「だからな、すげーんだって。モンスター共をばっさばっさ斬ってさ、あっという間に殲滅しちゃうから」
ギルドに入るなりコトワリ兄妹の兄ハジク・コトワリの声が聞こえた。椅子に腰かけて誰かと話をしているようだ。
「おいおい、ちょっと待て。確かあいつって魔法使いじゃなかったか? 魔法使いなのに剣を使うのか?」
ハジクの前に座っているのは、確かヤマダイという名の冒険者。これまで絡んだことはないが、彼も〈旅行者〉だったはず。
縦にも横にも大きな体で、椅子が小さく見える。
「そこが兄貴の恐ろしいところだぜ。魔法を温存して、あえて剣で戦ってるらしい。それであの強さだもんなー」
「んな阿呆な……本当は魔法がしょぼいんじゃねぇか?」
「阿呆はお前だ。兄貴が魔法を使っちまうと、草原のモンスターがいなくなっちまうかもしれないぜ? なんせ、あの〈ファトム・ラビット〉を狩り尽くしたらしいからな」
「あの幻の〈ファトム・ラビット〉を? 嘘だろ?」
「本当だって。証拠に兄貴の装備は上から下まで超高額品で固めてある。武器も何本も持ってるしな。あれは〈ファトム・ラビット〉の稼ぎで買ったに違いない」
「武器を幾つも……そりゃよっぽど金に余裕がないと無理だな」
「そういうこと。きっと莫大な資産を貯め込んで……あっ、兄貴!」
ハジクが俺に気付いたと同時に、俺も気が付いた――出所は、数少ない関係者の中にいたのだということを。
「ちょうどいいところに来てくれました。こいつに見せてやってくださいよ、兄貴の凄い装備を――痛っ」
ペシッと坊主頭を叩いてやった。
「個人情報を漏らすんじゃない。ところどころ話を盛ってるし、変な風に噂が広まるでしょ。その上、こんなに大声で」
「……あっ」
しまったという表情で口を塞ぐハジク。今更周りを気にしても遅いぞ。
「だ、だけど兄貴! 俺はただ、皆に兄貴の凄さを知らしめようと――」
「知らしめなくていいから。むしろ、知らしめないで。ややこしくなるから」
「す、すみません!」
勢いよく頭を下げるハジク。
反省しているようだが少し心配だ。人前で「兄貴」と呼ぶな、という話も忘れてるし。
「次に見かけたらシズクちゃんにお説教をお願いしてもらうので、覚えておくように」
「げっ!」
時にはお仕置きも必要なのだ。
仕方ない、日を改めよう。ま、当面は『スモール・ソード』があるから問題はないだろう。けれど、もしこの傷が見た目以上に深刻で、あとになって割れたりしたら嫌だな。
カシュンと隠し剣を出し入れしつつ傷を確認していると、その先の視線に気付いた。
「それ、杖なの?」
少女が立ち止まってこちらを見ている。なんだ、まだいたのか。
「ここで買った『ソード・ステッキ』だけど」
「へぇ……珍しい形。で、なんで杖なんか持ってるの?」
「魔法使いだからだよ! 見れば分かるだろ」
「へ? 本当に?」
疑いの眼差しを向ける少女。
「本当だよ!」
「見えないなぁ~。そんな格好の魔法使い、ぼく、見たことないよ」
「じゃあ、俺は一体何に見えるのさ?」
「うーん、召喚ほやほやで右も左も分からない医者か……現実を受け入れられない学者とか。いるんだよね、たまに。もしくはー……目立ちたがり屋か、不審者だね」
「ふ、不審者? それはちょっと言い過ぎでしょ?」
「割合で言うと、医者一割、学者一割、目立ちたがり屋一割で、不審者が七割かな」
「ほぼ不審者ってこと!?」
「あははっ、そーゆーこと」
堪えられないといった感じで少女が笑い出した。
目の前で揺れる少女の額。こんなにデコピンしたくなったのは生まれて初めてだ。
一発くらいはいいかもしれない……そう思っていると、少女の手が『ソード・ステッキ』へと伸びた。
「貸して」
「え? あ、あぁ」
少女はステッキを受け取ると、慎重な手つきで柄のほうからまじまじと見つめ始めた。
