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目まぐるしい日々1
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翌朝、松岡は九時にやってきた。灯里は玄関先で、喜んで迎えの車に乗る流美と玲雄を見送った。
ゆうべ二人が話したところによれば、フィンランドでも田舎町で育っているらしく、農作業には慣れているそうだ。ベリー摘みをよく手伝ったと話していた。
「るみのパパはほうようかやで」
「ほうようか?」
ほうようか、法要か? それとも抱擁家? 愛妻家的な?
意味がよくつかめずに首をひねる灯里に、玲雄が得意げに説明する。
「はこのなかではちみつあつめるのがしごとやねん」
「……はちみつ集める、仕事? ……ああ、養蜂家?」
「あ、そうやった。ようほうかやったわ」
そうだったのか。姉の夫は農業をしていると聞いていたが、正式には養蜂家だったのだ。それで姉がはちみつ関係の商品を扱うショップをしていたのかと、ようやくわかった。
興味がないので知らなかったが、そもそもフィンランドはかなり自然豊かな国のようだ。
流美と玲雄はここに来ても草むらや林も怖がらず、虫や小動物にビビることもない。もっとも流美は黒い虫は苦手らしかったが。
ともかく二人がいなかったので、久しぶりに昼間がっつり仕事ができた。子供がいないだけでこんなにも静かな部屋だったのかと、あらためて二人の存在感に驚く。
集中して仕事ができたので思ったより早く仕上がり、永村にデータを送付しておいた。
きょうは日曜だが曜日など関係ない永村のことだから早い方がいいだろう。きっと訂正箇所が出るから、それを修正する時間も必要だ。
夕方にはきっと連絡が来るから。それまでに洗濯しようかな。
一段落してコーヒーを淹れ、ベーカリー小麦のバゲットを焼いてガーリックバターを塗って食べながら休憩していたら、スマホが鳴った。永村からかと思って画面を見れば、風香だった。
「はい」
「ああ、灯里、よかったー。やっとつながった」
「よかったじゃねーよ。一体どうなってんだよ」
「また掛けるって留守録入れたでしょ。まあいいわ、流美と玲雄は?」
「知り合いの農家で遊んでもらってる。そこも子供がいて仲良くなったから」
「あ、そうなの、じゃあよかったわー。あのさぁ、悪いけど、まだ帰れないのよ。ちょっと帰国が伸びそうなの」
そのお気楽な声を聞いた途端、今まで子供相手だと我慢していた気持ちが切れて、灯里はスマホに向かって怒鳴っていた。
「ふざけてんじゃねーぞ、あいつらがうちにいるせいで、どんだけこっちが迷惑してるか分かってんのかよっ。きょうはたまたまその家で面倒見てくれてるけど、それだって俺が昼間あの子たちにつき合って仕事できないの見かねて、そこの家の大人が言いだしてくれたことで、こっちは田舎に移住してちんたら気楽に遊んでるわけじゃねーんだ。俺だって仕事あんのに、子供押しつけて海外に行きっぱでロクに連絡もねーって何だよ! しかも何が「ご飯と寝るとこだけでいい」だよ! 外行きゃ怪我するわ、熱中症になるわ、よその子供とケンカするわ、すぐ眠いだのトイレだのお腹すいだだの泣くわ文句言うわ、いい加減にしろよ。てめーが生んだガキだろが、とっとと迎えに来い!」
感情に任せて一気に怒鳴り散らして、大きく息をつく。
灯里の本気の怒りを感じ取ったのだろう、風香がめずらしく「ごめん」と素直に謝った。
「子供に免疫ないあんたに押しつけて、本当に悪かったと思ってる。こっちはこっちの事情があったんだけど、それも説明する暇なくて、ホントにごめん」
滅多にないしおらしい声で謝られて、灯里はスマホを睨みつけた。睨みつけても風香に伝わるわけもないが、風香は風香なりに悪かったと思っているらしく、しおらしい声で話を続けた。
「うまく連絡できなくてごめんね、実は病院にいるの。それで電話できたりできなかったりで」
「……病院?」
風香の態度に灯里のトーンも少し下がった。
あんなに急にフィンランドに行くと言ったのだから用事があったのは本当だろう。
それがどんな事情で用事なのかは訊けずじまいだったが、病院にいるとなれば身内の病気か事故だろう。
「旦那に何かあったのか?」
「それなら子供たち連れてくるわ。夫と一緒に会社を共同経営してる人がいるんだけど、彼が事故にあってICUに入ってたの。三日前にICUは出たんだけど、彼は独身で身寄りがないから、夫と私で付添したり手続きしたり色々バタバタしてて……。日本を発つ時点ではまだICUにいてどうなるか読めなかったし、子供を連れて行っても世話できる状況かわからなくて。彼の容体も仕事のほうもてんやわんやになってて。それであんたに預けることになったんだけど、でも全部こっちの勝手な事情だし、それは悪かったと思ってる。色々迷惑かけてるよね。あの子たち、わがまま言ってる?」
