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14. 落花流水①
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中間考査が終わって少し心が軽くなって、そんな楽しい時期だというのに、俺はちっとも心が軽くならない。
西田の家で勉強した日、俺はひどいことをしてしまった。挑発されたからといって、それに乗っていいわけではない。俺は自分がもっと理性的な人間だと思っていたが、そうではなかったらしい。
俺は西田のことをどう思っているのか自分でも分からなくなってしまった。友達になりたいと本当に思っていた。きっかけは橘先生に言われたからにせよ、それ以前から気になる存在ではあったのだ。無口でいつも一人でいて、それでいて俺にとっては妙に存在感があった。それは、もしかしたら、心のどこかで彼を羨ましいと思っていたからかもしれない。周りが自分に対して持っているイメージを崩さないように気をつけて生活している俺と違って、ある意味、自由に見えたから。西田は友達がいないと卑下するが、果たして俺にだって友達がいるのだろうか。ただ雑談する相手がそれなりにいるというだけのような気もする。しかも、その雑談のために興味のないテレビ番組を見てみたり歌を聞いてみたり、バカバカしいと思う。でも俺はそれをやめる勇気がない。
西田のことが知りたい。友達になりたい。でも、欲情もしてしまう。それは橘先生と西田の情事を見てしまったからだと思っていた。でも、それだけではないのだと分かってしまった。だから、あの時「また!」と言ったのに、西田を避けてしまう。彼が嬉しいと言ってくれたのが俺も嬉しかったのに。
二限目は化学の授業だ。橘先生の授業……自動的に西田のことを考えてしまう。もやもやとした気持ちを抱えながら化学室へ移動していた。
「佐藤?なんか暗いよ。ひょっとして化学のテスト、ダメそう!?」
伊藤が俺をからかってきた。相手をする気になれず生返事ですませた。今日は中間考査が返却されるんだった。
チャイムが鳴り授業が始まる。橘先生が一人ずつ名前を呼んで答案用紙を返却していく。受け取った生徒の表情はまさに悲喜こもごもだ。俺の名前が呼ばれた。黒板の前に立つ先生のもとに受け取りに行く。先生が答案用紙を俺に手渡した。点数は84点、まあまあだな。自分の席に戻ると正誤を確認する。表に目を通し終わって裏返すと、赤ペンで先生からのメッセージと先生のお宅の住所が書かれていることに気がついた。
『今週末の日曜日午前10時に私の家に来るように』
先生の家!否が応でも俺の胸は高鳴った。先生は何をたくらんでいるのだろう。
西田のほうを見る。うつむき加減で前髪が垂れている。目元が隠れて表情は分からない。相変わらずきれいな髪だなと思った。また友達ごっこができるだろうか……。
西田の家で勉強した日、俺はひどいことをしてしまった。挑発されたからといって、それに乗っていいわけではない。俺は自分がもっと理性的な人間だと思っていたが、そうではなかったらしい。
俺は西田のことをどう思っているのか自分でも分からなくなってしまった。友達になりたいと本当に思っていた。きっかけは橘先生に言われたからにせよ、それ以前から気になる存在ではあったのだ。無口でいつも一人でいて、それでいて俺にとっては妙に存在感があった。それは、もしかしたら、心のどこかで彼を羨ましいと思っていたからかもしれない。周りが自分に対して持っているイメージを崩さないように気をつけて生活している俺と違って、ある意味、自由に見えたから。西田は友達がいないと卑下するが、果たして俺にだって友達がいるのだろうか。ただ雑談する相手がそれなりにいるというだけのような気もする。しかも、その雑談のために興味のないテレビ番組を見てみたり歌を聞いてみたり、バカバカしいと思う。でも俺はそれをやめる勇気がない。
西田のことが知りたい。友達になりたい。でも、欲情もしてしまう。それは橘先生と西田の情事を見てしまったからだと思っていた。でも、それだけではないのだと分かってしまった。だから、あの時「また!」と言ったのに、西田を避けてしまう。彼が嬉しいと言ってくれたのが俺も嬉しかったのに。
二限目は化学の授業だ。橘先生の授業……自動的に西田のことを考えてしまう。もやもやとした気持ちを抱えながら化学室へ移動していた。
「佐藤?なんか暗いよ。ひょっとして化学のテスト、ダメそう!?」
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チャイムが鳴り授業が始まる。橘先生が一人ずつ名前を呼んで答案用紙を返却していく。受け取った生徒の表情はまさに悲喜こもごもだ。俺の名前が呼ばれた。黒板の前に立つ先生のもとに受け取りに行く。先生が答案用紙を俺に手渡した。点数は84点、まあまあだな。自分の席に戻ると正誤を確認する。表に目を通し終わって裏返すと、赤ペンで先生からのメッセージと先生のお宅の住所が書かれていることに気がついた。
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先生の家!否が応でも俺の胸は高鳴った。先生は何をたくらんでいるのだろう。
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