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2章

アオちゃん日記 その4 (ヴァネッサさん日記)

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若様の手紙を持って指示された同じ領内の端にある村まで何とかたどり着いた。村の中に入った途端至る所から視線を感じる。
 よそ者に冷たい村はよくあるが、冷たいのではなく村の雰囲気は変わりないのだが明らかに監視の目が張り付いている。村に入って直ぐの食事処兼宿屋に入って状況を観察するです。

「うーん、なるほど若様のメモに書いてあるちょっと変わった感じの村ですね」

「いらっしゃいませ。旅の方お泊りですか?それともお食事?」
 席に座ると私と同じくらいの女の子の店員が寄って来てくれました。

「じゃあ、アルコールの入ってない飲み物をください」
「ゴリンかグレプのジュースがありますよ?」
「じゃあ、グレプのジュースでお願いします。それと村長の家はどこか教えて欲しいのですが」
 一瞬驚いた顔をしてそれを隠すように話を続けます。

「村長の家ですか?ちょっとわかり難いので地図を書いてきますね」
 それだけを言うと厨房に下がっていった。何か違和感を感じて警戒をしていると隣の席でお酒を飲んでいた二人組が声をかけてきました。

「おい、姉ちゃんよー、村長さんに何の用だ?あ?」
「俺達は村長さんにはちょっとした恩があってな、よそ者を村長に近づかせる訳にはいかねえんだよ」

 あー完璧に酔ってますね。めんどくさいなー、殴り倒して黙らせるのは簡単ですが騒ぎは起こしたくないですね。
 そんな事を考えていたら奥からさっきの女の子が出てきてくれたのです。

「ちょっと二人共、今度騒ぎを起こしたら村長に言いつけるって言っておいたのを忘れたの?」
「ウッ、忘れてなんかないぜ、本当に、な、な、相棒」
「オウ、忘れてないぜ。こ、こいつが前と同じで領主の送り込んできた殺し屋かもしれないだろ?だからちょっと試そうとしただけだよ」

 なるほど、ここの村長さんはあの領主に命を狙われているのかな?それで村に入ってから監視の目が付いていたのか。

「あー、なるほど、何となくわかりました。私は村長さんにお手紙を預かって来ただけなので、村長さんをここにお呼びしてもらえませんか?」
さっきの酔っ払いの一人が叫んできました。

「あ?何で村長に来てもらわないといけないんだ?お前の手紙とやらを俺が村長に持って行くからよこせ」
「そんな事出来るわけ無いでしょ?これは主より預かった大事な手紙ですから」
 穏便には済ませられないかなーと思っていた時入り口から若い男の声が聞こえた。

「皆そこまでです。これ以上事を大きくしないでください」
 年のころは若様と同じくらいの男性が真剣な顔をして大きな声を出して皆を鎮めた。

「そ、村長さんまだこいつの素性がわかってないんだから出てきたらダメだ」
「大丈夫ですよ。お嬢さんそのお手紙を見せてくれますか?私がここの村長ですよ」
 若様のメモに書かれた金髪に金色の目、それと若様と同い年の青年間違いないな。

「こちらが、若様より託された手紙です」
 懐からゆっくりと怪しい動きをしないように手紙を取り出してわたす。それを隣の老人が受け取り手紙の蝋印の家紋を見て、驚きの顔をして急ぎ村長に手渡した。村長は封を切ると手紙を取り出して読み始めました。

 暫らくすると村長さんは隣にいた老人に話しかけています。
「ジイ、遂に動く時が来たぞ。準備を済ませて直ぐに移動するぞ」
「ハッ、かしこまりました。お坊ちゃま、いえイアン様これでやっと大旦那様とのお約束が果たせます」
「その言葉はすべてが終わってからだ。最後の大詰めだ気を抜かずに行くぞ」
「はい、かしこまりました」

 えー、なんか目の前で凄い盛り上がってますけど、どういう事でしょうか?まあ、後はメモの最後に書いてある、手紙が渡せたのと村長さんの街への到着日を若様に伝えればおわりね。

 ヴァネッサさんは向こうで上手くやってるかな?



ヴァネッサのターン

 アオと別れた後冒険者ギルドに向かって歩いて行くと何と、なんとなく周りから見られている様な気がするのだが?
「フム、やはりアーメットヘルムを装備した方が良いのだろうか?」
歩きながら考えていたら冒険者ギルドに着いた。

「アーメットヘルム装備する前に着いてしまった。うーん、まっいいか先ずは若様から渡された手紙をここのギルマスに渡すんでしたね。何が書かれているのかわからないですが渡しに行きましょう」

 ギルドの中に入ってから受付に向かった。
「すまないがここのギルマスに話があるのだが」
 受付の女の子にギルマスを呼んでもらう。

「あ、はい、えっと、お約束はしていますか?」
「いや、約束はしてないがギルマスに届け物を持って来たのだが」

「そうですか、少しお待ちください」
 そう言って席を離れるとメガネをかけた男の人と戻って来た。

「私はここのサブギルドマスターのオファンと言います、ギルマスに届け物があるそうですが?」
「はい、わが主より預かっていますので本人に直接渡したいのですが」
 そう言って蝋印を見せる。

「こ、これは、少しお待ちください。ギルマスを呼んできます」
 この家紋をみたらまあ、みんなこの反応するだろうな。

「いえ、良かったら私がギルマスの部屋にお邪魔したいのですが」
「はい、わかりました。ご案内します。どうぞこちらに」

 部屋の中に入ると大きな机で書類に目を通しているギルマスが顔を上げた。

「ん?あ、ヒデのとこに来る護衛の奴か?」
「え?何で?完璧な変装が‥‥‥」
「‥‥‥いや、変装って、まあいいか、それでどんな御用ですか?」

「主より手紙を渡すように言い付かっております」
「手紙?お前さんの主ってまさか!」
 そう言いながら受け取った手紙の蝋印を見てから封を切って中の手紙を読み始めた。

 読み終わるとため息を一つつく

「やっぱり王族か、まったくヒデは何処に首突っ込んでんだ?」
「ん?ギルマス殿は我らの正体をご存知でしたか?」
さりげなく腰の剣に手を伸ばす。

「あ?いや、前に診療所の前で見張りをしてたろ?その時に親衛隊のエンブレムがチラッと見えてな。それだけだからそんなに身構えないでくれよ」
「そうでしたか、失礼しました」

「フウッ、ここに書かれている、四、五日の時間稼ぎってどういうことだい?」

「あ、私も詳細は聞いて無いのですが、数日の時間稼ぎをしてもらえばすべてが上手くいくらしいです」
「フム、すべてねー。そんなうまい手があるもんなんか?」

「まあ、若様がそう言ってますので間違いないですよ。私はここでヒデ様の護衛を陰ながらします」

「そうか、うちの方でも頼んでないけどヒデの行動を細かく見ているのがいるが、多くて困る事では無いからな。おっと、そろそろあの領主が来る時間だな」

「ム、そうなのですか?どれ、私も顔くらいは見ておきましょう」

 席を立ちあがると外から馬車が止まる音が聞こえてきた。
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