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49. 内なる欲望の囁き①
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交換日記を始めてから、前より一層、西田が近く思える。日記になると彼は意外と饒舌だ。それに、塾があってすぐに帰らなくてはいけない日は会話の代わりになる。これは非常に大きな利点だ。
俺がアナルプラグについて「そんな直径が入るだなんて、実際に見ないと信じられない気がする!」と書いたからだろう。西田の日記に「今度、アナルプラグの実物を見せてあげるね。」なんて書いてあった。それで、次の土曜日に図書館で一緒に勉強してから西田の家に行くことになった。
市の図書館は静かであまり雑談もできないから二人でも勉強がはかどる。遅い時間だと席が二人分は空いていないことがあるので、いつも開館の九時に図書館の玄関で待ち合わせる。
俺のほうが先に着いたので待っていると、西田が慌てて走ってきた。
「ごめん、待った?」
「俺もちょっと前に来たところ。」
既に九時を少しばかり過ぎていたのですぐに入館した。だいたい座る場所は決まっていて、今日も中庭が見える席にした。
「西田はなんの勉強するの?」
「僕は化学かな、苦手なんだよね。ベンゼン環とか嫌い。」
「橘先生に教えてもらえばいいのに。」
「先生には違うことばかり教えてもらっているからね、ふふ。」
西田の笑みが妖艶で、俺は恥ずかしくなった。慌てて目を伏せ、ノートを開いた。いつもこうなのだ。西田はこうやってさりげなく性的な部分に触れては俺をからかって、俺はその度に落ち着かなくなる。そしてそんな俺を西田は楽しそうに観察するのだ。
俺は苦手な英語に取り組むことにした。俺たちは理系クラスだが、理系と言えど英語は重要だ。センター試験で必須だからだ。しかし、西田の言葉と笑みが頭から離れず集中できない。このごろは西田とも橘先生とも性行為をしていないから欲求不満なのだろうか。今日は西田の家に寄る。よこしまなことを期待してしまう。
西田を見ると普通に澄ました顔で勉強している。俺は己の欲深さを突き付けられたようで、再び恥ずかしくなる。
「佐藤君、顔が赤いよ、大丈夫?」
西田がややうつむいた顔はそのままに上目遣いでこちらを見ながら言った。口元は微笑んでいる。
「別に、なんでもない。」
俺はばつが悪くて、ますます顔が熱くなった。西田は何も気にしていないというふうに勉強を再開した。俺も問題集のページをめくった。
しかしその時、脛のあたりに違和感を覚えた。俺の両脚の間をこじ開けるように、西田が脚を伸ばして入れてきた。しかし机から出た西田の上半身は、全く何事もないかのように姿勢を崩さない。表情も眉一つ動かさない。それなのに脚は更に深く入り込んで、俺を弄ぶように動いた。
緊張が一気に高まり、いたたまれなくなった俺はその場を離れてトイレに向かった。席を立った瞬間、西田は俺を見て一瞬だけ口元を緩めた。俺の反応を楽しむようなその様は橘先生を彷彿とさせた。
蛇口をひねって思いきり水を出した。頭を冷やしたくて、ばしゃばしゃと勢いよく顔を洗った。しかし興奮はおさまらず、俺のズボンの中は張り詰めていた。どうしよう。早く鎮めたい。
すると俺の頭にとんでもない考えが浮かんで、俺を支配した。ここには今、俺しかいない。バレるわけない。個室に入り鍵を閉めた。息を殺し、音をたてないように気をつけながら、自涜をした。目をつむると橘先生と西田との秘め事が竜巻みたいに渦巻いて、迸った。嫌な臭いだと思った。トイレットペーパーで拭いながら、自己嫌悪に陥った。
何食わぬ顔をして席に戻ると、西田は俺の顔を見て薄笑いを浮かべて言った。
「ずいぶん遅かったね。」
どくんと心臓が鳴った。西田は俺がトイレで何をしたのか知っている。これじゃあ橘先生と同じじゃないか、そう思うとぐずぐずになっていくのが分かった。
「そろそろ僕の家に行こうか。」
「うん。」
西田の提案に従った。今日はもともと西田の家に行く予定でしごく普通のことなのに、何か橘先生の指示に従っているような気分になってしまう自分を発見した。
