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11. 迷い道③
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駅に着き、さすがにおんぶはまずいから、僕は先生の背中から降ろしてもらうと、おぼつかない足取りで歩きはじめた。電車の中も、マンションまでの道のりも、ずっと無言だった。
先生の家に戻ると、先生はお風呂で僕を丁寧に洗ってくれた。僕の体に残った他人の痕跡を見て先生はどう思う。その顔はいつも通りの無表情で僕には感情を読み取ることができない。シャワーの湯気が悲しく見えた。
居間に戻ると先生がホットココアを入れてくれた。優しい味に少しほっとする。
「私が君の心を見誤った、すまなかった……。」
何故、先生はそんなに冷静なのだろう。先生はいつも冷めていて、僕だけが感情的になっている気がする。それが悲しくて、憎まれ口を叩いてしまう。
「先生、怒らないんですか?ハハ、僕には怒るほどの価値もないのかな。」
「そうじゃない、そうじゃないよ!」
その口調から先生の一所懸命さが伝わってきた。
「私だって君がかわいい、君が他人にどうこうされるなんて考えたくもない……でもね、思ってしまったんだよ、ズタボロになって横たわる君を見たとき、本当に淫靡で美しいとね。ぞくぞくしたよ!ああ、でも、やっぱり嫌だよ!君が他の奴らの手に堕ちるのを想像すると胸がドス黒くなる。それなのに、恍惚とするものがあったのは否定できない。だから、私に君を怒る資格はないよ。こんな私は嫌かい?」
先生の気持ちが分かる気がした。先生は本質的にはマゾヒストなのかもしれない。
「……僕も……僕もなんです。気持ち悪くて嫌なのに……いや、それだからこそ、先生では絶対に与えられない恥辱に、僕は……!。」
「ふふ、君のそういうところ素敵だと思うよ。しかし、こんなことは今回限りだ。君はもっと自分を大切にすべきだよ。特に、不特定多数は病気のリスクが高いんだからね。」
「ごめんなさい……ごめんなさい……。」
僕は再び泣いてしまった。
先生は僕が泣き止むまで背中をさすってくれた。
落ち着きを取り戻してホットココアに口をつけると既に冷めてしまっていた。先生はそんな僕の様子を確認すると遠慮がちに言った。
「佐藤君と私のこと、そんなに気になるかい?」
そもそもこれが今回のきっかけなのだ。
「私は変わらず君も大切なんだよ。信じてほしい。」
「不安なんです。先生を信じられないのじゃなくて、自分を信じられないのかもしれません。だって、昔から嫌われ者だし、母さんだって僕を邪魔に思ってる。父さんだって……前に親が離婚していること話しましたよね、小さいころは父さんのことが大好きだった。だけど、離婚したらなんにもなくなっちゃった。一度も会っていないし、養育費だってもらってない。だから、父さんも僕のこと好きじゃなかったのかもと思ってしまう。そんな僕が誰かから好かれるなんて間違いみたいな気がいつもする。」
「なるほどね、でも、世間は君が思うほど君を嫌っちゃいないと思うし、少なくとも私は君が好きだよ。そうだ、君、佐藤君と友達になったらどうだい!」
この人は何を急に言いだすのだろう。僕は驚いて目をまん丸にした。
「西田君、君には同年代の友人が必要なんじゃないかな。あるいは恋人になるのもいいと思うよ。」
「先生、何言ってんですか。僕、ああいうタイプ苦手。それに彼だって嫌でしょ。」
「そうかなぁ、案外似ていると思うよ、君と彼。うん、私は私の愛する二人が互いに愛し合ってくれたら嬉しいな。愛が増えるというのは、悦びも増えるからね。ふふ。」
そういうものなのだろうか?僕にはまだその心境は分からない。分かるときなど来るのだろうか。僕は普段の佐藤君とあの時の佐藤君を思い出して、ため息をついた。
先生の家に戻ると、先生はお風呂で僕を丁寧に洗ってくれた。僕の体に残った他人の痕跡を見て先生はどう思う。その顔はいつも通りの無表情で僕には感情を読み取ることができない。シャワーの湯気が悲しく見えた。
居間に戻ると先生がホットココアを入れてくれた。優しい味に少しほっとする。
「私が君の心を見誤った、すまなかった……。」
何故、先生はそんなに冷静なのだろう。先生はいつも冷めていて、僕だけが感情的になっている気がする。それが悲しくて、憎まれ口を叩いてしまう。
「先生、怒らないんですか?ハハ、僕には怒るほどの価値もないのかな。」
「そうじゃない、そうじゃないよ!」
その口調から先生の一所懸命さが伝わってきた。
「私だって君がかわいい、君が他人にどうこうされるなんて考えたくもない……でもね、思ってしまったんだよ、ズタボロになって横たわる君を見たとき、本当に淫靡で美しいとね。ぞくぞくしたよ!ああ、でも、やっぱり嫌だよ!君が他の奴らの手に堕ちるのを想像すると胸がドス黒くなる。それなのに、恍惚とするものがあったのは否定できない。だから、私に君を怒る資格はないよ。こんな私は嫌かい?」
先生の気持ちが分かる気がした。先生は本質的にはマゾヒストなのかもしれない。
「……僕も……僕もなんです。気持ち悪くて嫌なのに……いや、それだからこそ、先生では絶対に与えられない恥辱に、僕は……!。」
「ふふ、君のそういうところ素敵だと思うよ。しかし、こんなことは今回限りだ。君はもっと自分を大切にすべきだよ。特に、不特定多数は病気のリスクが高いんだからね。」
「ごめんなさい……ごめんなさい……。」
僕は再び泣いてしまった。
先生は僕が泣き止むまで背中をさすってくれた。
落ち着きを取り戻してホットココアに口をつけると既に冷めてしまっていた。先生はそんな僕の様子を確認すると遠慮がちに言った。
「佐藤君と私のこと、そんなに気になるかい?」
そもそもこれが今回のきっかけなのだ。
「私は変わらず君も大切なんだよ。信じてほしい。」
「不安なんです。先生を信じられないのじゃなくて、自分を信じられないのかもしれません。だって、昔から嫌われ者だし、母さんだって僕を邪魔に思ってる。父さんだって……前に親が離婚していること話しましたよね、小さいころは父さんのことが大好きだった。だけど、離婚したらなんにもなくなっちゃった。一度も会っていないし、養育費だってもらってない。だから、父さんも僕のこと好きじゃなかったのかもと思ってしまう。そんな僕が誰かから好かれるなんて間違いみたいな気がいつもする。」
「なるほどね、でも、世間は君が思うほど君を嫌っちゃいないと思うし、少なくとも私は君が好きだよ。そうだ、君、佐藤君と友達になったらどうだい!」
この人は何を急に言いだすのだろう。僕は驚いて目をまん丸にした。
「西田君、君には同年代の友人が必要なんじゃないかな。あるいは恋人になるのもいいと思うよ。」
「先生、何言ってんですか。僕、ああいうタイプ苦手。それに彼だって嫌でしょ。」
「そうかなぁ、案外似ていると思うよ、君と彼。うん、私は私の愛する二人が互いに愛し合ってくれたら嬉しいな。愛が増えるというのは、悦びも増えるからね。ふふ。」
そういうものなのだろうか?僕にはまだその心境は分からない。分かるときなど来るのだろうか。僕は普段の佐藤君とあの時の佐藤君を思い出して、ため息をついた。
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