その表情に、今までのふざけた様子は見られない。しばらくして杖の傷まで辿り着いた彼女は、それを様々な角度から舐めるように眺め、ふーんと頷いた。
「これ、預かっとくよ」
「また急だな……預かるって、いつまで? ダハクさんが修理してくれるの?」
「ん~、ダハ爺、実はちょっと具合が悪くてね。今は奥で寝てるんだ」
「少し前に会った時は元気そうだったけど……風邪?」
「いやー……ま、歳だからさ。病気の一つや二つはあるよ」
「病気って……」
「やだなー、そんな深刻なもんじゃないって。ちょくちょく休むのは前からだし、すぐに良くなるよ」
あっけらかんと言う少女。
身近にいる彼女がそう言うのなら、そうなのかもしれない。
「これ、他所では扱ってない杖だと思うんだよね。だから修理はダハ爺に見てもらったほうがいいよ。起きたら言っておくからさ」
「それは助かるけど……ダハクさんにあまり無理させないでね」
「あははっ、分かってる」
果たしてこの子に任せて大丈夫だろうか、という若干の不安はある。少なくとも数分前の彼女で判断すると、答えはNOだろう。
だけど、あんな風に扱ってくれるのなら……大丈夫かな。
「杖は……大事にしないとね」
手にしたそれを撫でながら、少女は呟いた。
2 プレゼント
朝日を浴びてキラキラと輝く湖面を背景に、少年は剣を構える。
両刃の双剣を逆手に引いて十分に溜めを作った彼は、湖から吹き抜ける風を背に受けて地を蹴った。
瞬時に詰まる彼我の距離。
しかし、この感覚にはもう慣れた。
呼吸を乱すこともなく、ただ手にした『スモール・ソード』を突き放つ。
二つの刃が重なる。
――キィイイン!
静かな湖畔に甲高い金属音が鳴り響いた。
ここは《ルーデン》の西に位置する《レーニャの湖》。
何故かモンスターの現れないこの場所は、《ルーデン》の水瓶として機能する一方、今のところまともな攻撃魔法がない俺の、剣の稽古場でもある。
「ふぅ……お疲れさま」
「お疲れさまです! 今日もありがとうございました!」
サラサラの金髪が勢いよく落ちる。
この日本人顔負けの九十度のお辞儀をしているのは、異世界出身ルーツ・ブロード十五歳。俺の稽古相手だ。
「お礼を言いたいのはこっちだよ。ルーツ君の動きは凄く勉強になる」
「もう、タヒトさんはお上手ですね」
「いや、お世辞とかじゃなくて、本当だよ。速くてとても真似はできないけどね」
「全然勝てる気がしないのですけど……」
それは俺が【Excil】を使っているからだ。
【Excil】で彼の動きの全てを予測しているから、どんな攻撃でも捌ける。だけど……
「すぐに勝てるようになるよ」
「あははっ、頑張ります」
ルーツは笑って受け流すが、それは俺の本心だった。
というのも、彼の動きは本当に速いのだ。とてもレベル6……まして「無職」とは思えない速さの攻撃を繰り出す。
それはあの騎士団長ルーカスを思わせるほどの速さ……はちょっと言い過ぎか。いずれにしろ、物凄い力を秘めているはず。このまま順調にレベルが上がれば、【Excil】を使っても勝てるかどうか分からない。
あとは、ピンチに実力が発揮できないというメンタルさえ克服できれば言うことなし。
「お疲れさまです~! はいっ、タヒトさん」
弾むような声と共に差し出される水筒を受け取る。
「ありがとう、シズクちゃん」
「どういたしまして」
朝も早くから全開の笑みを浮かべるシズク・コトワリ。
何故彼女がここにいるかと言うと、ルーツと剣の稽古をする話になった際、突然「はい!」と手を挙げたのだ。
「私、マネージャーやります!」
「マネージャー!? シズクちゃん、部活じゃないんだから……」
「でも朝練ですよね? 朝練といえば部活、部活といえばマネージャーが必要だと思うんです。マネージャーのサポートが」
「うーん、そんなにお願いするようなことはなさそうだけど」
「いえいえありますよ。お水出したり、差し入れしたり……あとは、えーと時間を計ったり? 何なら、朝、お迎えに行きます!」
