恋を諦めた私の前に突然痛いイケメン王子様が現れましたっ！！

同棲生活

13

「茜さん、ちょっといいですか？」
「何でしょう…」

今日は土曜日。
彼からいきなり真顔で名前を言われてちょっとドキッとした私は両手を胸の前に組んで返事をした。
この間の話からお互いの事を知るようになり彼が女性恐怖症だということが判明した。
更に私はそのことを聞いて余計自分が彼に何かされるんじゃないかと言う恐怖の日々を過ごしていた。
当然、彼は私の行動の意味を理解しているらしくあまり話し掛けてこなかったのに今日珍しく4日ぶりに声を掛けられたのだ。

「そんなに不審がらずにしてほしいです。何もしませんから…」
「はぁ……それで私に何の御用でしょうか、涼太さん」
「はい。ちょっとお互い誤解があると思われる節があると思うのです。僕は貴女をどうこうしようなどと思っていません。このまま一緒に居るとお互いが疲れるんじゃないかと思うんです」
「でしょうね。それだったら同棲生活を解消しても私は一向に構わないですけど……」
「それは僕が困ります。今日、土曜日で僕も休みです。たまにはどこか行きませんか？」
「はぁ……？」
「所謂、デートのお誘い、と言うやつです。どうでしょうか？　茜さん」
「どうでしょうか、と聞かれても何で貴方と出掛けなければいけないのでしょう。私は部屋で過ごしたいのですが。それに恋人でもない私と一緒に出掛けることに貴方は不快なのではないでしょうか」


ああ言えば、こう言う展開の話がずっと続いた。
彼は私の事を恋愛対象として見てないので問題ないという。
それって結構女の私にとっては大変失礼な話でしょ。
全く魅力のない女って事じゃん。
それはそれでムカつくんだけど……童貞の癖にクソ生意気なガキなんだから。


それでも私の断りをお得意の強引な説得に負けたような形になった私は、結局彼の言うことに従うことになってしまった。
決して私は納得したわけじゃないのだが、話の流れでそうなってしまったのだ。


「茜さん、そろそろ出ましょうか」
「……何処に行くんですか？　涼太さん」
「そうですね。茜さんの洋服でも買いに行きましょう。ずっと気になっていたのですが家で同じ服装ではあまりにも不憫じゃないですか。僕がプレゼントするということで」
「私が何を着ようが貴方に関係なのでは？　それに私は貴方にプレゼントされる覚えが無いですけど」
「まぁ、そう頑なにならず、です。さ、行きましょう」
「はぁ……」


何でか彼は私と話している時は強引なんだよなぁ……。
女が嫌いなんじゃないの？
それとも私は女性として見られていないから話しやすいってこと？
どっちにしたって本当に失礼なイケメン童貞だわ。
どうせだったらホモとして私の脳内でぐちゃぐちゃにしてやるんだからっ！！


私はそう思いながら玄関の扉を閉めた。
私の脳内ピンクを知らない彼は笑顔でエレベーターのボタンを押して私が来るのを笑顔で待っていたのだった。