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大切な存在*貴志 正宗*

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夕飯を食べ終え、片付けをしている千鶴の横で俺はノートパソコンや仕事で使う資料をテーブルの上に広げていく。

「これからお仕事ですか?」

「ああ」

「コーヒーでも淹れましょうか?」

「そうだな、頼む」

俺に気を遣ってか、千鶴は片付けを中断してコーヒーを淹れ始めた。

今まで1人で居た空間に誰かが居る、それはとても不思議な気分だ。
しかも、それが大切な親友の娘で、俺の初恋の女性に良く似ているのだから。

「はい、どうぞ」

「ああ、ありがとう」

視線は資料に向けたまま千鶴からコーヒーカップを受け取り、一口飲む。
と、千鶴は俺のすぐ横に立っていて何やら側に置いてある資料に注視していた。

「どうした?」

「あ、す、すみません」

「謝らなくていい。何か気になる物でもあったのか?」

「えっと、その……貴志さんってどんなお仕事をされているんですか?」

そんな千鶴の質問で俺は気付く。そもそも俺は千鶴に自分の事を詳しく話していないという事に。

「そう言えばお前には色々と話してやらなくちゃならない事があるよな。俺の事や、お前の両親の事」

「お父さんと、お母さんの事?」

「ああそうだ。千鶴ちょっとそこに座って」

仕事を中断し、夕飯の時同様向かい合う形で千鶴を座らせる。

「あの、お仕事しなくて大丈夫ですか?」

「ああ、問題ない。こんな物はすぐに終わるから」

「そうですか。じゃあ、色々と聞かせてください。貴志さんのことや、父と母のことを」

こうして俺は自分の事を初め、啓太郎や明日香との出逢いの全てを語り始めた。
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