上 下
12 / 15
頼れる人*名村 千鶴*

しおりを挟む
貴志さんは私に色々な事を話してくれた。

貴志さんと父は中学1年の時に同じクラスになって、仲良くなった事。そして、母とはバスケ部で知り合った事を。

それに、貴志さんの応援に来ていた父に母が一目惚れしたなんて話は初耳だった。

他にも私の知らない父と母の話を聞くことが出来て、すごく嬉しかった。


「貴志さんは父と母ととても交流があったんですね」

「ああ。卒業後も何かと顔を合わせる機会があったよ。それに、啓太郎――お前の父親は事あるごとに俺を頼って来たからな」

「そうだったんですね」


正直、貴志さんに会って、お父さんとお母さんの知り合いって言われた時は俄に信じられなかった。


だけど、電話を掛けてアパートに来てくれたあの日、ぎゅっと抱きしめてくれた時、何だかすごく懐かしい感じがした。それは、幼い頃お父さんに抱きしめられた時のような感覚だった。

「――さて、もうそろそろ日付も変わる。千鶴は寝る準備をしろ」

話をしていたらいつの間にか時間が過ぎていて、気付けばもうすぐ日付が変わる頃だった。もっと話していたいけど、片付けもまだ少し残っているし、貴志さんは仕事をしている途中だ。

「今日は色々話してくれてありがとうございます。時間がある時、また色々教えてくださいね」

「ああ」

私の言葉に小さく微笑んでくれる貴志さん。そんな彼に笑みを返して私は席を立ち残りの片付けを済ませに取り掛かった。




片付けを済ませ、お風呂に入った私は貴志さんに挨拶をして寝室へ向かう。
父と母の話を聞いたせいか、心が暖かくなっていた分、暗い部屋にある冷たい布団が淋しさを誘う。

すぐ隣には貴志さんが居て、キーボードを叩く音が聞こえてくるけど、淋しさは増していく。

施設にいた時は他にも私と同じように身寄りのない子達が沢山いて、互いに淋しさ埋め合っていたからそれなりに楽しかった。

だから、施設を出て一人暮らしを始めた時、静か過ぎる部屋に1人で居る事がすごく怖いと思ってしまった。

それでも、頼れる人はいないのだから1人でやっていかなければと自分に言い聞かせて過ごしてきた。

(夜はやっぱり嫌い)

夜になりこうして眠るまでの間は色々考えてしまうから、私は夜が嫌いだ。
しおりを挟む