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1章

若様 3

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 「お、ヒデ君起きたのかい」
 いつもながら、突然の登場の若様が現れた。

「あ、若様、すいません。終わる前に倒れてしまって」
「気にしないでくれ、ありがとう。父は目を覚ましたよ、とても晴れやかな気分だそうだよ」
「そうですか、良かった。でも、この病気は再発の恐れがあります、異変があったらまた来てくださいね」
「うん、わかったよ。本当にありがとう。君は、物凄い事やってのけたんだよ」
「フフフ、俺は、病気を治しただけですよ」

「詳しくは言えないが、父の命が救われた、父が存命中と言うだけでも抑制力になっていたのに、現場への復帰だぞ。好戦派の連中は震えあがっているだろうさ」

 隠して、隠してもっと隠して若様……

「そ、そうですか、でも、やっぱりご老公様がいるから出来る事です。俺は、治すだけです。難しい事はわかりませんから」

「クククッヒデ君は、やっぱり面白いな。僕らの事もう、わかっているんだろ?」
「さあ、何の事ですかね?」
「そうなのかい?君が望めば地位も名誉も入ってくるよ?」
「フフ、何の事かわからないですが、そんな高い所に行っちゃたら患者さんが見えなくなちゃいますよ」
「いいな~、ヒデ君はすごくいい」

「若様、俺はこの街に来た時にね。自分の好きな事だけやっていくって、今を楽しむって決めたんですよ」

「フフ、ヒデ君と話してるとなんだかリラックスしてMPの回復も早まるよ」
「ん、テレポートってやっぱり、MP消費が激しいのですか?」
「そうだね、僕だからこそ連続で飛べるんだよ。でも、さすがにMP切れだよ」
「フレッシュを、かけてあげましょうか?」
「何だいそれ?」
「MPの回復魔法です」
「え、そんな便利なものがあるのかい?」
「はい、では」《フレッシュ》

「お、おお、MPが溜まっていくのがわかるよ凄いなヒデ君は」
「フフフ、若様は人を褒めるのが上手ですね」
「どうなんだろね?そんな事言われたの初めてだよ」

 あ、そうだ、付呪ってランヒールが出来るならフレッシュも出来るかな?

「若様、今、銀の装飾とか持ってないです?魔法伝導が高ければ尚、結構だけど」
「ん、銀のは無いけど、ミスリルの指輪ならある、銀より伝導率いいはずだよ」
「ちょっとみせてもらっていいですか?」
「ほら、デザインが気に入ってるんだよ」
「ありがとうございます」
 【診断】

『ミスリルですね。この質量ならランヒールとフレッシュ付けられますよ』
≪おお、スゲーなミスリル、順番に練りこめば良いの?≫
『はい、特にルールは存在しません』
≪了解、ありがとう≫

「若様、これに魔法を付呪していい?」
「え、ヒデ君付呪とかも出来るの?」
「特定の物だけですが」
「是非、やって見せてくれ」
「はいはい、じゃいきますよ」

 えーっと、指輪に練りこむように《フレッシュ》
 指輪が眩い光を放つ

 もう一回、練りこむように《ランヒール》
 再び、指輪が眩い光を放つ
  
「はい、出来上がり」
「え、もう出来たのかい?前に知り合いの魔術師に付呪のやり方を聞いた時に様々な薬品を使い魔力を込めると聞いたのだが……」

「あー、俺のは簡易版です」
「え~、あるのかい?そんなの?」

「まあまあ、はいどうぞ。なかなかのよさそうな出来ですよ。心配なら鑑定のスキルある人に見てもらってください」
「ヒデ君、君とは昨日初めて会ったばかりだが、君の人となりはわかっているよ」
 受け取ると元の指に指輪を付け直す
「お、お、おお、なんだ、ポカポカと温かくなってきたぞ」
「フフ、さっきのフレッシュとランヒールって言う体力回復の魔法がかかってるんですよ」
「何と、二つもだと。ダニエル、入って来てくれ」
 診療所のドアが開きダニエルさんが入ってくる。デカいな~ドアがちっちゃく見えるよ。

「はっ、お呼びですか」
「見張りは良いからこれを、鑑定してくれ」
「え、ダニエルさん鑑定スキル持ってるんだ」
「そうなんだよ、その上魔術にも精通してるんだよ」
 え、この巨人族のような体で?
「ヒデ殿わかりやすいですね、顔に全部出てますよ。……一時期引きこもっている時期があってその時に本を読み漁りまして。後、身体が急成長したのも同じ時期です」

「ほ、ほほ~、あ、そうだ、一つ聞きたいんですけど鑑定した時、最後に食べれるか、食べれないか出ません?」
「いや、食べ物は鑑定した事無いが、出た事無いな」
「はい、ありがとうございました。何でも無いです。」俺の地球製だからか?
「では、若様、拝見します」


