自己満足が世界を変える時、僕は……。

よーじろー

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二章

最悪な出会いを果たした時、僕は……~Part6~

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 ――――木曜日――――

「それは、災難だったわね」
 煙草の煙をたゆたせながら月島先生が答える。
 一日一回の現状報告を済ませると、自然と息が漏れる。
「疲れてるわね。大丈夫?」
 僕を心配するような体裁を整えるが、声のトーンは何も変わらない。それどころか、煙草を咥えたまま目はスマホから離れない。
 
 ――誰のせいだ、誰の!
 
 喉元まで出かかった言葉を飲み込み立ち上がる。
 足に上手く力が入らない。一日で一ヶ月くらいの疲れを一気に感じているようだった。
 歩を扉に向け一歩踏み出す。
「あっ、ちょっと待ちなさい」
 そう言って先生がテーブルの上に置いてあった雑誌を僕の足元に投げる。
「先生、これは」
「あの子が大好きな雑誌よ」
 雑誌を拾い上げ、そのタイトルに愕然とする。

『月刊爆撃プロレス――ジャイアント海馬の軌跡――』

 プロレスは詳しくないしそこまで興味もないが、そんな僕でもジャイアント海馬は知っている。現在の日本プロレスを作り上げた人物と言って決して過言ではないほど、日本プロレス界にとって偉大な人物だ。
「あの子はね、プロレスが大好きなのよ。だから、これで何とかしなさい」
 先生に言われてなお、信じがたい。
 固定観念で物事を見ることはしたくないが、あの香椎茉莉がプロレスを……どう考えても結びつかない単語の組み合わせだ。
 そんな僕の表情を読み取り、先生が言葉を継ぐ。
「安心しなさい。これは確かな情報だから」
 そう言って、先生は相変わらず僕の顔を見ずに煙を吐き出す。
 換気扇をつけてあるが、それでも充満する匂いは消えない。
「……ありがとうございます」
 扉を開け本の山で囲まれた部屋を後にする。
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