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70. 夜④
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西田と風呂に入ると考えるとそわそわしてしまう。狭くて窮屈だと言っていた。そうだとすると、きっと肌が触れてしまうだろう。単に体の汚れを落とすだけではないことを期待してしまう自分に、呆れると同時に少しばかり後ろめたさを感じた。
西田が戻ってきた。お湯を入れているからあと十分ほど待つと言う。
「学ランだと寛げないでしょ。これ着替えね。僕のTシャツとスウェット、大きめのだから佐藤君でも着られると思う。買い置きの新品のパンツがあったからこれも履いていいよ。お風呂の後に同じ下着なんて気持ち悪いでしょ。」
「ありがとう。でも新品なんて申し訳ないよ。」
「気にしなくていいよ。」
「でも……。」
「じゃあさ……、新品のパンツはあげる代わりに、佐藤君が今日履いてたパンツをちょうだい。これならどお?」
「えっ、汚いよ。」
「にぶいなぁ。汚いのがいいの。君のいろんな匂いが染み込んでるでしょ。」
そう言う西田は恥ずかしそうに伏し目がちにしていた。そんなことを言われると、俺も恥ずかしくなる。でも嬉しくもあった。そして思った。俺だって西田のパンツが欲しい。そしたら自宅でも君を生々しく思い描けるだろうから。
「あの……俺も、君のパンツ、欲しい。俺が新品をあげたらくれる?」
「えっ、それはちょっと……恥ずかしいよ。」
「ええっ。」
俺は思わず大声を出してしまった。そしたら楽しげに笑いながら西田が言った。
「うそ、うそ、冗談。いいよ。君のもらっといて不公平だもの。ふふ。」
またからかわれてしまった。でも西田にからかわれるのは嫌じゃない。
「そろそろ十分経ったかな。お風呂場に行こうか。」
「西田、風呂の前にトイレ借りたいんだけど。」
俺の言葉を聞いた西田はきゅっと口角を上げ俺の目を凝視した。それから一瞬考え事をするように上に視線をやってから目を閉じた。西田の雰囲気がさっき冗談を言ったときとはガラリと変わってしまい、真剣そのものに見えたので、目が離せなくなってしまった。西田は薄く目を開いた。まつ毛が影を落として美しい。唇がわずかに開いた。
「佐藤君、もし君が嫌でなければ、君のおしっこ飲んであげようか。」
「えっ。」
想像だにしない西田の提案に面食らって俺は、驚きの声以外発することができなかった。
「ごめんなさい、あげるじゃないな、飲ませて、ください。」
無言の俺に西田は小さな声でそう言った。唇がかすかに震えていた。西田の不安が手に取るように伝わって、俺はなんとか言葉を絞り出した。
「どうして、どうしてそうしたいの。」
西田の気持ちを知りたかった。俺は小便を飲むなんて考えたことがなかったが、それは俺が夢想した、お互いに最も恥ずべき姿を見せ合って受け入れ合う尊さ、に通ずると思えたのだ。だから、西田の思いを知りたかった。
西田はしばらく思案してから言った。
「証……かな。」
「あかし?」
「そう、証。」
ああ、やっぱり!俺は心の中で叫んだ。
「言葉にしちゃうと陳腐だけど、愛の証、みたいな……。あぁ、恥ずかしい!」
西田は耳まで赤くなっていた。それがなんとも愛しくて俺はそっと抱いた。西田は俺の首筋に顔を埋めて続けた。
「僕の場合、セックスはさ、好きな人とじゃなくてもできちゃうでしょ。キスはかなり嫌だなと思うけど、それでも我慢すればできちゃう。でも、おしっこは好きな人のじゃないと飲めないよ。無理矢理飲まされたら飲んじゃうかもしれないけど、そうじゃない限りは無理だよ。だからさ……。」
その声はまだ震え、指先が学ランの裾を掴んでいた。
君は俺と同じなんだね。ああ、俺も君の小便を飲みたい。きっと喜んで飲むだろう。その時、君はどんな目で俺を見るだろう。心臓の鼓動が急激に激しくなり、下半身に苦しさを覚えた。身も心も張り裂けそうだ。
