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平穏と実家とエトセトラ
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私と彼の旅行は三日目を迎えた。
昨日買ってきた秘密兵器を着て彼の帰りを部屋で待っていた私。
疲れ切って部屋へ戻って来た彼。
彼の表情を見ていたらなんだか揶揄うのが申し訳ないというか腰が引けたというかそんな気持ちになってしまいそのまま寝てしまった。
今日は彼も仕事を入れてないという。
今日帰宅する予定だからだそうだ。
当然私も一緒に帰ることになる。
「茜さん。午前中少し買い物とかしますか?」
「いえ。帰りましょう。早く家でゆっくりしたいです」
「そう、ですか。分かりました。では新幹線のチケットを用意してきます」
「お願いします」
彼は部屋を後にした。
私は部屋に残ってベッドに寝ころんだ。
何だか一緒の部屋に泊まった筈なのに何も進展しなかった。
別に進展しなくても何も寂しいとかじゃない……と言いたいけど、やっぱり寂しい。
彼は私の事を好きだと言ってくれた。
でも私は彼の事が好きなのだろうか。
彼とキスしたい、抱かれたいと思っているのだろうか。
頭の中でそのことを考えていた。
やっぱり私って男の人と付き合うことが苦手なのかなぁ~。
正直彼は優しいし、紳士的だと思う。
イケメンだし、お金持ちだし、仕事熱心だし、言うことない魅力的な男性なのだろう。
しかし私の中で果たして彼の事がどういう存在のかさっぱり分からない。
「分からん。全く分からん。私は涼太さんとどうなりたいんだ!?」
当たり前だが口に出したところで答えは返っては来ない。
そして時間が経ち私と彼は新幹線に乗って名古屋へ向かった。
車中では二人とも無言のまま。
彼も疲れているのだろう。
私に何も語ろうとはしない。
私もそんな彼に何を言っていいのか分からずそのままだんまりを決め込んでしまった。
やっとマンションに戻ったのが夕方過ぎだった。
「はぁ~、疲れた……」
「お疲れ様でした。お風呂沸かしますね」
「すみません。涼太さんも疲れているのに」
「いえ、大丈夫です。夜ご飯は何か頼みましょう。ピザとかどうです?」
「あ、いいですねぇ。そうしましょうよ」
彼に甘えてしまう私ってどんだけ女捨ててんだろう。
私は部屋に戻り荷物の整理をした。
向こうで買ったパジャマと下着を取り出しため息をつく。
一回しか着てないな。
もう着る機会無いのかもしれない。
そう思いながら他の洋服と一緒に洗濯機の中へ放り込んだ。
彼も荷物を整理して洋服を洗濯機の中へ。
やっと落ち着いたのがお互いお風呂に入って出前のピザを食べた後の事だった。
私は自室でネットをして、彼も自室にこもって仕事をすると言っていた。
淡泊な彼氏彼女。
本当にこのままでいいのかな。
「ダメ……だよね。このままじゃ何も変わらない」
私はそう口にしてノートパソコンの画面を静かに畳むと部屋を出て彼の部屋のドアをノックした。
「はい。どうぞ」
「失礼します」
そ~っとドアを開けると彼が背を向けてキーボードを叩いていた。
ブラインドタッチと言うやつか。
めちゃくちゃ早く文字を打ち込んでいる。
「どうしたのですか。茜さん」
「お仕事中、すみません。ちょっとお話いいですか?」
「はい。そこ、座って下さい」
彼はベッドを指さして座るよう私に言った。
私は彼の言う通りベッドにちょこんと座ると両手をぎゅっと握り締めながら話をした。
「あのぉ、涼太さん。私たちって本当に付き合っているんでしょうか」
「え……?」
彼の手が止まった。
私の方に顔を向けると椅子から立ち上がり私の隣に座った。
彼が隣に座る……ただそれだけで私の心臓がどきどき波打ち始めた。
昨日買ってきた秘密兵器を着て彼の帰りを部屋で待っていた私。
疲れ切って部屋へ戻って来た彼。
彼の表情を見ていたらなんだか揶揄うのが申し訳ないというか腰が引けたというかそんな気持ちになってしまいそのまま寝てしまった。
今日は彼も仕事を入れてないという。
今日帰宅する予定だからだそうだ。
当然私も一緒に帰ることになる。
「茜さん。午前中少し買い物とかしますか?」
「いえ。帰りましょう。早く家でゆっくりしたいです」
「そう、ですか。分かりました。では新幹線のチケットを用意してきます」
「お願いします」
彼は部屋を後にした。
私は部屋に残ってベッドに寝ころんだ。
何だか一緒の部屋に泊まった筈なのに何も進展しなかった。
別に進展しなくても何も寂しいとかじゃない……と言いたいけど、やっぱり寂しい。
彼は私の事を好きだと言ってくれた。
でも私は彼の事が好きなのだろうか。
彼とキスしたい、抱かれたいと思っているのだろうか。
頭の中でそのことを考えていた。
やっぱり私って男の人と付き合うことが苦手なのかなぁ~。
正直彼は優しいし、紳士的だと思う。
イケメンだし、お金持ちだし、仕事熱心だし、言うことない魅力的な男性なのだろう。
しかし私の中で果たして彼の事がどういう存在のかさっぱり分からない。
「分からん。全く分からん。私は涼太さんとどうなりたいんだ!?」
当たり前だが口に出したところで答えは返っては来ない。
そして時間が経ち私と彼は新幹線に乗って名古屋へ向かった。
車中では二人とも無言のまま。
彼も疲れているのだろう。
私に何も語ろうとはしない。
私もそんな彼に何を言っていいのか分からずそのままだんまりを決め込んでしまった。
やっとマンションに戻ったのが夕方過ぎだった。
「はぁ~、疲れた……」
「お疲れ様でした。お風呂沸かしますね」
「すみません。涼太さんも疲れているのに」
「いえ、大丈夫です。夜ご飯は何か頼みましょう。ピザとかどうです?」
「あ、いいですねぇ。そうしましょうよ」
彼に甘えてしまう私ってどんだけ女捨ててんだろう。
私は部屋に戻り荷物の整理をした。
向こうで買ったパジャマと下着を取り出しため息をつく。
一回しか着てないな。
もう着る機会無いのかもしれない。
そう思いながら他の洋服と一緒に洗濯機の中へ放り込んだ。
彼も荷物を整理して洋服を洗濯機の中へ。
やっと落ち着いたのがお互いお風呂に入って出前のピザを食べた後の事だった。
私は自室でネットをして、彼も自室にこもって仕事をすると言っていた。
淡泊な彼氏彼女。
本当にこのままでいいのかな。
「ダメ……だよね。このままじゃ何も変わらない」
私はそう口にしてノートパソコンの画面を静かに畳むと部屋を出て彼の部屋のドアをノックした。
「はい。どうぞ」
「失礼します」
そ~っとドアを開けると彼が背を向けてキーボードを叩いていた。
ブラインドタッチと言うやつか。
めちゃくちゃ早く文字を打ち込んでいる。
「どうしたのですか。茜さん」
「お仕事中、すみません。ちょっとお話いいですか?」
「はい。そこ、座って下さい」
彼はベッドを指さして座るよう私に言った。
私は彼の言う通りベッドにちょこんと座ると両手をぎゅっと握り締めながら話をした。
「あのぉ、涼太さん。私たちって本当に付き合っているんでしょうか」
「え……?」
彼の手が止まった。
私の方に顔を向けると椅子から立ち上がり私の隣に座った。
彼が隣に座る……ただそれだけで私の心臓がどきどき波打ち始めた。
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