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1章

side 若様 後編

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 何日か、経ってから少し大げさに聖女様誕生を国民に知らせる。

 王の病気自体情報を伏せているのだが、噂はやはり流れる。最近明るいニュースのなかった王都に久々の明るいニュースが流れる。

 学生時代の同級生という事もあってか、第一王子と聖女様の恋物語がまことしやかに語られ王都はまさにお祭り騒ぎとなった。

 パレード帰りのデレデレの第一王子と幸せいっぱいの顔の聖女様ことデイジーが城に戻って来た。
「おお、お帰りなさいませ兄上に姉上」
「ハハ、疲れたよどこでも聖女様人気は凄いね~」
「あ、姉上だなんて~、はっ、ゴホン、お疲れ様です。どこで見られててるかわからないから、気が抜けなくて大変でしたわ」

「定期的にパレードまでいかないまでも国民に顔見せををしてくださいね」
「はい、わかってますよ。頑張ります」

 城の廊下を話しながら歩いていると前から少しだけ慌てた様子のヴァネッサが近づいて来て耳打ちする。
「殿下、王の毒味役が倒れました」
「王の様子は?」
「王に変わりはありませんが念の為、大司教が呼ばれております」
「で、毒味役の者は平気かい?」

「はっ、症状も落ちついて命に別状はないそうです」
「そうか、いざとなったらまたヒデ君に頼もう」
「はっ、状況に変化がありましたらお伝えします」

 横で聞いていた兄上が少し引き締まった顔で話す。
「早いな、もう動いて来たのか?」
「それだけ、余裕が無くなっているんだろうね。念の為に聖女様には城に泊まってもらう方が良いかもね」

 また、さっきのデレデレの顔に戻って
「う、うむ、そうだな、うんそうしよう、どうだろう、デイジー」
「は、はい、そ、そのようにいたします。父に手紙を書かないと」

「はいはい、こっちまで、緊張感が無くなってくるよ。ヴァネッサ、シオンはどこにいる?」
「はっ、この時間なら隊長室か王の警備かと」
「わかった、行ってみよ」


 シオンは王の寝室の前にいた。
「シオン毒の事は聞いた?」
「はい、調理場を捜索して毒の発見と犯人を捕まえておりますが、金と毒を仲介人から受け取っているらしく仲介人を捜索中ですが線は切れたでしょう」
「流石に、そこまで馬鹿じゃないでしょう?次はどう動くかな?」
「この失敗で少しじれてますので力押し、暗殺でしょうね。セバス、お前の意見はどうだ」
「はっ、かなり高い確率で暗殺者それも、かなりのレベルの者を雇うかと思われます」
「そうなのかい?なぜそこまでわかるの?」

「今まで雇った暗殺者はすべてお嬢様が葬ってきましたからね、半端な暗殺者は仕事を受けないのですよ」
「隊長だ、お嬢様とか呼ぶな。死神ギルドか?チッあそこだけはシッポすら見せない。が、きっと楽ませてくるだろうなクククッ」

 悦に入っているシオンからセバスに話しかける
「……そこが、動くのかい?」
「わかりません、が動くのはそこくらいでしょう」
「警備の方は任せたよ」
「はっ、この命に代えましても」
「なるべく生きていてね、生きてさえいれば絶対助けられる人知ってるからさ」
「ハハ、若様は頼もしくなりましたね。」
「約束だよ、セバス、シオン頼むよ」
「はっ!」
「はっ!」


 それから、数日後、物凄い爆発音で目が覚めた。まだ、夜が明けたばかりくらいの時刻か?

「殿下、お部屋から出てはなりません。今状況を調べに行っております」
「庭の方からだったね」
 窓から庭を見るとバラの花壇があった辺りの土がえぐられる様になくなっていた。目を凝らすと中心の地少し離れた所に人影がみえた
「な、シオン」

 人影の名を呼ぶと急いでテレポートをする。
「シオン、セバスまで、生きているかい」
 近くで見るとシオンは頭から血を流し左腕と左足が吹っ飛んでいる右足も変な方向に曲がっている。セバスも左足が無くなっていた。

「若様、まだ敵がいるかも知れませんお逃げください」
「セバス、シオンは息はしているかい?」
「はっ、今はまだですが」
「よし、飛ぶよ」

 短く言うといつもの頼りになる友人の仕事場に飛ぶ。

「ヒデ君いるかい」
「ん、若様ですか、こんな朝っぱらから如何したんです?」
「急患だ、たのむ」
「え、クソッ」《ヒール》《ヒール》

「とりあえず、最低限の処置はおわったよ」

「まずは、おじいさんの方から」
「いえ、私よりお嬢様の方から」
「うん、大丈夫だよ、お嬢様の方が時間かかるから先に治せるほうからね、大丈夫」
 しばらく、セバスを凝視していて目を瞑ると呪文をとなえる《ヒール》
 すると、無くなったはずの左足が一瞬で治っていた。