「分かったよ、このまま風呂に行こう。」
西田を抱く手に力が入った。西田はありがとうと言った。熱く濡れた息が首筋を這った。
西田が戻ってきた。お湯を入れているからあと十分ほど待つと言う。
「学ランだと寛げないでしょ。これ着替えね。僕のTシャツとスウェット、大きめのだから佐藤君でも着られると思う。買い置きの新品のパンツがあったからこれも履いていいよ。お風呂の後に同じ下着なんて気持ち悪いでしょ。」
「ありがとう。でも新品なんて申し訳ないよ。」
「気にしなくていいよ。」
「でも……。」
「じゃあさ……、新品のパンツはあげる代わりに、佐藤君が今日履いてたパンツをちょうだい。これならどお?」
「えっ、汚いよ。」
「にぶいなぁ。汚いのがいいの。君のいろんな匂いが染み込んでるでしょ。」
そう言う西田は恥ずかしそうに伏し目がちにしていた。そんなことを言われると、俺も恥ずかしくなる。でも嬉しくもあった。そして思った。俺だって西田のパンツが欲しい。そしたら自宅でも君を生々しく思い描けるだろうから。
「あの……俺も、君のパンツ、欲しい。俺が新品をあげたらくれる?」
「えっ、それはちょっと……恥ずかしいよ。」
「ええっ。」
俺は思わず大声を出してしまった。そしたら楽しげに笑いながら西田が言った。
「うそ、うそ、冗談。いいよ。君のもらっといて不公平だもの。ふふ。」
またからかわれてしまった。でも西田にからかわれるのは嫌じゃない。
「そろそろ十分経ったかな。お風呂場に行こうか。」
「西田、風呂の前にトイレ借りたいんだけど。」
俺の言葉を聞いた西田はきゅっと口角を上げ俺の目を凝視した。それから一瞬考え事をするように上に視線をやってから目を閉じた。西田の雰囲気がさっき冗談を言ったときとはガラリと変わってしまい、真剣そのものに見えたので、目が離せなくなってしまった。西田は薄く目を開いた。まつ毛が影を落として美しい。唇がわずかに開いた。
「佐藤君、もし君が嫌でなければ、君のおしっこ飲んであげようか。」
「えっ。」
想像だにしない西田の提案に面食らって俺は、驚きの声以外発することができなかった。
「ごめんなさい、あげるじゃないな、飲ませて、ください。」
無言の俺に西田は小さな声でそう言った。唇がかすかに震えていた。西田の不安が手に取るように伝わって、俺はなんとか言葉を絞り出した。
「どうして、どうしてそうしたいの。」
西田の気持ちを知りたかった。俺は小便を飲むなんて考えたことがなかったが、それは俺が夢想した、お互いに最も恥ずべき姿を見せ合って受け入れ合う尊さ、に通ずると思えたのだ。だから、西田の思いを知りたかった。
西田はしばらく思案してから言った。
「証……かな。」
「あかし?」
「そう、証。」
ああ、やっぱり!俺は心の中で叫んだ。
「言葉にしちゃうと陳腐だけど、愛の証、みたいな……。あぁ、恥ずかしい!」
西田は耳まで赤くなっていた。それがなんとも愛しくて俺はそっと抱いた。西田は俺の首筋に顔を埋めて続けた。
「僕の場合、セックスはさ、好きな人とじゃなくてもできちゃうでしょ。キスはかなり嫌だなと思うけど、それでも我慢すればできちゃう。でも、おしっこは好きな人のじゃないと飲めないよ。無理矢理飲まされたら飲んじゃうかもしれないけど、そうじゃない限りは無理だよ。だからさ……。」
その声はまだ震え、指先が学ランの裾を掴んでいた。
君は俺と同じなんだね。ああ、俺も君の小便を飲みたい。きっと喜んで飲むだろう。その時、君はどんな目で俺を見るだろう。心臓の鼓動が急激に激しくなり、下半身に苦しさを覚えた。身も心も張り裂けそうだ。
「分かったよ、このまま風呂に行こう。」
西田を抱く手に力が入った。西田はありがとうと言った。熱く濡れた息が首筋を這った。
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