「いや、それはちょっと……」
「お願いします、ご迷惑はかけませんから!」
瞳をうるうるさせて迫るシズク。
何か違う気がするけど……
「……まぁいいか。じゃ、お願いします」
「わぁ! ありがとうございます!」
といった経緯でマネージャーに就任したのだった。
「はい、ルーツ君もお水」
「あっ、すみません」
「いいのいいの、遠慮しないで。はい、これは差し入れです」
そう言って手のひらより少し大きなサイズの木箱を差し出すシズク。
木箱の中には、薄くスライスされた果物が赤い液体に浸されて浮かんでいた。
「これは……」
「ハチミツレモン、作ってみました。どうぞ、召し上がれ」
血のように真っ赤な液体が、目の前でたぷんと音を立てる。
なかなかに見た目毒々しい差し入れ。
「ハチミツレモン……俺の知ってるものとは大分違う気がするけど」
「えへへ、レモンはなかったので、似た果物を使ってみました。結構探しましたよ~」
「ほうほう……この赤いのは?」
「イーリャです。タヒトさんも好きですよね? ハチミツもなくてどうしようかと思ったんですけど、イーリャジュースにお砂糖を混ぜるとそれっぽくなりました」
「へ、へぇ……」
それはもう既にハチミツレモンじゃなくて、別の何かだと思うんです……
イーリャとはこの世界で親しまれている、甘いニンジンのような味の果実だ。
確かに俺もジュースはよく飲むんだけど……
その禍々しいビジュアルに若干引き気味だが、食べない訳にはいかない。
こんな朝早くの稽古に付き合ってくれて、わざわざ差し入れまで用意してくれた女の子の厚意を無下にはできない。
すぐ傍でシズクちゃんの期待に満ちた眼差しも感じるし……
俺は思い切って果実の一枚を掴んで口に放り込んだ。
「……あれ? 美味い」
「本当ですか!?」
「うんうん。ちゃんとハチミツレモンしてるよ」
「ですよね!? ですよね!? 良かった~」
ほっと胸を撫でおろすシズク。実は本人も自信がなかったのかもね。
「ルーツ君も食べなよ。美味しいよ」
「食べて、食べて」
「はい、いただきます……んん、美味しい。とても酸っぱくて、甘くて……初めての味です」
「んふふ、青春の味だよっ」
ルーツも気に入ったようで、二人で次々摘まんで木箱はあっという間に空になった。
「御馳走様でした」
「ありがとね、シズクちゃん」
「いえいえ、マネージャーとしてこれくらいは当然です」
シズクはそう言って頷いてから、キョロキョロと辺りを見回し始めた。
「どうしたの?」
「いえ……せっかくなのでツララさんにも食べてもらいたかったなーなんて。だけど今日はもう、来なそうですね」
「……ああ、そうだね」
力なく同意して傍にある一本の木に目を移す。
この朝稽古は今日で四回目で、過去三回いずれもツララは顔を見せていた。
シズクのようにマネージャーに立候補した訳でもないし、こちらからお願いした訳でもないのだけれど、きっちり時間通りにやってきて、俺達が剣を振るっている様子をただじっと見ていたのだ。
ちょうど、あの木の下に座って、猫のユキを膝の上で撫でながら。
そんなツララが来ていない。これも、「あの夜」以降の変化の一つだ。
まずいね、これは。
それまで友達だと思っていた人でも、何となくすれ違って次第に疎遠になっていく……前の世界でよくあったパターンだ。
早く何とかしないと、取り返しのつかないことになる。
あの時のことは思い出せないし、直接聞く訳にもいかない。物凄い地雷を踏むかもしれないからな。
そのへんはもう考えても仕方ないし諦めよう。問題は今、これからどうするかだ。
打開策を考えていると、まだ諦められない様子で辺りを見渡しているシズクが目に入った。
……そうだ。女の子のことは、女の子に聞くのがよい。ルーツが席を外した隙に聞いてみた。
「ね、シズクちゃん」
「はい?」
