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1章

改築工事

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 相場の騒ぎも収まり一回目の納品も終わらせ、ひと段落している。工場が動き出してそろそろ一ヶ月くらい経った。その間にヒューイさん、ウィルさんと話し合って工場の買取金額を三人で均等割りにして運営をしていく事になった。


 利益の中から福祉という事で、子供を預かってもらってる孤児院の改築をする案が通ったので、工場の改良工事をしてくれた親方を連れて孤児院にやって来た。前に簡易で部屋を増やしたがそれも限界になって来た。


「「「ヒデ兄(師匠)」」」
 院に着いた俺を見つけて四人が駆け寄ってくる。今日の四人は院のお手伝いをしている。工場で働く人の子供も預かっているので人数が多いのだ。キャリーさんはクエストに行ってます。

「おはようみんな、院長先生はどこにいる?」
「今呼んでくる。ヒデ兄が来たら呼んでくれって言われてるから」
「おう、頼むな」

 待っていたらすぐに院長先生がやって来た。
「おはようございます。ヒデさん」
「おはようございます。院長先生、こちらが工事してくれる親方です」
「はい、よろしくお願い致します」

「おう、まずどんな感じにしたいか教えてくれ」
「はい、こういった事に慣れてないのでおかしなとこがあったら言ってください」
 前置きをして一部屋ずつ説明していく。全部説明終わってから親方が建物を色々調べている。

「うーん、このまま補強するより建て直した方が早いぞ?」
 親方の言葉に驚いて聞き直す。
「え?建物の補強出来ないの?」
「いや、出来ない事はないがこのままだと他のとこがまた壊れて来るぞ」

「ふむ、じゃあちょっと計画より早いけどいいか、隣の土地買って建て直そう」

 隣の土地は何も建ってないで、塀があるだけの広場がある、前から考えていたのだがそこに建てれば近いしいいかもって思っていた。ウィルさんとヒューイさんのおかげで工場の費用の三分の二が戻って来たから最悪そこから出そう。


「ヒデさん、そこまでして頂いては……」
「無理言ってるのはこちらですから、気にしないでください」
「でも、流石にこれは……」
 ムム、流石に院長先生も簡単には折れないが、だが俺は知っているこの一言に弱い事を。

「まあまあ、子供達も広い方が嬉しいですし、走ってぶつかったりしなくなりますよ」

「うーん、すいません。ありがとうございます」

 そうと決まれば早く土地の確保をしないとな、確かここはブルースさんの土地だったよなどこ行けば会えるのかな?

 親方と院長先生には話し合いながら簡単な図面を書いてもらっているので、先に土地の確保をしてくると言って先に出てきた。

 ゲンとトランが目ざとく俺を見つけて話しかけて来る。
「あれ?ヒデ兄もう終わったの?」
「ああ、隣の土地に新しく孤児院を建てるから土地の確保しに行ってくる」
「え、そうなんだ、新しく建てるのか」

「ん?ちょっと待ってヒデ兄、土地の確保ってこの隣の広場の?」
「うん、そうだよ。どうしたんだ、なにかあるのか?トラン?」
「そうじゃなくて確かブルースさんの土地だよね?って事は会いに行くの?」
「そうだね、どこ行けばいいかわからないけど」
「やっぱり、僕とゲンが一緒に行くよ、家の場所知ってるし」

 トランは頭の回転が速くてよく気付くな。
「俺だけで平気だぞ?」
「うん、でも、ブルースさんの家があるとこがちょっとヤバイとこだから」
「ブルースのおっちゃんの家って……あ、あそこか、確かにヤバイな」
 まったく、ヤバイだなんてどこで覚えてきたんだか。

「わかったよ、でも先に商人ギルド寄ってからね。土地買う時に何か必要な物とかあるか聞くから」
「「はーい」」

 返事はカワイイけどフル装備で出てきた。そんなにヤバイの?あ、もしかして俺が言ってるから覚えちゃったのか?気を付けよう。


 商人ギルドで聞いたところ、ブルースさんが土地の売買を扱っているので、特に持っていくものはないらしい。あと、この商店街にブルー商店というブルースさんの商店があるそうなのでそこで聞いてみてはどうかと言われた。


 ブルースさんの商店なので、怖いお兄さんがわんさかいるのかと思ったら、普通の商店だった。受付の綺麗なお姉さんがニッコリして話しかけてきた。

「ブルー商店にどの様なご用でしょうか?」
「えーっと、土地を買いたいんですけど」
「土地のご購入ですね?今担当の者を呼びますのでお待ちください」
 しばらく待つとこれまた綺麗なお姉さんが出てきた。