自転車で西田の自宅があるアパートへ向かった。自転車を漕いでいる間、サドルの圧迫さえ性的刺激に変換し、やんわりと快感を得る己の卑しさを知った。自分の体から欲望だけが分離して大きくなっていくような感じがした。
俺がアナルプラグについて「そんな直径が入るだなんて、実際に見ないと信じられない気がする!」と書いたからだろう。西田の日記に「今度、アナルプラグの実物を見せてあげるね。」なんて書いてあった。それで、次の土曜日に図書館で一緒に勉強してから西田の家に行くことになった。
市の図書館は静かであまり雑談もできないから二人でも勉強がはかどる。遅い時間だと席が二人分は空いていないことがあるので、いつも開館の九時に図書館の玄関で待ち合わせる。
俺のほうが先に着いたので待っていると、西田が慌てて走ってきた。
「ごめん、待った?」
「俺もちょっと前に来たところ。」
既に九時を少しばかり過ぎていたのですぐに入館した。だいたい座る場所は決まっていて、今日も中庭が見える席にした。
「西田はなんの勉強するの?」
「僕は化学かな、苦手なんだよね。ベンゼン環とか嫌い。」
「橘先生に教えてもらえばいいのに。」
「先生には違うことばかり教えてもらっているからね、ふふ。」
西田の笑みが妖艶で、俺は恥ずかしくなった。慌てて目を伏せ、ノートを開いた。いつもこうなのだ。西田はこうやってさりげなく性的な部分に触れては俺をからかって、俺はその度に落ち着かなくなる。そしてそんな俺を西田は楽しそうに観察するのだ。
俺は苦手な英語に取り組むことにした。俺たちは理系クラスだが、理系と言えど英語は重要だ。センター試験で必須だからだ。しかし、西田の言葉と笑みが頭から離れず集中できない。このごろは西田とも橘先生とも性行為をしていないから欲求不満なのだろうか。今日は西田の家に寄る。よこしまなことを期待してしまう。
西田を見ると普通に澄ました顔で勉強している。俺は己の欲深さを突き付けられたようで、再び恥ずかしくなる。
「佐藤君、顔が赤いよ、大丈夫?」
西田がややうつむいた顔はそのままに上目遣いでこちらを見ながら言った。口元は微笑んでいる。
「別に、なんでもない。」
俺はばつが悪くて、ますます顔が熱くなった。西田は何も気にしていないというふうに勉強を再開した。俺も問題集のページをめくった。
しかしその時、脛のあたりに違和感を覚えた。俺の両脚の間をこじ開けるように、西田が脚を伸ばして入れてきた。しかし机から出た西田の上半身は、全く何事もないかのように姿勢を崩さない。表情も眉一つ動かさない。それなのに脚は更に深く入り込んで、俺を弄ぶように動いた。
緊張が一気に高まり、いたたまれなくなった俺はその場を離れてトイレに向かった。席を立った瞬間、西田は俺を見て一瞬だけ口元を緩めた。俺の反応を楽しむようなその様は橘先生を彷彿とさせた。
蛇口をひねって思いきり水を出した。頭を冷やしたくて、ばしゃばしゃと勢いよく顔を洗った。しかし興奮はおさまらず、俺のズボンの中は張り詰めていた。どうしよう。早く鎮めたい。
すると俺の頭にとんでもない考えが浮かんで、俺を支配した。ここには今、俺しかいない。バレるわけない。個室に入り鍵を閉めた。息を殺し、音をたてないように気をつけながら、自涜をした。目をつむると橘先生と西田との秘め事が竜巻みたいに渦巻いて、迸った。嫌な臭いだと思った。トイレットペーパーで拭いながら、自己嫌悪に陥った。
何食わぬ顔をして席に戻ると、西田は俺の顔を見て薄笑いを浮かべて言った。
「ずいぶん遅かったね。」
どくんと心臓が鳴った。西田は俺がトイレで何をしたのか知っている。これじゃあ橘先生と同じじゃないか、そう思うとぐずぐずになっていくのが分かった。
「そろそろ僕の家に行こうか。」
「うん。」
西田の提案に従った。今日はもともと西田の家に行く予定でしごく普通のことなのに、何か橘先生の指示に従っているような気分になってしまう自分を発見した。
自転車で西田の自宅があるアパートへ向かった。自転車を漕いでいる間、サドルの圧迫さえ性的刺激に変換し、やんわりと快感を得る己の卑しさを知った。自分の体から欲望だけが分離して大きくなっていくような感じがした。
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