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45. 交換日記②
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俺たちは学校から少し離れた大型の文具店にやってきた。ここに来るまで、特に学校の敷地内での西田は、人目を気にしておどおどしていた。無理をさせてしまったと反省する気持ちと、俺といるのを見られるのがそんなに嫌なのだろうかと少しだけ腹立たしい気持ちとで複雑だ。
いずれ日記で君が人を避ける理由を聞いてみようか。面と向かっては聞きにくいことでも、文字でなら聞けそうな気がする。
店内に入ると客は少なかった。西田は少しほっとしたのか表情が柔らかくなった。
「俺、いつもここでノートとか買ってるんだ。」
「僕も、品揃え最強だよね。」
「日記帳はどこにあるかな。」
とりあえずノート売り場に行って見渡すと、隣の便箋売り場の更に隣に日記帳やアルバムが置いてあるのが見えた。
「結構たくさんあるね。」
「日記帳なんて見ないから知らなかった。」
「佐藤君、見てこれ三年日記だって、同じ日付が三年分並んでるから、過去の同じ日に何してたか分かるんだ、面白いね。」
「西田、これなんかどうかな?」
「えー、花柄でかわいすぎない?やっぱ君って乙女だね、ふふ。」
二人して吟味していると突然、女性に呼びかけられた。
「佐藤君!」
声の主は青木さんだった。同じクラスの女子だ。特に親しいわけではないが、たまに雑談くらいはする間柄だ。彼女は明朗快活で誰からも好かれるタイプだ。
「あれ、西田君も……佐藤君は西田君と仲良かったんだ!」
「まあね、たまに一緒に勉強するんだ。」
本当はもっといろんなことをしているが、とても言えない。横目で西田を見ると、和やかな雰囲気は消え去り、こわばっている。早く会話を切り上げたい。
「そうなんだ。クラスでしゃべっているのを見ないから全然知らなかった。かわいい日記帳だね、妹さんに?」
「まあ、そんなとこ。」
「そっか、私はシャーペンの芯を買って帰るとこ。じゃあね、また明日。」
「じゃあ。」
俺も緊張していたらしい。青木さんが立ち去ると、どっと疲れた。西田はまだ表情が硬かった。俺は青木さんの姿が完全に見えなくなったのを確認してから西田に話しかけた。
「西田はどのデザインが好き?」
「これかな。」
西田はシンプルな紺色の表紙の日記帳を差し出した。表紙には金の箔押しで"diary"と記されており、ハードカバーの質感と相まって値段の割に高級感がある。
「すごくいいと思う。それにしよう。」
「さっきの花柄のは?」
「あれは妹用だから。」
「ふふ。」
西田が笑ってくれたので俺は安堵した。
やっぱり文字でなんて言わずに直接聞こう。もう少し西田と話したい。
「これ買ったら、もう少し俺に付き合ってくれる?君ともう少ししゃべりたい。」
「いいよ。どうせ母さんの帰りも遅いし。」
俺たちはレジで支払いをすませて外に出た。
「どこ行く?うちに来る?」
「初めて、初めて俺が西田を呼び出した河原がいいな。」
「分かった。」
停めておいた自転車に乗ると、俺たちは河原に向かった。
いずれ日記で君が人を避ける理由を聞いてみようか。面と向かっては聞きにくいことでも、文字でなら聞けそうな気がする。
店内に入ると客は少なかった。西田は少しほっとしたのか表情が柔らかくなった。
「俺、いつもここでノートとか買ってるんだ。」
「僕も、品揃え最強だよね。」
「日記帳はどこにあるかな。」
とりあえずノート売り場に行って見渡すと、隣の便箋売り場の更に隣に日記帳やアルバムが置いてあるのが見えた。
「結構たくさんあるね。」
「日記帳なんて見ないから知らなかった。」
「佐藤君、見てこれ三年日記だって、同じ日付が三年分並んでるから、過去の同じ日に何してたか分かるんだ、面白いね。」
「西田、これなんかどうかな?」
「えー、花柄でかわいすぎない?やっぱ君って乙女だね、ふふ。」
二人して吟味していると突然、女性に呼びかけられた。
「佐藤君!」
声の主は青木さんだった。同じクラスの女子だ。特に親しいわけではないが、たまに雑談くらいはする間柄だ。彼女は明朗快活で誰からも好かれるタイプだ。
「あれ、西田君も……佐藤君は西田君と仲良かったんだ!」
「まあね、たまに一緒に勉強するんだ。」
本当はもっといろんなことをしているが、とても言えない。横目で西田を見ると、和やかな雰囲気は消え去り、こわばっている。早く会話を切り上げたい。
「そうなんだ。クラスでしゃべっているのを見ないから全然知らなかった。かわいい日記帳だね、妹さんに?」
「まあ、そんなとこ。」
「そっか、私はシャーペンの芯を買って帰るとこ。じゃあね、また明日。」
「じゃあ。」
俺も緊張していたらしい。青木さんが立ち去ると、どっと疲れた。西田はまだ表情が硬かった。俺は青木さんの姿が完全に見えなくなったのを確認してから西田に話しかけた。
「西田はどのデザインが好き?」
「これかな。」
西田はシンプルな紺色の表紙の日記帳を差し出した。表紙には金の箔押しで"diary"と記されており、ハードカバーの質感と相まって値段の割に高級感がある。
「すごくいいと思う。それにしよう。」
「さっきの花柄のは?」
「あれは妹用だから。」
「ふふ。」
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やっぱり文字でなんて言わずに直接聞こう。もう少し西田と話したい。
「これ買ったら、もう少し俺に付き合ってくれる?君ともう少ししゃべりたい。」
「いいよ。どうせ母さんの帰りも遅いし。」
俺たちはレジで支払いをすませて外に出た。
「どこ行く?うちに来る?」
「初めて、初めて俺が西田を呼び出した河原がいいな。」
「分かった。」
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