「土地のご購入をお考えだそうですが、場所や何かご希望は御座いますか?」
「はい、スラムにある孤児院の隣の土地なのですが」
「あー、そこの土地は個人の持ち物なってましてお売りできないんですよ」
「あれ?ここってブルースさんのお店ですよね?」

 綺麗なお姉さんの顔が少し警戒をする顔になった。
「んー、社長のお知り合いですか?それとも本業の商売敵?」
「あ、前者です。お知り合いの方ですよ。……本当に」
「んー、慌て方が怪しいですね」

 どうしようかな?っとか思ってたらまたあの間延びした声がした。
「あれ、ヒデ君どうしたのこんなとこ来て?」
「あ、スミーさんいいとこにブルースさんの土地を譲ってもらおうと思って来たんですよ」
「土地?」

 綺麗なお姉さんがスミーさんに訊いている。
「スミーさんこちらの方は社長のお知り合いですか?」
「そうだよ、ヒデ君とブルース君はお友達だよ」
「そうでしたか、疑ってしまい申し訳ございません」
「ああ、いえ、気にしてませんので」

 スミーさんに話すとブルースさんに直接頼のまないとダメらしいので、結局ブルースさんの家に向かう事になってしまった。距離はそんなにないのだがあまり治安が良くないので、馬車で行くことになった。馬車に乗っている間は特に何もなかった。

 ブルースさんの家はお屋敷だった。門番にスミーさんが顔を見せたらすんなりと通り抜けてお屋敷の入り口近くで止まった。中に入るのに持ち物検査とかされ、ゲンとトランは俺を守るために装備を外すのを拒んでいる。 
 スミーさんのそのままでいいよの一言で警備の人が下がったので、やっと部屋に入る事が出来た。

 スミーさんに案内をしてもらってデッカイ観音開きのドアを開けて入ると、デカくて豪華なデスクの後ろのデカい椅子に座ってるブルースさんが、入るなり嬉しそうに話しかけてきた。

「よお、ヒデ久し振りだな色々やってるみたいじゃないか?」
「お久しぶりです。ブルースさん」
「今日はどうしたんだ?」

 ブルースさんに最初から全部話し売って欲しいとお願いした。
「なるほど、院の隣の土地か……いや、ダメだ売らない」
「あれ?ダメ?困ったな新しい院どうしようかな?工場のとこじゃ流石に狭いよな?」

「売らないが、建物は好きに建てていいぞ」
「ん?どういう事?」
「お前があそこで工場をやっているからだよ」
「んん?」

「お前にしては察しが悪いな、お前があそこで工場を営業して周りの人間を雇ったろうそれでな、少し金周りが良くなった連中が増えたんだよ、そうなってくると……」
 後の言葉を続けて見ろと言わんばかりに言葉を濁してこちらを見る。

「ああ、なるほど、あの辺を他の勢力が狙いだしたのか」
「そうだ、もしもの時の為に俺が持っていた方が良いだろ」
「そうだね、工場と土地を狙ってくることはないだろうけど他のは狙ってくるだろうからね」

「工場のおかげで潤ってるのに工場を潰すようなことはしないだろ?おかげでスラム全体が潤い始めたんだからな」

「わかったよブルースさんじゃあ、今回は孤児院の隣の土地に新しい孤児院を建てるね」
「なんだ、今回はって?前に話してた家を建て直すって奴か?」
「まあ、その為の前段階とかも必要だからね、あ、賃料とか払った方が良いの?」

「ほー、まあいいや、事後承諾で構わないから何かした時は商店街の店に報告してくれ。後、賃料は要らない自由にやってくれ」
「わかりました。ありがとうございます」

「……あー、それで、みんな元気か?」

 これは、院長先生の事かな?
「ん?んー、はい、工場の子供達も預かってるから毎日大変みたいだけど、楽しそうにしてますよ。なあ、院長先生はどんな感じだゲン、トラン」

「ん?院長先生?子供達預かるようになってから物凄い張り切ってるよ」
「そうだね、ヒデ兄に病気治してもらってからは、外で小さい子と一緒に走り回ってるよ」

「そうか、元気か良かった」
「じゃあ、また何かあったら来ますね」
「おう、またな」

 この後スミーさんに工場近くまで送ってもらって、孤児院に戻ってきたら親方と院長先生がまだ話していたので、いつでも工事を始めていいですと伝えた。

 土地代かからなかったから子供達の遊具を増やしてもらおうと色々案を出した。ブランコとか鉄棒、ジャングルジム、すべり台、親方は「なんだそれ?楽しいのかそんなの?」とか言われたけど絶対作ってもらおう。
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