自己満足が世界を変える時、僕は……。

よーじろー

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一章

巻き込まれてしまった時、僕は……~Part6~

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 柊木雪乃ひいらぎゆきのは我が柊木学園の現生徒会長であり、理事長の孫、さらに言えば、柊木流剣道の師範を父に持つ女性である。
 そんな環境で育ってきたせいか、彼女は曲がったことを何よりも嫌う。
 第一ボタンが開いていれば強引にでも閉めさせるし、髪を染めている生徒がいたらその場で自ら黒く染め直す。化粧をしている生徒がいたら強引にでも落とさせる。筋の通らない行いをしていたら殴ってでも止めさせる。
 そんな少しの融通も利かない奴だ。そんな奴がもし僕の倒れた経緯を知ったら、たとえ幼馴染である僕であっても容赦はしないだろう。間違いなく、一生逆らえないような苦しみを身体と心に植えつけられる。
 そう考えると……震えとともに冷や汗が止まらない。今回ばかりは月島先生と扉の向こうで抑えてくれている神居先生に感謝だ。うん、本当にありがとう。
「そういうことだから、おとなしくそこにある本でも読んで待ってなさい」
「……本、ですか?」
「何? 不満?」
 電話越しに妙な威圧を感じる。
「はい。分かりました。ええっと……どれがいいですかね?」
「相川真琴の〝居心地の良い鳥籠〟なんてどうかしら?」
 あらかじめ用意されていたかのような速さに違和感っを覚えながら手に取る。
「ああ、それならここにありますね」
「……そう」
「でも、これ、面白くなさ」
「そうなんだ。陸奥くんはお姉さんに余程殺して欲しいのね。分かったわ。じゃあ帰ったらお望み通り……って、あっ、こら、ちょっと待ちなさい! こらっ! …………ごめんね、続きは後で。それじゃあ」
 
 ――――ブツ、ツーツーツー…………。
 
 その続きを言う間もなく一方的に電話は切られ、僕の額にまた別の意味で冷や汗が浮く。喉も乾いてきた。普通の人なら冗談で片づけられることも、あの月島先生なら本気でやりかねない。というより、どうしてこの本が面白くなさそうと言おうとしただけなのに、殺人予告をされなくてはいけないのだろうか……考えたところでさっぱり分からなかった。
 まさに前門の虎後門の狼。逃げ場はどこにもない。
 それなら、動いてみよう。来たる死をただ待つよりは行動して雪乃を説得した方が何パーセントかは建設的だ。鳴かぬなら鳴かせてみるまでだよな、秀吉さん。
 そう思い、扉の取っ手に触れた瞬間。
「ばねうじゃぎゅぎゃうちぇるうじつばだだこま!」
 凄まじい電気が僕を襲った。身体は痙攣し離そうと思っても言うことを聞かず、離すことができない。このまま死んでしまうのか、と本気で覚悟したが、それも一瞬で電気はすぐに止まった。
 
 ――――ウガー、ウウー…………。
 
 そして、鳴る。
「だから言ったじゃない」
「あ、あ、あんたは、お、お、お、鬼か!」
「死ななくてよかったわね。でも、次はもっと強く流れるようになってるから、くれぐれも気を付けてね。ばいばい」
 それだけ言って電話は切れた。
 学校の一室に隠しトイレや盗撮用のカメラを仕掛けるだけじゃなく、ドアに触ると電気が流れる仕掛けまでしていたとは……というより、さっきは流れなかったのに、どうしてだろうか? 疑問もさることながら、この人が先生でこの学校は大丈夫なのだろうか、といち生徒ながら心配してしまう。
 結局、この部屋から出ることは出来ない。それどころか生死の境を彷徨う仕掛けのある部屋に閉じ込められている。
 
 ――どうして僕はこんなことをしているんだろう。
 
 再度深いため息を吐く。この人と関わっているとこれが癖になってしまいそうで怖い……はあー。
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