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頼れる人*名村 千鶴*

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結局私はあのまま貴志さんの腕の中で眠ってしまったようで、目を覚ました時には既に明け方でベッドの上に居た。

(貴志さんが、ここまで運んでくれたんだ)

ベッドから降り、音を立てないようにリビングへと向かう。
リビングではソファーの上で貴志さんが気持ち良さそうに眠っていた。

お父さんとお母さんの事を沢山知っていて、私の事を自分の娘のように心配してくれる貴志さん。

ここに置いてもらう以上は彼の役に立てるようになりたい。
その為にも、家事は勿論迷惑をかけないようにしなければならない。

(とりあえず、朝ご飯の支度でもしようかな)

一旦寝室へ戻り、着替えを済ませた私は朝食の支度に取り掛かる。

昨日の朝も思った事だけど、こうして誰かの為にご飯を作るという事はとてもやりがいがある。

一人暮らしだとついついお弁当やお惣菜で済ませてしまうこともあったけれど、私自身料理は好きな方だからこうして作るのはすごく楽しいのだ。

(貴志さんの為に、美味しいご飯を作れるようになろう)

彼に恩返し出来る事はごく僅かしかないけど、喜んでもらう為、彼を笑顔にする為、私は愛情を込めて料理を作っていった。




貴志さんが起きる時間になり、ご飯を並べ終えた私は彼と共に席に着く。

「今日も美味そうだな、いただきます」

「いただきます」

私に合わせてくれているのか、貴志さんも両手を合わせて『いただきます』と言ってくれる。

それが何だかすごく嬉しくて、自然と笑みが溢れた。

「ん?どうした?」

「いえ、何でもないです」

「そうか?ならいいが」

お父さんが生きていたらこんな感じだったのかもしれない。
貴志さんと暮らすことで、家族団欒という言葉の意味を身をもって体験することが出来た。
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