佐藤君のおませな冒険

円マリ子

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53. 内なる欲望の囁き⑤

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 西田の手の動きが緩まったタイミングで俺は懇願した。
「ああっ……無理……ねっ、やめて!」
「どうして?お汁があふれて気持ち良さそうだけどな?」
 西田はにこにこ楽しそうで、これはやめてくれないなと思った。西田は再びリズミカルに手を動かして刺激を加えた。
「ひっっ、うああっああぁぁ……。」 
 身をよじって逃れようとしても、西田の手にしっかり握られていてどうにもならなかった。与えられる刺激が多すぎて脳での処理が間に合わず、口から悲鳴になって出てくるみたいだ。
「ひゃっ、堪忍して!」
 しかめた顔の目尻には涙が滲んだ。
「あーぁ、佐藤君、泣いちゃった。よしよし。」
 西田は手を止めると、抱っこしてくれた。これじゃあまるで幼子おさなごだ。西田の腕の中で、俺の息はまだ乱れたままだった。たくさんの汗と少しの涙でぐしゃぐしゃになった顔を、西田が指先でそっと拭ってくれた。
「少しは落ち着いた?意地悪しすぎたかな?」
「西田っ、西田!!」
 俺は西田に強く抱きついて言った。
「今すぐ俺を君のものにしてくれよ!」
「本当にいいんだね。」
「うん、早く、ね。」
 俺は仰向けで寝転んだ状態で、左手で膝の裏を抱え上げ大股を開き、右手で肛門を広げるように尻たぶを押し広げながらねだった。
 西田は一瞬目を細めて俺を見つめ、それから低い声で笑った。
「そんな破廉恥な姿で誘うなんて、佐藤君、悪い子だね。」 
 西田は右手の指にローションを垂らした。西田の指がゆっくりと俺の肛門に近付いた。俺は全身を戦慄かせた。
「うっ!」
 西田の指が一本挿入された。少し冷たいがすぐに温かく馴染んだ。西田の男にしては節の目立たぬたおやかな指を見つめていると、西田の気持ちが分かるような気がした。音楽を奏でるように俺に快楽を与える君の指先は、君にとっての端正な先生の御手と同じかもしれない。
 西田は円を描くように指を動かし俺の肛門を解した。
「この前よりも柔らかいみたい。自分でたくさんいじってるよね。」
「うん。」
 恥ずかしいけれど、俺の体が証拠を突き付けるので肯定せざるを得なかった。
「どうしてそんなことするの?」
「あっ……ち、ちんぽだけじゃ満足できない。」
「ふふ、僕もそうだよ。じゃあ何でいじる?」
「指で。」
「指もいいよね。自分の体の内側の感触が生々しくってさ。でも指で物足りないときもあるでしょ?」
「うん。」
「そんなときはどうするの?」
「えっと……。」
「さあ、僕に教えてよ。」
「ひ、筆記具を束にして……。」
 恥ずかしさに耳まで熱くなった。
「ふうん、束にするんだ、ふふ。よし、これくらいでいいね。」
 西田は指を肛門から引き抜くと、己の陰茎にローションをまぶした。そして俺の肛門にその切先をあてがった。滑らかな感触に期待が膨らんで、待ちきれないと言わんばかりにひくついた。
 それはずずずっと密やかに侵入した。その瞬間、君の口から吐息が漏れるのを聞き逃さなかった。みっしりと広げられていく感覚に俺の下腹が疼き、膝は震えて力が抜けた。俺の心は喝采した。橘先生のものを初めて受け入れたときの記憶が重なった。今や俺は、君のものであり橘先生のものなのだ。
 俺はがっちりと両手、両脚で君の体躯に絡みつき、口付けをねだった。君のかわいい唇が俺の唇に触れ、激しく接吻した。君の舌が、唾液が、俺の咥内を満たし、それはまさに性交そのものだった!
 俺は一艘の小舟だった。穏やかな流れに身を任せていたら、たちまちうねる大波にさらわれた。君の熱い波に飲み込まれて水中でばらばらになる。そう思った途端、再び穏やかな大海に浮かんでいた。西田は俺の中に、俺は自分の腹の上に精液を放出した。君と俺の熱い息遣いだけが時を刻んでいた。
 西田は俺の中から陰茎を抜き取ると、腹に散った精液を、まるで仔猫がミルクを飲むみたいに舌で掬い取っては嚥下した。そうしながら西田は片手を後ろに回して己の肛門を慰めた。その姿があまりに煽情的で、俺の男根はたちまち息を吹き返した。
「佐藤君、僕も欲しくて仕方ないんだ。ねえ、思いっきり犯してよ。」
 君は切羽詰まって潤んだ瞳を俺に向けて、吐息で途切れ途切れになりながら言った。被虐とは異なる欲望が頭をもたげた。
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