「女の子って何をしてあげると喜ぶ?」
「えー! 何ですか、その質問。意味深ですね」
「あ、あんまり深く考えないで。例えばシズクちゃんだったら、何をされると嬉しいかな?」
「気になるなぁ。それって男の人にって意味ですか?」
「まぁ、そうだね」
「うわー、何だかドキドキしてきました。えーと、そうですね……やっぱり褒めてもらうと嬉しいです」
上目遣いで、少し照れたように言うシズク。
褒めるか。基本といえば基本だけど……ちょっと想像してみよう。
『ツララ、今の魔法凄かったな。流石賢者』
『今更でしょ。上から目線で言わないで』
……これじゃない。
『ツララは何でも知ってるな。流石賢者』
『あなたが無知なだけよ。少しは自分を省みなさい』
……これでもない。
『ツララって可愛いよね』
『気持ち悪い』
うぐぐ……ダメだ。
現在の負のイメージがべったりこびりついちゃってる。
「他には?」
「髪型とか服とか、ちょっとした違いに気が付いてくれると、見てくれてるんだって嬉しくなります」
「髪型かぁ」
髪型といえば……
『髪、切った?』
『切ってない』
既に失敗してた!
「他には?」
「いつも一緒にいてくれると嬉しいですね。お買い物とか、してみたいなぁ」
ほうほう、買い物に……
「ピクニックに行って、手作りのお弁当一緒に食べたり……」
お弁当に……
「二人っきりで、星を眺めるなんてのもロマンチックですよね……あぁ、いいなぁ」
星……
何ということでしょう。
既にやってしまったことばかりだ。困ったな……ついでにシズクちゃんがどこか遠くの世界に行きかけている。
「それでそれで、星空の下でプロポーズされて、指輪なんて貰ったり……キャー!」
おーい、シズクちゃん。戻っておいで。
「そうです!」
「どわっ!」
急にシズクが顔を寄せた。
「ゲンキンだと思われるかもしれませんけど、やっぱり形に残る物が欲しいです!」
「そ、そうなの?」
「はい、プレゼントです!」
「プレゼントか。案外、素直というか、単純だなぁ」
「女の子は単純なんです。少なくとも、私は単純ですよ」
「そうは見えないけど……」
「単純なんです! だから……期待しても、いいですか?」
「……へ?」
見上げる少女の目には、妙な熱がこもっていた。
何か地雷、踏んだ?
† † †
プレゼント……そんなことでツララの機嫌が直るなら、お安い御用だ。
幸いにも貯えはそこそこある。あとは何を贈るかだ。
稽古を終えて宿に戻ってきた。
とりあえず部屋でゆっくり考えようと二階へ上がろうとしたところ、宿屋の親父が俺を呼んだ。
「おう、タヒト。郵便が来てるぜ。ほれ」
そう言って両手に溢れんばかりの郵便物を見せる。
「これ、全部俺宛てですか?」
「そうだ。ま、ほとんどチラシみたいだがな」
「チラシ……こんなにも」
折り重なった紙の束には、「激安」の文字が躍っていた。
おお、これはある意味グッドタイミング。もしかしたら何か良い品があるかも。
親父からチラシを受け取り、ざっと目を通す。
なになに――
『一家に一つ、幸運を呼ぶ秘術を施した壺! 今なら激安500万マークぽっきり!!』
『もうポーションなんて要らない! どんな病気もたちまち治す恐るべき水! 一本280万マーク! 限定五十本! ※お一人様につき一本の販売となります』
『冒険者の間で大流行!? 装備するだけでレベル上昇速度が上がるという、噂のあの腕輪がついに《ルーデン》へ上陸! 777万マークより大好評販売中』
『天空城を探し隊、隊員求む!! 《ラフタ》のどこかに存在するという天空城――幻のあの国を見つけるのは、貴方だ! ※入隊費はレベルに関係なく一律50万マーク。お知り合いを紹介して頂き、その方が入隊すると20万マークの紹介料をお支払いいたします』
目眩がした。
壺に水に腕輪……効果は胡散臭いし、高すぎる。
最後のはなんだ、これ。異世界式ねずみ講か?