「ふ~、もう大丈夫だよ。生きていてくれてありがとう」
「いえ、こちらこそ、この様な奇跡があるとは……」

 次にシオンを診察台にお姫様抱っこで乗せる。この時シオンの目が覚めた。
「うう、ここは、何処だ、」
「ここは、僕の診療所だよ。もう少しがまんしてね」
「お嬢様気が付かれましたか?」
「ん、じい、状況は?」
「はっ、暗殺者を撃退するも私とお嬢様がレベルSの怪我を負い意識を失いました」
「そうか、レベルSか……」
「お話おわったかな?少しだけ麻酔をかけるからお話は終わってからね」
「あなたは、誰?」
「あ、俺はここの回復師のヒデです。さ、お話は後でゆっくりね」
「は、はい、おねがいします」

 え、誰だいあそこにいる頬を赤く染めている娘さんは??隣のセバスは目を細めて懐かしそうに眺めている。

「可哀想に、巻き込まれて、ひどい怪我をまっててね、すぐ治るから」
「えっと、はい、ヒデ様」

「「様?」」
若様とセバスさんが声を揃えて出していた。

 ヒデ君がヒールを唱えると吹き飛んだ手足が治っている。
「さ、もういいですよ、ゆっくり手と足を動かしてみてください」
「え、無くなった手と足が、ウソ凄い」

 その時なんとか胸に張り付いていた焦げた胸の布が崩れ落ちた」
「きゃ!」

「「きゃ?」」
 
「えっと、見てないですよ大丈夫ですよ」
「本当に見てないですか?」
「フフ、見てないですよ白い綺麗なお腹しか」
「も、もう、ヒデ様の意地悪」

「ハハハ、ゴメンゴメン、お詫びに、この奇麗なシルバーの髪を元通りにしてあげる」
 《ヒール》
「後、この毛皮使ってください。返さなくていいですからね」

 なんか、シオンの目がお星さまのごとくキラキラしている。
「セバス、シオン大丈夫かな?」
「いや~、なんか幼少の頃のお嬢様を見ているようですな~」
「え、シオンもそんな時代もあったんだ」
「それはもう、じい、じい、と私に良く話しかけて下さり。天使の微笑みでしたよ」
 何か遠くを見て語ってる。触れるのはやめておこう。

「ヒデ君、朝方に悪かったね」
「いいえ、急患なら仕方ないですよ。いつでもいいのでまた来てくださいね」
「うん、ありがとう」

 何かシオンがブツブツ言っている、飛んでいいのかな?飛んじゃうよ~?いいかな?

「ハァ、ハァ、何だこの胸の高鳴りまさかこれが恋、しかしここは若がいないとそうそう来れない場所、告白するなら今しか無い。よ、よし、い、いくぞ、私、貴方のことをあい」

「あ、隊長戻られたんですね?ん、なんです?私の事?何ですか?聞こえなかったんですけど?えっと、私、貴方の事をアイタタタタタタ、チョ、何でアイアンクローするんですか?」

「うるさい、ヴァネッサ私の剣どうした?」
「ハイッス、落ちてましたので回収してあるっス、剣についてた左手どうします?」
「その辺に埋めとけ」
「ハイッス」

「クソッもう少しのとこだったのに、まあいい、楽しみは先延ばしだ。セバス、あの爆発した眼帯野郎が最後に飛ばした念話の受信先掴んでるか?」
「はい、もちろん。しかし、行く前にお着替えをしときましょう」
「よし、上出来だ、私と、セバスで乗り込んでくるお前らここで、警戒しとけいいな」
「「「はっ警戒を続けます」」」
「セバスさっさと着替えて行くぞ、私は、守るより攻める方が性に合ってるんだよ」

「行ってらっしゃいませ。……いや~久々に見ましたね隊長のぶち切れモード、怖かった」
「いや、あの隊長と話せるお前がスゲーよ」
「まだ話してくれてるだけマシなんだよ、完全に切れると笑いながら殴ってるから、こないだ酒場で見たけど、夜、夢に出てきて物凄く怖かった」

「……ま、なんにせよ、発散場所があってよかったよ」

「殿下お疲れさまでした。ヒデ殿いてよかったですね」
「まあ、朝だったしね、でもいなかったら完全にダメだったよ、また助けられちゃったね」


 この後、尻尾を出したデブ・ヒゲ・チビを捕らえることができて何とか一件落着することができた。



 最近はお嬢様ファッションで王都のお茶菓子を持ってあらわれるシオンを、ヒデ君の所に連れて行ったりしている。ヒデ君はあれがシオンの素だと思ってるけど、流石に僕の口からは言えないよね。


 この広い世界でヒデ君と出会わせてくれてありがとう。女神様に感謝を


 余談だけどヴァネッサがシオンの服を見て大爆笑して殴られていた。 
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