 しかし、鑑定持ちがこんな近くにいるのに鑑定させずに指輪を付けちゃうなんて、この若様の人心掌握術なのか素なのか?
 躊躇なく指輪をした動作にためらいもぎこちなさも無かった。
この人、大丈夫か?心配になってきたよ。陰謀とかに巻き込まれてほしくないな。


 などと考えていたらダニエルさんが、手に乗せた指輪の上辺りの空間を凝視しながら、バカなあり得ないを繰り返していた。

 どうでもいい事だが、ダニエルさん手デッカ、指輪チッサ、何か全ての対比が狂うね。

「ダニエルどうだ?わかったか?」
「はっ、この指輪の効力は常時体力と魔力を徐々に回復させる物です。このような物初めて見ましたよ。伝説に出てくるアーティファクトのようです」

「え?まさかそこまでは無いでしょう?」
「いえいえ、いいですか、そもそも、回復系の付呪装備がレアですので、加えて使い捨てではなく常備体力を回復をしてくれる。更には魔力まで回復ですよ、更に更に、魔力の補充無しに動き続けるんですよ」

 近い近い、チュウしそうなくらい近い、こっちの世界の初チュウはせめて女に子がイイ!
「ゴホン、ダニーちょっと近いのでは?」
 ヴァネッサさんの低い声が聞こえた。ちょっと背中ゾクッとした。やめて、ダニエルさん取ったりしませんよ、そんな趣味無いですよ。

「あ、失礼いたしました。興奮してしまって。素晴らしい、どこの迷宮から出没したのか大変良い物を診せて頂いた」

「……」
「……」
「……」

「ん?どうしたのです?」
「いや、作ったんだよ。ここで、ヒデ君が」
「は?いやいや、いくら何でも騙されませんよ」

「ん~、ダニエル、ミスリルの装飾何かあるかい?」
「はっ、先日姉より送られた指輪がありますが」
「丁度いいそれに、付呪してもらうといいよ」
「はっ、ヒデ殿ぜひ、その技を見せてください」

「わかりました」
 ゴトッ、指輪デケー

 【診断】

『かなりの質量ですね。何を付呪しますか?』

≪ん~、毒無効とかって付く?≫
『無理です。プットアウトを付呪して軽減なら出来ます』
≪ん?プットアウトで毒とか消してくれるんじゃないの?≫
『この質量ではそこまでの威力は出せません。ただ、毒、麻痺など状態異常になった時、被害が軽減されます』
≪消すのは無理か、じゃ、ランヒール付けられるかな?≫
『可能です」
≪じゃ、それでいこ≫

 え~っと、練りこんでプットアウト
 指輪が眩い光を放つ

 練りこみランヒール
 再び、指輪が眩い光を放つ

「はい、出来た」

「いやいや、おかしいですぞヒデ殿、そんな片手間で、あり得ません、ダメです」
「ま、まあまあ、鑑定してみてよね」
「わかりました」
 納得いってない様子で、指輪を受け取る。

「む、まさか、そんな……ふむ、素晴らしい」
「ダニエル、どんな効果何だい?」
「はっ、状態異常の軽減と体力を徐々に回復です」
「状態異常にかかり難いって事かい?」
「いえ、状態異常になっても効果が弱まるといった感じかと」

「では、致死量の毒を摂取しても一命は取り留めるといったものなのか?」
「う~ん、難しいとこですね、即効性の毒なら無理ですが、遅効性の毒なら体力の回復も付いてますのでほぼ無効ですね」
「素晴らしい、加えて、麻痺などの効果も軽減か」
 麻痺の軽減のとこで、ヴァネッサさんがピクリとした。正座にも効くのかな?

「ヒデ君この指輪を後一つ、いや二つお願いできないだろうか?料金は言い値で出すから」
「いいですよ、ただ、ダニエルさんの指輪くらいの質量が無いとさっきのは無理です」
「なるほど、関係するのは質量か」

 あ、そうだ、宝石でもいいのかな?
 【診断】
≪宝石でもいいの≫
『そうですね、物にもよりますが、魔力を込めやすい物もあります』
≪ふ~ん、わかった≫

「若様、宝石でも出来ますよ、付呪」
「なるほど、宝石かわかった今度来る時少し持ってくる」
「はい、わかりました」

「さて、名残惜しいが、そろそろ帰るかな、君たちはなにかあるかな?」
「あ、失念してをりました。父よりヒデ殿に渡しておくようにと持たされました」
 革の袋を渡された。

「ん?もしかして、おかねですか?料金は頂いてるんですが……」
「ハハ、貰っておきなよヒデ君、ヴァネッサの父親も武人なんだけど頭の固い人だからね、断られたら様々なものを送ってくるよ」
「う、わかりました。ありがとうございます。お父様にもよろしくお伝えください」
「了解しました」

「あ、そうだ、今日の料金払ってなかったね」
「はい、銀貨1枚になります」
「クククッ、一国の王を助けて報酬が銀貨1枚」
 若様が声をころして笑っている。

 はみ出てるオブラートから中身がはみ出てるから、キチンと隠して

「あ、そうだ、俺、若様にお願いがあったんだった」
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