どこの世界も変わらないなー。
呆れ気味でチラシを眺めていると、親父が顔を近付けて小声で言った。
「タヒト……お前、おかしな噂でも広まってるんじゃねぇか?」
「噂?」
「ああ、チラシなんて金を貯め込んでる奴にしか届かねぇからな」
「まさか。そんなこと自分で言うはずないですし、噂を流すような人間とは関わってませんけど……」
何せ関係者が少ない。小金を貯め込んでいることは否定しないけど。
「そうか。ならいいけどな。だけど気を付けろよ。世の中には金のために何でもする奴が五万といるからな」
「分かりました、ありがとうございます」
心配してくれた親父に頭を下げて部屋へ戻る。
抱えた大量のチラシはゴミ箱へ。
おかしな噂、か。
親父にはああ言ったけど、落ち着いて考えると気になるな。
ちょうど狩りは休みで日中暇だし、ギルドにでも行って探りを入れてみますか。
† † †
「だからな、すげーんだって。モンスター共をばっさばっさ斬ってさ、あっという間に殲滅しちゃうから」
ギルドに入るなりコトワリ兄妹の兄ハジク・コトワリの声が聞こえた。椅子に腰かけて誰かと話をしているようだ。
「おいおい、ちょっと待て。確かあいつって魔法使いじゃなかったか? 魔法使いなのに剣を使うのか?」
ハジクの前に座っているのは、確かヤマダイという名の冒険者。これまで絡んだことはないが、彼も〈旅行者〉だったはず。
縦にも横にも大きな体で、椅子が小さく見える。
「そこが兄貴の恐ろしいところだぜ。魔法を温存して、あえて剣で戦ってるらしい。それであの強さだもんなー」
「んな阿呆な……本当は魔法がしょぼいんじゃねぇか?」
「阿呆はお前だ。兄貴が魔法を使っちまうと、草原のモンスターがいなくなっちまうかもしれないぜ? なんせ、あの〈ファトム・ラビット〉を狩り尽くしたらしいからな」
「あの幻の〈ファトム・ラビット〉を? 嘘だろ?」
「本当だって。証拠に兄貴の装備は上から下まで超高額品で固めてある。武器も何本も持ってるしな。あれは〈ファトム・ラビット〉の稼ぎで買ったに違いない」
「武器を幾つも……そりゃよっぽど金に余裕がないと無理だな」
「そういうこと。きっと莫大な資産を貯め込んで……あっ、兄貴!」
ハジクが俺に気付いたと同時に、俺も気が付いた――出所は、数少ない関係者の中にいたのだということを。
「ちょうどいいところに来てくれました。こいつに見せてやってくださいよ、兄貴の凄い装備を――痛っ」
ペシッと坊主頭を叩いてやった。
「個人情報を漏らすんじゃない。ところどころ話を盛ってるし、変な風に噂が広まるでしょ。その上、こんなに大声で」
「……あっ」
しまったという表情で口を塞ぐハジク。今更周りを気にしても遅いぞ。
「だ、だけど兄貴! 俺はただ、皆に兄貴の凄さを知らしめようと――」
「知らしめなくていいから。むしろ、知らしめないで。ややこしくなるから」
「す、すみません!」
勢いよく頭を下げるハジク。
反省しているようだが少し心配だ。人前で「兄貴」と呼ぶな、という話も忘れてるし。
「次に見かけたらシズクちゃんにお説教をお願いしてもらうので、覚えておくように」
「げっ!」
時にはお仕置きも必要なのだ。
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