恋を諦めた私の前に突然痛いイケメン王子様が現れましたっ!!

杏仁豆腐

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平穏と実家とエトセトラ

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彼と私の母はすっかり仲良くなってしまった。
父が仕事でいなかったのが何よりだ。

「あ、そうそう。お母さん。今度また連絡するけどさ。彼のご両親にも一度会ってね」
「はぁ!? なんで?」
「何でって……私たち結婚するから」
「はいぃぃ~!! あなた達結婚すんのかい!! あら、良かったわねぇ! へー、そうなの~!」
「ええ、お義母さん。そうなんです。すみません」
「いえいえ、とんでもない。清水さんのような人であって良かったです。私たちは茜の結婚を諦めてたんです。そうなんですか! よかったね、茜ぇ」

ははは、そう。
こんなことになると思ってた。
確かに私も恋を諦めてずっと一人で生きていくと決めてたんだけどね、何か知らない内にこうなってたのよ。
まぁ、これも運命ってやつ?
ああ、でもね、お母さん。
こいつ、童貞だから……それに案外だらしないのよねぇ。
イケメンと社長ってだけのスキルしか持ってないのよ、この童貞君は。

「茜? 何ぼーっとしてんのよ」
「あ、あはは、何でもない。そろそろ行きましょうか。涼太さん」
「あ、そうですね。お義母さん、すみません。そろそろ……」
「あん。もうちょっとゆっくりしていけばいいのにぃ~」
「また来るから、お母さん」
「はい。またお邪魔します」

私と彼は実家を後にして福岡駅へタクシーで向かうことにした。
実家から駅前まで結構距離があるのだが、私がだるいと言ったら彼が気を使ってタクシーを用意してくれたのだ。
やっぱりお金持ちの彼氏っていいもんよねぇ~うふふ。

「茜さん。大丈夫ですか?」
「あ、はい。大分楽になりました」
「よかったです。ホテルに着いたらゆっくりしてください」
「有難う御座います」

そう言えば、彼はこの後どこかに行くのかな。
まだ夕方くらいの時間だし、仕事関係で出掛けるのかな。

「このあと何か予定でもあるんですか? 涼太さん」
「いえ。今日は何もないです。どうですか?」
「ああ、そうなんですか。いえ、何でもないです」
「そうですか」

駅前のホテルに着いた。
すげーデカいホテルじゃんっ!
何、マジここに泊まるの!?
なんか看板に『ロイヤルなんちゃら』って書いてあるんですけどっ。

「涼太さん、ここ、ですか?」
「はい。ここです」
「また随分と大きなホテル、ですね」
「普通です」

普通じゃねーーよ。
なんなんだよ、こんなホテル私は一回も泊ったことなんてないわよ。
流石セレブだな……。
自慢か、自慢なのか、その余裕な顔は私みたいな底辺の人間に対してただただ自慢したいだけなのかっ!?

「さ、行きましょう。茜さん」

彼はそう言って私の手荷物を持ってホテルのロビへ向かった。
私は心の中でぶつぶつ言いながら彼の後ろについて行った。
しっかしでっかいロビー……。
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