「……まあ、普通だろ。その共同経営者は大丈夫なのか?」
「とりあえず、手術は成功して峠を越えた感じ。まだ安心はできないって言われてるけど。でもいつまでも子供たちを預けとくわけにもいかないし、迎えに行きたいけどあと少し、待ってほしいの。こっちの取引先との商談が詰めに入ってて、うちみたいな小さな農場にとっては大きな話なの。だからそれが落ち着き次第、迎えに行くから」
「わかったよ。マジで終わったらすぐ来い。ママに会いたいって、あいつら泣いてたぞ」
ゆうべの話だ。
夜の一時過ぎ、コーヒーを入れに仕事部屋を出たら、二人の話し声が聞こえたのだ。しくしくと泣く玲雄を、流美がやはり泣きながら慰めていた。
「ママは? どこにおるん?」
「もうすぐむかえにくるって。…るみもあいたいよぅ」
「さっきはいっしょにおったのにー」
「さっきって?」
「さっきはさっきや。だっこしとったのにぃ」
「ゆめみたん? るみもおった?」
「おらんかった。れおとママで、ソフトクリームたべた」
「ずるい、るみもたべたかった」
「でもママ、おれへんもん」
「れおだけずるい、ママとソフトクリームたべたんやろ……」
「でもママどっかいってしもた……どこにおるん?」
「さがしに行かな……。るみもソフトクリームたべる……」
夢も現実もいっしょくたなのか、二人の会話は通じているのかいないのか、しくしく泣く声が途切れて、眠ったようだった。
キッチンに行って、湯を沸かす。コーヒーを淹れてからそっと和室を覗くと、二人はタオルケットを蹴り飛ばして寝ていた。お腹にかけなおしてやり、しんみりとあどけなく眠る二人を眺めた。
頬に残る涙のあとを見て、灯里もさすがにかわいそうにと思った。
子供の世話もろくにしたことがないよく知らない叔父に預けられて、寂しくても泣かずに頑張っていたのだとようやく思い至ったのだ。
「わかってる。本当にできるだけ早く迎えに行くから。ごめんね、灯里」
「もういいよ。事情はわかったし」
「うん、もう行かなきゃ。また連絡する」
電話を切るとため息が出た。
一週間で迎えが来ると思っていたが、もう少し伸びるらしい。
ゆうべ二人が話したところによれば、フィンランドでも田舎町で育っているらしく、農作業には慣れているそうだ。ベリー摘みをよく手伝ったと話していた。
「るみのパパはほうようかやで」
「ほうようか?」
ほうようか、法要か? それとも抱擁家? 愛妻家的な?
意味がよくつかめずに首をひねる灯里に、玲雄が得意げに説明する。
「はこのなかではちみつあつめるのがしごとやねん」
「……はちみつ集める、仕事? ……ああ、養蜂家?」
「あ、そうやった。ようほうかやったわ」
そうだったのか。姉の夫は農業をしていると聞いていたが、正式には養蜂家だったのだ。それで姉がはちみつ関係の商品を扱うショップをしていたのかと、ようやくわかった。
興味がないので知らなかったが、そもそもフィンランドはかなり自然豊かな国のようだ。
流美と玲雄はここに来ても草むらや林も怖がらず、虫や小動物にビビることもない。もっとも流美は黒い虫は苦手らしかったが。
ともかく二人がいなかったので、久しぶりに昼間がっつり仕事ができた。子供がいないだけでこんなにも静かな部屋だったのかと、あらためて二人の存在感に驚く。
集中して仕事ができたので思ったより早く仕上がり、永村にデータを送付しておいた。
きょうは日曜だが曜日など関係ない永村のことだから早い方がいいだろう。きっと訂正箇所が出るから、それを修正する時間も必要だ。
夕方にはきっと連絡が来るから。それまでに洗濯しようかな。
一段落してコーヒーを淹れ、ベーカリー小麦のバゲットを焼いてガーリックバターを塗って食べながら休憩していたら、スマホが鳴った。永村からかと思って画面を見れば、風香だった。
「はい」
「ああ、灯里、よかったー。やっとつながった」
「よかったじゃねーよ。一体どうなってんだよ」
「また掛けるって留守録入れたでしょ。まあいいわ、流美と玲雄は?」
「知り合いの農家で遊んでもらってる。そこも子供がいて仲良くなったから」
「あ、そうなの、じゃあよかったわー。あのさぁ、悪いけど、まだ帰れないのよ。ちょっと帰国が伸びそうなの」
そのお気楽な声を聞いた途端、今まで子供相手だと我慢していた気持ちが切れて、灯里はスマホに向かって怒鳴っていた。
