恋を諦めた私の前に突然痛いイケメン王子様が現れましたっ!!

杏仁豆腐

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ずっと一緒だよ

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大須の町に着いたのは午後だった。
久々に来た町の様子に少し懐かしみを感じていた。
そう言えば一人でよくここに来たものだ。
東京の秋葉原と比べるとオタクの店も少なくって寂しいなと感じたことがあったっけ。


「凄い人ですね、離れ離れにならないように手を繋ぎましょう。茜さん」
「そう、ですね……涼太さん」


別に逸れてもここは私にとって庭みたいな場所だから、と言いそうになったが私はオタク腐女子だということがバレてしまうのでそのことを言うので止めておく。
やはり縁日の日は凄い混んでいる。
道と言う道にいろんな屋台が並んでいる。
良い匂いをさせながら食欲がそそられてしまう。


「何か食べますか?」
「でもさっきお昼を食べたばかりだから……」


太ってしまう、とも言いにくい。
最近幸せだから太っていることがバレるのが恥ずかしい私は食欲を我慢しているのだ。
彼と出会ってからかなり太った気がしていていつも食べる量を減らしているということは言わないでおこう。


「ここも随分と変わりましたね。商店街もにぎやかになりましたし。若者が増えた気がします」
「おじさん臭い事言わないでくださいよ。私たちだって立派な若人ですよ」


ははは、とお互い笑いながら道を歩く。
確かに若者が多くなっていたのは事実。
古着屋アクセサリー店、それにオタクが通う店が増えたのが要因だろう。
そう言えばご当地アイドルとか言うのも存在しているのもその所為かもしれない。
私たちは歩く他人とぶつからないように色々な店を回った。
有名ディスカウントストアに入ってバックや洋服、それにアクセサリーなんかを見ながら楽しく過ごした。


「何か欲しい物があったら言ってくださいね」
「何もいらないですよ。ただ見てるだけで楽しいです」


本心だった。
二人でこうして店を回ることが楽しいのだ。
欲しい物は此処にはなく別の店にあるという事だけは言わない。
久々の大須の街を堪能し美味しい唐揚げ屋によって串に刺さった唐揚げを二人で分け合いながら食べて歩いていた。この幸せがずっと続くといいな、そう思いながら。


気が付くと夕方になりそろそろ帰ることにした。
今日は車ではなく電車を利用してきているため夕食をどこかで食べないかと彼が言う。
大須で夜ご飯を食べるお店なんて私は知らない。
彼にそう言うと栄でご飯を食べようということになった。
栄も人が多いから一人では決して行かない街だ。
地下鉄を利用して直ぐに栄についた。彼は私の手を握りしめながら彼が知っているという店に向かった。


「ここです」
「居酒屋……ですね」
「一度来てみたいと思っていた場所なんです」


普通の居酒屋の前で彼はにこやかに笑いながら私にそう言った。
彼なら高級料理店に私を連れて行くと思っていたので意外だった。
私は笑顔を振り前いて彼と一緒に店の中へ足を運んだ。
ごく普通の居酒屋に来るのは何日ぶりの事だろう、そう思いながら店の店員に導かれるまま席に着いて彼が適当に注文をしていた。今日は凄く楽しかった。

でもせっかくの大須、BL見たかった……な。
腐女子の私はそれだけが心残りだったことを彼は知らない。




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