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頼れる人*名村 千鶴*

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布団に入って目を閉じるもなかなか眠れない。

そのうち、貴志さんは仕事を終えたようでキーボードを叩く音は聞こえなくなる。

(私もそろそろ寝ないと)

しかし、寝ようと焦ると余計眠れなくなってしまう。

(……何か温かい飲み物でも飲もう)

ベッドから降り、静かに寝室を出ると

「どうした、眠れないのか?」

キッチンに立ち、水を飲んでいた貴志さんと鉢合わせた。

「あ、はい。なので、ちょっと飲み物でも飲もうかと」

「そうか。ならホットミルクにしよう。ソファーに座ってろ」

「だ、大丈夫です、私やりますから――」

貴志さんの手を煩わせるのは申し訳ないと思ってそう申し出たものの

「いいから、座ってろ」

ポンと頭に手を置かれ、優しい瞳で見つめられた私はそれ以上何も言うことが出来なかった。


少ししてカップを2つ持ってきた貴志さんは私の隣に腰を下ろす。

「ほら」

「ありがとうございます」

カップを受け取りひと口飲むと身体が温かくなっていく。

やっぱり、誰かが傍に居ると安心する。

早く飲んで寝なくてはいけないのは分かっていたのだけど、どうしても1人で寝室に戻りたくなくて、ゆっくり飲んでいると

「――何か思うことがあるなら、遠慮しないで話してくれ。俺はお前の保護者代わりなんだから」

私の心を見透かしたかのような言葉を掛けてくれた。
それを聞いた私は、言ってしまおうか悩む。私が黙っている間、貴志さんは何も言わずに傍に居てくれた。
そんな彼にならと私はぽつりぽつりと思っている事を口にしていく。

「……さっき父と母の話を聞いて懐かしくなって……そこまでは良かったんです……けど、色々思い出したら、今度は……淋しくなってしまって……」

言葉に詰まり、途切れ途切れの言葉だけど、貴志さんは急かすこともなく聞いてくれる。

「……私、夜が、嫌いなんです……何だかすごく……不安が押し寄せてくるんです……」

一度口にしてしまうと言葉は止められなくて、不安に思っていたことをどんどん話してしまう。

「……ご、ごめんなさい……こんなこと言われても、困りますよね」

話していると涙まで出てきそうになる。
ぐっと堪え、ごめんなさいと言いながら下を向く。
そんな私に、貴志さんは

「気付いてやれなくてごめんな。大丈夫だ、怖いことなんて何もない。寝付くまで傍に居てやるから、寝室に行こう」

肩を抱き、大丈夫と言いながら優しく抱きしめてくれる。

(やっぱり、こうされると安心する)

私は答える代わりにこくりと頷き、昨日同様落ち着くまでの間貴志さんの温もりに身を預けていた。
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