「ふざけてんじゃねーぞ、あいつらがうちにいるせいで、どんだけこっちが迷惑してるか分かってんのかよっ。きょうはたまたまその家で面倒見てくれてるけど、それだって俺が昼間あの子たちにつき合って仕事できないの見かねて、そこの家の大人が言いだしてくれたことで、こっちは田舎に移住してちんたら気楽に遊んでるわけじゃねーんだ。俺だって仕事あんのに、子供押しつけて海外に行きっぱでロクに連絡もねーって何だよ! しかも何が「ご飯と寝るとこだけでいい」だよ! 外行きゃ怪我するわ、熱中症になるわ、よその子供とケンカするわ、すぐ眠いだのトイレだのお腹すいだだの泣くわ文句言うわ、いい加減にしろよ。てめーが生んだガキだろが、とっとと迎えに来い!」
感情に任せて一気に怒鳴り散らして、大きく息をつく。
灯里の本気の怒りを感じ取ったのだろう、風香がめずらしく「ごめん」と素直に謝った。
「子供に免疫ないあんたに押しつけて、本当に悪かったと思ってる。こっちはこっちの事情があったんだけど、それも説明する暇なくて、ホントにごめん」
滅多にないしおらしい声で謝られて、灯里はスマホを睨みつけた。睨みつけても風香に伝わるわけもないが、風香は風香なりに悪かったと思っているらしく、しおらしい声で話を続けた。
「うまく連絡できなくてごめんね、実は病院にいるの。それで電話できたりできなかったりで」
「……病院?」
風香の態度に灯里のトーンも少し下がった。
あんなに急にフィンランドに行くと言ったのだから用事があったのは本当だろう。
それがどんな事情で用事なのかは訊けずじまいだったが、病院にいるとなれば身内の病気か事故だろう。
「旦那に何かあったのか?」
「それなら子供たち連れてくるわ。夫と一緒に会社を共同経営してる人がいるんだけど、彼が事故にあってICUに入ってたの。三日前にICUは出たんだけど、彼は独身で身寄りがないから、夫と私で付添したり手続きしたり色々バタバタしてて……。日本を発つ時点ではまだICUにいてどうなるか読めなかったし、子供を連れて行っても世話できる状況かわからなくて。彼の容体も仕事のほうもてんやわんやになってて。それであんたに預けることになったんだけど、でも全部こっちの勝手な事情だし、それは悪かったと思ってる。色々迷惑かけてるよね。あの子たち、わがまま言ってる?」
「……まあ、普通だろ。その共同経営者は大丈夫なのか?」
「とりあえず、手術は成功して峠を越えた感じ。まだ安心はできないって言われてるけど。でもいつまでも子供たちを預けとくわけにもいかないし、迎えに行きたいけどあと少し、待ってほしいの。こっちの取引先との商談が詰めに入ってて、うちみたいな小さな農場にとっては大きな話なの。だからそれが落ち着き次第、迎えに行くから」
「わかったよ。マジで終わったらすぐ来い。ママに会いたいって、あいつら泣いてたぞ」
ゆうべの話だ。
夜の一時過ぎ、コーヒーを入れに仕事部屋を出たら、二人の話し声が聞こえたのだ。しくしくと泣く玲雄を、流美がやはり泣きながら慰めていた。
「ママは? どこにおるん?」
「もうすぐむかえにくるって。…るみもあいたいよぅ」
「さっきはいっしょにおったのにー」
「さっきって?」
「さっきはさっきや。だっこしとったのにぃ」
「ゆめみたん? るみもおった?」
「おらんかった。れおとママで、ソフトクリームたべた」
「ずるい、るみもたべたかった」
「でもママ、おれへんもん」
「れおだけずるい、ママとソフトクリームたべたんやろ……」
「でもママどっかいってしもた……どこにおるん?」
「さがしに行かな……。るみもソフトクリームたべる……」
夢も現実もいっしょくたなのか、二人の会話は通じているのかいないのか、しくしく泣く声が途切れて、眠ったようだった。
キッチンに行って、湯を沸かす。コーヒーを淹れてからそっと和室を覗くと、二人はタオルケットを蹴り飛ばして寝ていた。お腹にかけなおしてやり、しんみりとあどけなく眠る二人を眺めた。
頬に残る涙のあとを見て、灯里もさすがにかわいそうにと思った。
子供の世話もろくにしたことがないよく知らない叔父に預けられて、寂しくても泣かずに頑張っていたのだとようやく思い至ったのだ。
「わかってる。本当にできるだけ早く迎えに行くから。ごめんね、灯里」
「もういいよ。事情はわかったし」
「うん、もう行かなきゃ。また連絡する」
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一週間で迎えが来ると思っていたが、もう少し伸びるらしい。
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