恋を諦めた私の前に突然痛いイケメン王子様が現れましたっ!!

杏仁豆腐

文字の大きさ
87 / 100
新たな門出

86 ※

しおりを挟む
彼と夜の繁華街へある道はネオンだれけで夜なのに明るい。
彼はどんどん前に進んで歩いてきた。
歩きながら途中会話も挟みながらついた先は、なんと高級そうなラブホテルの真ん前。


「あの…ここ…何ですか? 行きたいところってのは」


恐る恐るそう彼に訊ねると彼が笑いながら頷いた。
まだ夜の9時過ぎなのに人が多く道を歩く姿が目に付く。
そんな中ラブホテルの入り口に入るという勇気が私にはない。
私のためらいなんてお構いなく彼が私の手をぎゅっと握りしめホテルの自動ドアに足を踏み入れた。

「こういう場所に一度来てみたかったんです。僕は今まで女性関係が全くなくこんな場所にはご縁が無かったのですが、茜さんとなら来れそうだと思いまして」


そう言いながら恥ずかしそうに頭を掻く姿を見て少しおかしくなり笑ってしまった。
私だってこんな場所に来ることなんてあり得ない人生を送っていたからまさかこんな日が来るとは全く思っていなかった。


「入って何をするか知ってます?」
「勿論それくらいの知識はあります。嫌ですか? 茜さん」


嫌だと言ったらどうするつもり? 
とちょっと意地悪な事を思ってしまった。
入り口の自動ドアは開いたり閉じたりしていて忙しない。
仕方がない、ここまで来たら入るっきゃないっ。


「だ、大丈夫です」


そうですか、と笑顔になる彼の顔を上目づかいで見つめる私。
そんな私を見た彼が私に可愛いと褒めてくれた。
一歩一歩ホテルの中に入ると部屋の写真が沢山張られた受付のような場所の前で立ち止まった。
一番値段がする部屋のボタンを彼が押すとガランという音と共に鍵が出てきた。


「さ、行きましょう」
「……はい」


彼と私はエレベーターの前に立ちドアが開くと7階のボタンを彼が押して扉が閉まった。
内心ドキドキの私は彼の手をぎゅっと握ると彼もまた握り返してきた。
ふと彼の顔を見ると私の事を笑顔で見つめていた。恥ずかしくなってしまい私は俯いてしまう。
どうもこういうことは慣れない。
それにお互いお酒が入っているがそんな酔いも吹っ飛んでしまった。エレベーターの到着する音共に目の前のドアがゆっくり開いた。


「さ、こっちです」


カチカチと入り口を示す矢印が部屋に誘導する。
こういう構造になっているんだとちょっと感心してしまった。
ドアの前に立つと部屋番号のランプがカチカチ点滅している。


「ここですね。中に入りましょう」
「はい」


口数の少ない私に彼は背中を優しく触れてドアにカギを差し込んでゆっくり開いた。
薄暗い部屋の中にパンプスを脱いで中に入り打ちドアを開けると大きなベッドと大画面の液晶テレビ、それに何やらの自動販売機が置いてあった。
小さな冷蔵庫を開けてみるとお酒やらジュースが入っていた。
これが『ラブホテルの部屋の中』なんだ……。

「あ、茜さんお風呂入れてきますからゆっくりそこらへんに座っててください」
「あ……は、はい……」

彼にそう言われて私はベッドに前にあるソファに腰を下ろした。
来ていた上着を脱ぎ徐に机の上に置いてあったリモコンでテレビのスイッチを……。

『あん……んっ……あぁあん……も、もっとぉ~……あ、っん……ふぁぁあああんっ!!』

女の喘ぎ声が大音量でテレビのスキーカーから流れたっ!
な、なんだこれっ!!
目の前に現れた四つん這いになっている女が後ろから男が……してるシーンがっ!
 やべっ!
音量をオフに切り替え、私は慌ててチャンネルと変えようと色んなボタンを押すとさっきまで暗かった部屋が明るくなったりいきなり違うシーンが出てきたり。
ああ、訳分かんない…どうしたらいいのよっ!!
この状況に焦る私は色々なボタンを押しまくると漸くニュース番組に切り替わった。
私はため息をついて気持ちを落ち着かせようと胸をなでおろした。

「どうしました? ちょっと顔が赤いですよ?」
「あ、な、何でもないですっ!!」

彼がお風呂場から戻って私の顔を見てそう声を掛けて来てビックリして全否定してしまった。
ああ、まるで高校生の子供みたいな反応だわ…私って。
ここでは彼と……するために来たのよね。
このままの状態で出来るのかしら……私……。


しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

君を探す物語~転生したお姫様は王子様に気づかない

あきた
恋愛
昔からずっと探していた王子と姫のロマンス物語。 タイトルが思い出せずにどの本だったのかを毎日探し続ける朔(さく)。 図書委員を押し付けられた朔(さく)は同じく図書委員で学校一のモテ男、橘(たちばな)と過ごすことになる。 実は朔の探していた『お話』は、朔の前世で、現世に転生していたのだった。 同じく転生したのに、朔に全く気付いて貰えない、元王子の橘は困惑する。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

うっかり結婚を承諾したら……。

翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」 なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。 相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。 白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。 実際は思った感じではなくて──?

見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです

珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。 その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。 それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。

偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~

甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」 「全力でお断りします」 主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。 だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。 …それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で… 一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。 令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

処理中です...