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はじまり*名村 千鶴*

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大学の入学式を終えてからというもの、目まぐるしい毎日が始まった。

勉強は勿論だけど、とにかく働かないと暮らしていけないからだ。

バイトは3つ程掛け持ちをしながら、生計を立てていた。

働くのも勉強するのも好きな私にとって、忙しい毎日は苦にはならなかった。
寧ろ、忙しい方が淋しさを感じる事がないから良かったのだと思う。

アパートにはほぼ寝に帰るような生活が続いていたけど、それは全て夢を叶える為。
慎ましくも充実した日々を送っていた私だったけれど、それが崩れてしまう出来事が起きてしまった。



***



「千鶴ちゃん」

とある日曜日の午後、コンビニのバイトから帰って来た私はアパートの大家さんに呼び止められた。

「こんにちは」

「こんにちは。バイト帰り?」

「はい、そうです」

という挨拶から始まったのだけど、すぐに本題に入る。

「実はね、最近この辺りで空き巣が多発してるのよ」

「空き巣、ですか?」

「そうなの。特に一人暮らしの女性宅を狙った犯行が多いらしいのよ」

大家さんの話では空き巣はこのひと月だけで5件以上も起きているらしく、それら全て一人暮らしの女性宅を狙ったものらしい。

「とにかく、戸締りはしっかりしてね」

「はい、分かりました」

忠告を受けた私は気をつけなきゃと思いながら、いつも通りの日々を過ごしていた。



それから数日が過ぎた日の夜。
居酒屋のバイトを終え、深夜に帰宅した私は部屋を見た瞬間言葉を失った。

「……何、これ……」

部屋には荒らされ、悲惨な状態になっていたのだ。

「嘘……」

玄関はきちんと鍵が掛かっていたのに、とうして?
そう思い窓を見てみると鍵が開いていた。
こじ開けられた形跡が無いことから、
どうやら私が窓の鍵を掛け忘れた様だ。

「ど、どうしよう……」

時刻は深夜。
大家さんに言うにしても、こんな時間じゃ迷惑になるだろうし、自分のミスが原因でこうなってしまった訳だから、警察を呼んで大事にはしたくなかった。
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